東京・銀座を拠点とする占い師、ソフィア・リブラさんが、風水に関する雑誌記事をブログに無断で使われ、著作権侵害されたとして、九州の占い師の女性Aさんに対して、損害賠償660万円をもとめる裁判を起こした。

裁判を起こす1年前にも、Aさんは同じ記事をブログで扱い、それが発覚すると、「今までにはない斬新な風水の記事で衝撃を受けた」「無断で依拠して書いた」と認めたうえで謝罪し、解決金まで支払っていた。

それなのに、「2度目」の発覚で訴えられると、今度は、ソフィアさんの記事にオリジナリティ(著作物性)はないと主張し、「記事を載せたことは故意ではない」とも主張して、ブログから記事を消した。

ソフィアさんは、弁護士ドットコムニュースの取材に「私の書いたものにオリジナリティがないというのであれば、なぜ彼女は記事を引き上げるのでしょうか? 著作権を侵害してないと主張するなら堂々と載せればいいじゃないですか」と語る。(編集部・塚田賢慎)

●どこかで見た覚えのある「風水」の記事を見つけた

2021年、ソフィアさんは占い師Aさんのブログ記事を見つけ、我が目を疑った。

ソフィアさんは複数の占い師が寄稿する雑誌『PHPスペシャル7月増刊号』(PHP研究所・2019年6月発行)で、「運を下げないデトックス風水」という記事を著した。

ところが、Aさんのブログの記事「風水の効果を高める『心のデトックス4カ条』」(同年11月27日付け)には、ソフィアさんの記事から表現を流用したと思われる文章が並んでいた。

たとえば、こちらを読み比べてみると…。

「空間の気の流れを整えると運が開くのは、家も部屋も、人の心も同じです。風水の効果を高めるには、心もデトックスしましょう」(ソフィアさんによる雑誌の記事)

「空間の気の流れを整えると運が開くのは家も部屋も人の心も同じです。風水の効果を高めるには心のデトックスが必要です」(Aさんのブログ記事)

「、(読点)」のあるなしと、心のデトックス「が必要」としていること。それ以外は同じ文章だ。

ソフィアさんが何より驚いたのは、流用は3年前にも起きていたからだ。

●謝罪と60万円和解「プレッシャーから原稿が書けなくなった」

Aさんは2019年から2020年にかけて、このブログや、自身がライターとして活動するウェブメディアにも記事を出していた。

記者が今年5月と7月、裁判記録を確認し、当時の経緯が判明した。

当時、ブログやメディアへの記事配信の指摘をソフィアさんから受けたAさんは2020年11月、謝罪の手紙を送っている。

〈「運を下げないデトックス風水」から多岐にわたって、ソフィアリブラ様に無断で依拠したうえでの記事を作成してしまったことを深くお詫び申し上げます〉

〈全くもって自分自身のことしか考えず、ソフィアリブラ様にご迷惑をおかけしたことを、本当に取り返しのつかないことをしてしまったことを、深く反省しております〉

手紙では「盗作」や「パクる」などの言葉は使わず、「無断で依拠」という表現で事実を認め、その動機も説明された。

〈誠に勝手であることは承知しておりますが、日々、記事を作成していく中で、自分の自信の無さと周囲のプレッシャーから原稿が書けなくなり、そのような時にソフィアリブラ様の「運気を下げないデトックス風水」(※ママ)の記事を読ませていただき、今までにはない斬新な風水の記事で衝撃を受けました。

的確でわかりやすい文章に感銘を受けて繰り返し何度も読ませていただきましたがそのような中で自分の認識の甘さから無断で依拠するという結果を生じさせてしまいました。誠に申し訳ございませんでした。今後は深く反省し、流用等一切活用することを自ら封じる所存です。〉

手紙の中では、記事タイトルを間違いながらも、「斬新な記事に衝撃」を受け、認識の甘さから「無断で依拠したこと」を認め、「今後は流用などしない考え」が記されている。

画像タイトル

また、60万円の解決金を支払うことで和解している。

●「風水」と「心構え」をあわせたところにオリジナリティがあると主張

そのトラブル解決から1年後、また同じ記事がブログに再び掲載されていた。

さすがに2度目は許せず、今年2月25日、裁判に訴えた。3つのことを請求している。

(1)ブログから記事を削除すること
(2)著作権侵害行為について660万円の損害賠償を支払うこと
(3)ブログトップページに謝罪文を掲載すること

訴状にはこう書かれている。

「原告(ソフィアさんの)著作物は、原告の長年に亘る占い師の経験から蓄積された思想を表現した創作物であり、風水における原告の思想の根幹を著すものである」(訴状から)

ソフィアさんは、弁護士ドットコムニュースに「私の記事は、言葉の一つひとつはたしかにありふれているものです。ただ、風水やテクニックだけではなく、心構えまで書いたところが新しいものです。風水と心の問題をつなげたところにオリジナリティがあります。ありふれた表現であると言われれば、私の名誉にかかわる問題です」と話す。

●うっかりしていたとAさん

一方のAさん側は、裁判で請求の棄却をもとめている。裁判記録によれば、主張はこうだ。

〈被告(Aさん)は、被告ブログに、風水に関する記事を執筆しているところ、被告ブログに掲載された過去の記事の全部又は一部を、そのまま、あるいは、若干の加筆や修正等をして、繰り返し、ブログに掲載することを行っていた。

