コロナ下で注目された自転車通勤ですが、中には禁止にしている会社もあるようです。

弁護士ドットコムにも、ある男性から相談が寄せられています。男性は会社で「安全のため」に自転車通勤が禁止になりましたが、会社は郊外にあるため、バスを使うと通勤時間が倍くらいかかってしまいます。

「非常に通勤が不便となり、疲労も増し、仕事への影響もでます。これらは会社が決めたこと、ということでどうにもならないのでしょうか」と会社の方針を疑問に感じているようです。

会社が禁止しているのに自転車通勤をした場合、懲戒処分の対象となってしまうのでしょうか。またそうした状況で通勤時に事故にあった場合、労災対象となるのでしょうか。徳田隆裕弁護士に聞きました。

●自転車通勤をしただけでは懲戒処分の対象にならないが…

——自転車通勤が会社で禁止されているのにしていた場合、懲戒処分の対象となりますか。

自転車通勤が会社の就業規則などで禁止されていたにもかかわらず、自転車通勤をした場合、形式的には、就業規則に記載されている懲戒事由にあたります。

しかし、労働者が、形式的に就業規則の懲戒事由にあたる行為をしたとしても、実質的に企業秩序を乱すおそれがない場合には、実質的に懲戒事由にあたらないと判断されることがあります。

自転車通勤をしたところで、企業秩序が乱されることはありませんので、実質的に懲戒事由に該当しないことになり、懲戒処分の対象にならないと考えられます。

——実際は禁止されている自転車通勤をしているのに、電車通勤をしているとして通勤手当をもらっていた場合はどうでしょうか。

通勤手当の不正受給として、懲戒処分の対象になることがあります。その場合、次のような事情を考慮して、懲戒解雇が無効になることがあります。

(1)不正受給の金額の大きさ(会社に与えた損害額)
(2)不正受給していた期間の長さ
(3)不正受給について、労働者がわざとしていのか、会社に報告するのを忘れていただけか
(4)会社が通勤手当の支給について、厳格に管理・運用していたのか
(5)労働者の過去の懲戒処分歴
(6)反省の態度を示しているか(不正受給した金額の返金を申出ているか)

例えば、(1)不正受給の金額が小さく、(2)不正受給の期間が短く、(3)労働者が通勤について会社に報告するのを忘れていただけであり、(4)会社が通勤手当の支給について、厳格に管理・運用しておらず、(5)労働者には懲戒処分歴がなく、(6)労働者が不正受給について、反省している場合には、通勤手当の不正受給を理由とする懲戒解雇は、懲戒処分として重すぎるとして、無効になる場合があります。

なお、通勤手当の不正受給は、刑法の詐欺罪に問われる可能性もあります。

——自転車通勤が会社で禁止されているのに、自転車通勤で事故にあってしまった場合、労災の対象となるのでしょうか。

労働者が「合理的な方法」で通勤していて、通勤途中で事故にあった場合、通勤災害に該当し、労災保険から給付を受けられます。

会社の就業規則などで、自転車通勤が禁止されていたとしても、自転車を本来の用法に従って使用して通勤することは「合理的な方法」に該当します。

そのため、自転車通勤が会社で禁止されているのに、自転車通勤で事故にあった場合、通勤災害に該当し、労災保険の対象になります。

【取材協力弁護士】
徳田 隆裕(とくだ・たかひろ)弁護士
日本労働弁護団、北越労働弁護団、過労死弁護団全国連絡協議会、ブラック企業被害対策弁護団に所属し、労働者側の労働事件を重点的に取り扱っています。ブログ(https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog)、YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCWJQX9xTgXZegEOHZUidsdw)で労働問題について情報発信をしています。
事務所名:弁護士法人金沢合同法律事務所
事務所URL:https://www.kanazawagoudoulaw.com/