東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、大会組織委員会の高橋治之元理事が受託収賄の疑いで再逮捕されたほか、出版大手のKADOKAWA元専務ら2人が贈賄の疑いで逮捕された。

さらに大会組織委員会の会長だった森喜朗氏が、KADOKAWAの競合相手だった大手出版社について「絶対認めない」と発言していたと週刊文春(9月15日号)が報じた。はたして、どこまで広がり続けるのか。

元東京地検検事の西山晴基弁護士に聞いた。

●高橋元理事は金銭の受け取りを否定しているが・・・

――高橋元理事はどんな罪に問われる?

報道によると、高橋元理事は、金銭の収受を否認していますが、知人の会社を通じて、金銭を受け取っていたと明らかになった場合、高橋元理事は、知人との共犯として、単純収賄や受託収賄の罪に問われます。

また、高橋元理事が物理的に金銭を受け取っていなくても、保有株式の割合や設立経緯などから、実質的にみて、高橋元理事の会社と知人の会社が一体関係にあると評価できれば、知人の会社が受け取った金銭についても、高橋元理事が収受したといえ、単純収賄や受託収賄の罪に問うことができます。

――そのような関係性が認められなかった場合は?

第三者供賄の罪に問うことが考えられます。

職務行為の対価として金銭提供されれば、贈収賄罪が守ろうとする「職務の公正」とそれに対する「社会一般の信頼」が失われることに変わりはないため、刑法197条の2は、「公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ・・・たときは、五年以下の懲役に処する」としています。

そのため、高橋元理事が、KADOKAWAから、スポンサー選定での便宜供与の依頼を受けたうえで、その対価として、知人の会社に金銭を提供させたのであれば、第三者供賄の罪に問われます。

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●捜査のメスは他の企業にも拡大

――他のスポンサーにも捜査は広がるか?

東京地検特捜部の捜査では、金銭の流れの全体を把握することが鉄則です。

今回の事件でも、特捜部は、高橋元理事を取り巻く金銭の流れの全体を把握しているはずです。

KADOKAWA事件により、AOKI事件は氷山の一角にすぎず、他のスポンサーからも金銭が流れていた可能性が明らかになりました。

背景には、1業種1社制度が撤廃されるなどして、過去の五輪では考えられないスポンサー数になった経緯がありますが、ワールドワイドオリンピックパートナー、ゴールドパートナー、オフィシャルパートナー、オフィシャルサポーターに分類されるスポンサー企業がある中で、特にオフィシャルサポーターに選定されていた企業には、オリンピックとの関係性があいまいな業種の企業もあります。

こうした企業が、仮に高橋元理事の差配により選定されていたのであれば、その選定にあたっても金銭が動いていた可能性があります。そのため、特捜部は、オフィシャルサポーターに選定された企業を中心に捜査を進めると思われます。

――KADOKAWA事件では、KADOKAWAが選定される前に、森氏が別の大手出版社の選定を拒否した疑いがあると報道されている。

もし、これが事実だとすれば、森氏もスポンサー選定にあたって、自己の職務に基づく事実上の影響力を行使したことがあったことになります。

このような森氏の影響力があったことに加え、AOKI前会長が高橋元理事の紹介を通じて森氏に金銭を渡していた疑いがあることも踏まえると、特捜部は、高橋元理事の差配により選定された各企業が、AOKIと同様に森氏に数百万円ずつ渡していた可能性もあるのではないかとにらんでいるかもしれません。

このまま特捜部が、芋づる式に他のスポンサー企業の捜査を進めて証拠を固め、最終的に、森氏ら政治家を含む関係者への捜査のメスを広げるのか、今後も目が離せません。

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【取材協力弁護士】
西山 晴基(にしやま・はるき)弁護士
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/