本件の被告記事も、被告が被告ブログに掲載していた過去の記事のデータを利用して作成したものであるところ、その際、被告は、被告記事を作成する際に利用した上記過去の記事が、原告の記事を参考に作成したものであったことに気が付かなかった(本件訴状を見て初めて気が付いた)。かかる経緯で、被告は、誤って、被告記事をブログに掲載してしまったのである〉

裁判で問題になった記事をブログにあげたのは、故意ではないという主張だ。それに、記事は、ソフィアさんの記事ではなく、過去の自分のブログの記事に依拠したものであるともしている。

また、訴えられたことを受けて、記事はすでに削除したことも強調し、さらに、著作権侵害も成立しないという主張を展開している。

●ソフィアさんの記事には著作物性もないし、お互いの記事には同一性もない

ソフィアさんの記事は、ありふれた表現が使われて創作性の要件を欠くため、著作物性が認められず、また、双方の記事は似ていない(同一性がない)というもの。

本稿の冒頭で紹介した2人の文章をくらべると、「心もデトックスしましょう」(提案)、「心のデトックスが必要です」(説明)という記載は、提案と説明とで内容が異なり、両者の記事に同一性は認められないとする。

裁判で問題にされたのは、計5つの文章だが、たとえば、こちらの文章を比べたときの主張も同様だ。

やはりソフィアさんの記事に創作性はなく、両者の記事に同一性はないと説明した。

●もし著作物性が認められるとしても「660万円は高い」

前回の和解からソフィアさんの代理人をつとめる武谷直人弁護士は「裁判で争っている以上、被告側が著作物性のないことを主張するのは当然だと思います。他方、裁判所からは、ソフィアさんの記事がありふれた内容であることの証明は被告側でおこなうことを求めています」と話す。

なお、Aさん側は、仮に著作物性が認められるとしても、660万円の賠償額はあまりに高いとも指摘している。

この点、金額にはソフィアさんの深い怒りが込められているようだ。

「刑事告訴も考えましたが、著作権侵害で有罪となるハードルは高い。民事であえて法外と思われる請求をしています。Aさんは予約客がいっぱいだとインタビューなどに答えています。法律に抵触するようなことをする人が、予約が取れないほど繁盛してアドバイスしていたら、元の記事を作った私は納得できません」

漫画村やファスト映画の摘発などもあって、最近では著作権への関心が少しずつ高まりつつある。だが、ネットには「ブログ記事のパクリ方」を指南する情報まで多数存在している。

「知的財産権をめぐる問題の現状は、ペナルティを受けないことが圧倒的に多いと思います。そうした現状はおかしいので、裁判で決着をつけようとしました」

●紙の記事をネット記事に流用することの怒り

和解した1件目のトラブルにおいては、出版社の協力も得て、著作権侵害の度合いが強いと思われる記事をピックアップしてもらったという。ただ、記事の著作権は著者にあるため、法的手続きはソフィアさん自身でおこなうしかないことを出版社から説明された。

「雑誌の記事は私の著作物ですが、その中身を自分のブログにも出していません。なぜなら、ブログを読まれた方が、本を買わなくなっては出版社のマイナスになるからです。紙の本は、買った人以外には広がりませんが、ブログなどネット記事は多くの人に拡散していきます。

腹立たしいのは、ブログを読んだ方は、この風水と心構えを書いた記事の著作権者をAさんだと思うわけです。著作権者の私がこれだけ配慮しているのに、面識もない人間があたかも自分の理論であるかのようにタダ乗りする行為は、私の機会損失で許せません」

●「電話1本ください」願いはAさんに届かず

謝罪を受けたソフィアさんが思い出すのは、電話をもとめた際に、それをスルーされたことだ。

「​​彼女はプレッシャーがあったと手紙に書いていました。私も原稿に煮詰まることがあり、ものを書くのがつらいことは理解できるから、そのまま信じて、同業者だし許しました。

和解が決まったとき、武谷弁護士を通じて『怒りませんから、一度電話してください』とお伝えしてもらったんです。狭い世界ですから、これから接点ができることもあるでしょう。わだかまりが残らないように、話してチャラにしようと思ったのですが、結局は電話1本いただけませんでした」

反省していなかったと受け止めざるをえないのは、和解が成立しても、問題の記事をブログから完全に消さなかったことだ。

「私が彼女の立場なら、データは完全に消すと思います。何かの拍子にまた記事がネットに出てしまえば、今度こそ取り返しがつきません。本当に反省していたのでしょうか。ほとぼりが冷めたときに、また無断で依拠しようと思っていたのではないか、疑問です」

すでにブログから記事が消えていることから、裁判所からは和解も勧められた。検討しつつ、著作権侵害の成立を争っていく考えだ。

過去に「無断で依拠したこと」を認めた事実がありながら、それはさておき、裁判になった場合、検討の結果、著作権侵害が成立しないこともありえるのかという点で結末は興味深い。

弁護士ドットコムニュースは、謝罪文の内容と裁判での主張に矛盾がないだろうかと、Aさん側にもいくつか問い合わせたが、代理人を通じて「訴訟の進行状況及び、依頼者の意向により、頂いたご質問に対する、ご回答はできませんので、ご了承下さい」と返答があった。

ソフィアさんによれば、今回の件だけでなく、占いに関する記事の「パクり」は横行していると指摘する。

「マネられるって有名税だよ、と知人から言われることもあります。殺されたり傷つけられたりしたわけじゃないし、そんなことみんなやっているよと言います。有名税ですというのはやめないと。それに、私は無名です」