「社則で『化粧をすること』というものがあるのですが、これは法律的に有効なのでしょうか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者の女性の勤務する会社では、社内のルールで化粧をすることが定められています。化粧とわからないようなナチュラルメイクは規則違反となり、査定に響くという話も聞こえてくるそうです。

女性は化粧の匂いが苦手なため、業務に支障が出ると上司に訴えるものの、「社則だから」の一点張りだそうです。

就業規則や社内規定で職場での化粧を強制することは、法的に問題ないのでしょうか。杉浦智彦弁護士に聞きました。

●男女差別で違法・無効だとは認められにくい

就業規則や社内規定で職場での化粧を強制することは、法的に有効でしょうか。

「法律に違反しない限りは、基本的には自由に内容を定めることができます。

労働での男女差別のルールである男女雇用機会均等法は、配置や一部の福利厚生などの区別だけを違法としており、この中に化粧や制服など見た目に関するものは含まれません。

そのため、化粧をしなければならないというルールが、男女差別で一般的に違法・無効だとは言いにくいところです」

●接客業と内勤業務とで違いはあるか

接客業などの特殊事情がある場合とない場合とで違いはあるのでしょうか

「接客業の場合は、実際にお客様と対面するスタッフが企業イメージを担うことがあります。最近は、航空会社などで、企業全体で『あえて濃い目』のメイクをして、表情をわかりやすくすることでアピールをする会社もあります。

働いている人の個人的な趣味もあるでしょうが、企業イメージに結びつくところですから、ナチュラルメイクではない、しっかりとした化粧を要請することが認められることもあるのではないかと思います。

一方で、内勤業務などの場合も、眉毛がないなど、だらしないと思われるビジュアルだと職場の規律を乱す可能性があるでしょう。ただ、そうでなければ個人の自由を広く認めてもよいはずです。

詳しい業務内容によりますが、化粧のルールが有効だったとしても、『職場の規律を害するような外貌にならないよう化粧をしなければならない』くらいの意味で限定して解釈されることもあるでしょう」

●「ひげ禁止」を人事考課の考慮要素にして、違法と判断された例も

人事考課に響くと言った話もありますが、問題ないのでしょうか。

「就業規則や社内規定でしっかりとしたメイクを要請することができるとしても、人事考課において考慮できるかは別問題になります。公共交通機関のひげ禁止規定で、ひげを生やしていたことを人事考課の考慮要素としたことを違法と判断した裁判例もあります。これは、協力を要請できるにすぎないという判断をしたものになります。

今回も、あくまで従業員に化粧するよう協力を要請できるにとどまるとして、査定で考慮することが違法となる可能性があります。企業としては、応じない理由を聞き取るとともに、説得をしていくことを最優先にすべきでしょう」

【取材協力弁護士】
杉浦 智彦(すぎうら・ともひこ)弁護士
神奈川県弁護士会所属。刑事弁護と中小企業法務を専門的に取り扱う。刑事事件では、特に身柄の早期解放に定評がある。日本弁護士連合会中小企業法律支援センター事務局員としても活躍。
事務所名:弁護士法人横浜パートナー法律事務所
事務所URL:http://www.ypartner.com/