アニメや映画などで人気の「ラブライブ!」のファンの間で困惑が広がっている。「ラブライブ!」のファンを表す言葉「ラブライバー」の商標出願が、無関係の第三者によっておこなわれたことが8月、判明したためだ。

ネットでは、ラブライバーたちから「ラブライバーを名乗るとお金を取られる?」という不安が上がっているほか、ネットで親しまれてきた言葉だけに出願に対して批判も強まっている。

また、「ラブライブ!」シリーズのプロジェクトを手がけるバンダイナムコフィルムワークスは、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「ファンの皆さまに不安を招くような事態となっておりますことを大変遺憾に存じます」とコメントしている。

ネットから生まれた言葉で現在もファンに使われている「ラブライバー」の商標出願に問題はないのだろうか。

●ネット関係で目立つ商標出願

「ラブライブ!」は、KADOKAWAやサンライズ、バンダイナムコなど複数の企業によるプロジェクトで、漫画やアニメ、映画などメディアミックスの展開をしている。「ラブライブ!」のファンは主にネットでラブライバーと呼ばれてきた。

今回、「ラブライバー」は、第35類(広告業など)、第41類(インターネット配信による音楽・音声・映像・画像・文字情報の提供、オンラインによる音楽・音声・映像・画像・文字情報の提供、インターネットを利用して行う映像の提供、映画の上映・制作又は配給、インターネットを利用して行う音楽の提供、イベントの企画・運営など)、第42類(インターネットウェブサイトの設計・作成又は保守、ウェブサイトの開発・設計・作成など)で商標出願されている。

近年、ネットで生まれた言葉を商標出願するケースが増えている。2021年から2022年にかけて、ニコニコ動画やYouTubeで親しまれてきた動画ジャンル「ゆっくり茶番劇」が、個人によって商標出願される騒動があった。

このときは、個人が商標権を取得したことを発表したことからネットで炎上、個人から商標抹消申請がおこなわれ、2022年6月に抹消されたことで決着がついた。

●「ラブライバー」が商標取得される可能性「十分ある」

今回の「ラブライバー」も、ネットから生まれた言葉だが、商標出願に問題はないのだろうか。知的財産権にくわしい冨宅恵弁護士に聞いた。

まず、この商標が登録される可能性はあるのか。

「商標は、特許や意匠と違って、出願人が出願対象となるものを、自ら創出したり、創出した人から譲受けている必要がありません。

ですから、他人が使用している商標であっても、それが出願されていなければ、原則として、商標権を取得することはできます。

ただし、他人の氏名や名称・著名な芸名であること、他人の商標として広く認識されていること、他人の業務にかかるものと誤認されるおそれがあることなどの事情があれば、取得することはできません。

たとえば、現在登録されている商標を確認しますと、同一の指定役務(サービス)で、ある会社の『ラブラ』という商標登録が認められる前提で、異なる会社の『ラブラバンダイ』という商標登録が認められています。

つまり、特許庁は、『ラブラ』と『ラブラバンダイ』は異なる商標だと考えているわけです。

これを前提に、先ほどの例と同程度に『ラブライバー』という呼称に近い商標が出願あるいは登録されているかを確認しましたが、私が確認した限りでは見つけることができませんでした。

ですので、今回問題となっている『ラブライバー』が商標登録される可能性は十分にあると考えています」

●商標登録されても「ラブライバー」は使用できる?

では、商標登録された場合、ファンはもう「ラブライバー」という言葉を使えなくなるのだろうか。その影響について、冨宅弁護士は次のように説明する。

「特許庁に登録された商標がある場合、これが社会にどのような影響を及ぼすことになるのかを理解するためには、そもそも、商標がどのようなものであるかを理解しておかなければなりません。

商標というのは、他人の商品や役務と自分の商品や役務を区別する(自他識別)、自分が提供している商品や役務であることを表示する(出所表示)ものです。

ですから、商標は、自他を識別するもの、自身の出所を表示するものとして使用されていなければなりません」

すると、「ラブライバー」の使用はどうなる?

「みなさんが、『ラブライブ!』のファンであることを示す、あるいは、『ラブライブ!』のファンである人のことを指すために『ラブライバー』という言葉を使用しても、商標権を侵害することになりませんので、まったく問題ありません。

また、商標権というのは、登録の際に指定した役務と同一、類似の役務や商品に対してしか権利が及びません。

そして、今回の出願では、指定役務が35類、41類、42類と指定されています。

ですから、仮に『ラブライバー』という名称を自他識別や出所表示のために使用したとしても、今回指定された役務と同一の役務、類似する役務や商品に使用しないかぎり、商標権を侵害することにはなりません」

●「ラブライブ!」企業は「大変遺憾」

今回の「ラブライバー」の出願も、「『ゆっくり茶番劇』騒動の再来では」とファンの間で批判が高まっている。「ラブライブ!」シリーズのプロジェクトを手がけるバンダイナムコフィルムワークスは、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、次のようにコメントした。

「『ラブライバー』商標が出願された件につきましては、弊社も、8月30日時点で把握しております。

日頃より「ラブライブ!」シリーズを応援いただいているファンの皆さまに不安を招くような事態となっておりますことを大変遺憾に存じます。

今後のファンの皆様の活動を阻害することがないことを願っております」

【取材協力弁護士】
冨宅 恵(ふけ・めぐむ)弁護士
大阪工業大学知的財産研究科客員教授。多くの知的財産侵害事件に携わり、プロダクトデザインの保護に関する著書を執筆している。さらに、遺産相続支援、交通事故、医療過誤等についても携わる。「金魚電話ボックス」事件(著作権侵害訴訟)において美術作家側代理人として大阪高裁で逆転勝訴判決を得る。<https://www.youtube.com/c/starlaw>
事務所名:スター綜合法律事務所
事務所URL:http://www.star-law.jp/