外食の制限が緩和されて、忘年会や新年会など、お酒の席に繰り出す人も多いだろう。しかし、繁華街を中心に広がる「プチぼったくり」には注意が必要だ。

繁華街の客引きに紹介された店や、マッチングアプリで知り合った女性に連れて行かれた飲食店で、被害にあったという報告もある。

多くの人たちが泣き寝入りする状況で、自衛策はあるのか。

●「プチぼったくり店」が増えている

12月に入って、各メディアが「プチぼったくり」の事件を報じた。

警視庁保安課は12月1日、歌舞伎町のキャバクラ店の経営者(23)や従業員の少女(18)らを風営法違反(無許可営業)の疑いで逮捕した。報道によると、都の許可なく、男性客に接待営業をしていたという。経営者は容疑を否認し、従業員は認めているそうだ。

同店は、アルコールを注文させて、少し高い代金を請求する「プチぼったくり店」と呼ばれ、男性は代金約3万5000円を請求された。マッチングアプリを通じて、一般人を装った少女と知り合い、連れて行かれたという。

毎日新聞によると、

〈いわゆる「ぼったくり店」は客に法外な料金を請求するケースが多いが、同店は請求代金を10万円以内に抑え、客がギリギリ支払える範囲内にしていたという〉

といい、このような店が都内で最近増えているという。

●SNSにも被害報告、多くは泣き寝入り

ツイッターにも、プチぼったくりとみられる被害報告が見受けられる。

その多くは、客引き(キャッチ)に声をかけられた店で被害に遭ったとか、マッチングアプリで知り合った女性に連れて行かれた店で数万円を支払わされたというものだ。

ある投稿者は、キャッチに声をかけられ、連れて行かれた店で、2人で利用した飲食店の伝票をツイッターにアップしたうえで、「ありえん 新宿は恐ろしい街…お通しと酒2杯しか頼んでないのに」とつぶやいた。

https://twitter.com/aka_sino2/status/1467142672888389633

同日付の伝票には、「鶏モモ串(数8・1440円)」、「生ビール(数1・580円)」、「りんごサワー(数1・520円)」、「ウーロン茶(数2・760)」と飲食したメニューの記載のほかに、2人分の「お通し(960円)」、2人分の「席料(1000円)」、2人分の「年末料金(1000円)」、2人分の「週末料金(1000円)」、2人分の「席料(1000円)」の項目が記載されていた。

そこに「サービス料(526円)」、消費税が加算され、お会計はしめて8554円となっている。

お通しをのぞいて飲食したメニューと、それにかかる消費税だけなら3630円で済むわけだが、投稿者は「しかも烏龍茶頼んでないんですよ笑」ともツイートしていることから、「ウーロン茶」は勝手に提供されたとの認識をしているようだ。

その後、投稿者は警察を呼んだそうだが、このような特別な料金がかかるということは、メニューに書いてあったとして、対処してもらえなかったという。

●ふつうの居酒屋のような外見をしている

プチぼったくり店の問題点について、ぼったくり被害にくわしい青島克行弁護士が解説する。

――「プチぼったく店」はどのような店なのでしょうか?

外見や内装は、何の変哲もないチェーン居酒屋や大衆居酒屋ですが、会計の際に納得しがたい高額の請求をしてくる店が典型例です。

客側が、請求金額がおかしいと抗議したところで、「値段はメニューに書いてある」「食べておいて今さらそんなこと言われても困る」などと平気で言い返してきます。

請求額も、決して払えない額でないため、これ以上、おおごとにしたくない客側があきらめて払ってしまう。最初からそれを狙って営業しているのです。

要素としては、

・値段設定がおかしい(飲み物、料理の代金がふつうの飲み屋の数倍)
・通常想定していない項目が加算されている(お通し、席料、年末料金、週末料金など)
・料理の内容がショボい(代金に見合わない)

の一部または全部を満たす店ということになりましょうか。

客引きによる誘導も多いですが、一見、ふつうの居酒屋のような外見なので、客が自ら入店することもめずらしくありません。

――いわゆる「ぼったく店」とはどう違うのでしょうか?

そもそも「プチぼったくり店」という名称は、数年前からメディアが使い始めた用語であり、厳密な定義はありません。

メディアやSNSでの用法では、いわゆるキャバクラやバーではなくて、一見ふつうの居酒屋なのに、請求金額がおかしい店(ただし本格的な「ぼったくり」とは異なり、1人10万円を超えるようなところまではいかない店)というような理解になろうかと思われます。

いわゆる「ぼったくり店」も、厳密な定義は存在しませんが、「プチぼったくり店」との対比でいうと、クラブやキャバクラ、ガールズバーなど、女性がつく店で、1人10万円を超える(100万円、200万円を超える事例もめずらしくない)ような請求をしてくる店です。

●違法の可能性はあるがほとんど摘発されない

――「プチぼったくり店」は違法なのでしょうか?

客引きを使っていれば、自治体ごとにさだめられている迷惑防止条例違反にあたりえます。また、料金明示がなかったり、またはわかりにくいということ場合も迷惑防止条例違反にあたえるでしょう。

また、最初から客が思ってもみない会計になることをわかっていながら、確信的に高額請求をしていることは、本質的には詐欺罪にあたるものです。

ただし、警察が詐欺罪で立件をすることはほぼありえません。立証困難と判断されるからです。迷惑防止条例違反であっても、実際に摘発されるのは、全体の数パーセントにすぎません。法的な問題点があっても、実際に摘発されない(警察が動かない)現実のほうが重いです。

――上述の投稿(伝票の写真)について質問です。会計の際に、「お通し(960円)」「席料(1000円)」「年末料金(1000円)」「週末料金(1000円)」「サービス料(526円)」などが加算されていたようです。メニューに記載があったことから、警察も対応できなかったそうですが、このような項目の設定や金額に問題はないでしょうか?

・そもそもメニューを見せられていないから、そのような金額の請求には応じられません
・こんな金額おかしいでしょう、誰にきいても高すぎると言うでしょう、こんな請求には応じられません
・最初の説明と異なるから、そのような請求に応じられません

以上が、客側から主張するべきお店の請求内容(請求項目、金額)の問題点ということになるわけですが、警察には、このような客側の主張が正しいと判断してしまう能力も権限もありません。

客側か、店側のどちらかが裁判を起こして、最後は裁判所がどう判断するかの問題です。

現実問題としては、被害現場の揉めている場面に裁判所がきてくれるわけではなく、かろうじて警察官にきてもらえたとしても、警察官は警察官で、完全に客側の味方にもなってくれない(なりたくてもなれない面もある)という現状を理解しておく必要があります。

●その場では「絶対に払わない」こと!

――これから飲む機会が増えるシーズンです。被害に遭わないための対策、被害にあってしまったと感じた場合に、客側がとるべき行動についてアドバイスをお願いします。

まず、繁華街の客引きにはついて行かない(そもそも会話しない、会話をしても絶対に断る)。繁華街の知らない店であれば、入店前にネット検索して悪評判がたっていないか確認をしてから入店する。

そして、不正請求だと判断したら、絶対に払わない。店側が譲らないのであれば、こちらも譲らない。「少なくとも今日は払いませんので、どうしてもということであれば請求書の発行なり、提訴するなりしてください」と言って、連絡先を明かして帰る。

連絡先を明かす決断ができないと、帰るに帰れず、結局、払わされる、払ってしまうという流れになってしまうので、連絡先を明かす決断ができるかがポイントです。

恐怖を感じたら、すぐに110番通報したり、「交番で話しましょう」と言って、交番に行くこと。警察官がこちらの味方になってくれなくても慌てないこと。警察官が立ち会ってくれても、結局、話し合いがまとまらないこともあります。

納得できなければ、連絡先を明かして、「今日は帰ります」と主張して、本当に帰ってください。プチぼったくり店に限らず、不正請求に対する対処は、一つしかありません。その場では「絶対に払わない」ことです。払ってしまったものを、取り返すことは本当に大変です。

――そのほかに注意点があれば教えてください。

最近増えている被害事例としては、マッチングアプリで出会った女性に「友だちが良いと言ってるバーがあるのでそこに行きたい」などと誘われて、一緒に行ってみたら、想定外の請求をされるというものです。

飲み放題と言われたのに「女性が飲んだ酒は飲み放題以外のメニューだ」と言われるなど、人のいい若者が、店と明らかにグルになっている女性に食い物にされています。

被害男性の感覚(事前の聞いていた説明)では、数千円から高くてもせいぜい2、3万円のつもりでいたら、会計時に8〜20万円請求されるという被害申告事例が多いです。

ATMに一緒に連れて行かれて、お金をおろして、払ってしまったり、払えない分は後日払うとの念書をとられるというようなパターンが多いです。

このような被害に直面した場合の私からのアドバイスは、先ほど述べたものと繰り返しになるものもありますが、下記のようになります。

・絶対に払わないこと
・警察を呼んででも、なんとか払わないかたちで切り抜けようとすること
・払ってしまったら取り返すのは大変なので、とにかく決着を後回しにもっていくこと
・身分を明かしてでも、当日の支払いを拒否すること
・女性が飲んだ分は、女性が払うもので、「私は関係がない」と言い張ること(どうせ女性はグル。店が女性を追い詰めることはしないし、トラブル後、女性は100%音信不通になる)
・ただし、手の込んだ事例だと、女性も誰かに助けを求めてその人間が現場に駆けつけて、一部のお金を払ってくれるようなケースもある
・もちろんその人物もグルであり、被害男性に少しでも多く払わせるための寸劇の一部なので、知っておくとよい

【取材協力弁護士】
青島 克行(あおしま・かつゆき)弁護士
青島 克行(あおしま・かつゆき)弁護士
取引紛争(債権回収等)、企業内トラブル(社内不祥事、労使紛争)、家族問題(離婚、遺産相続)等、多種多様な業務案件を担当。ウェブサイト「歌舞伎町ぼったくり被害相談室」を運営する。
事務所名:うみとそら法律事務所
事務所URL:http://www.umitosola.jp/