世界平和統一家庭連合(旧統一協会)の正体を隠した勧誘活動の違法性を問うてきた札幌市の郷路征記弁護士の最近の寄稿や講演をまとめたブックレット「統一協会の何が問題か 人を隷属させる伝道手法の実態」(A5判、100頁、税込880円)が、花伝社から出版された。

第1章では、35年前から郷路氏が元信者に詳細を聞き取って明らかにしてきた旧統一協会の伝道・教化の手法について内部資料を含めて詳録。第2章では法律的な論点に絞った「違法性」の解説、第3章は郷路氏のこれまでの道程を振り返る内容となっている。

付録には、弁護士ドットコムニュースが8月20日に掲載した「〝洗脳〟手法を徹底研究、旧統一協会『伝道の違法性』を追及した第一人者の終わらない闘い」も収録された。

郷路氏はあとがきで「これは、私の独自の取り組みに焦点をあてた他者による取材と執筆がおこなわれた初めてのもので、私にとってはとても意義深いものであるし、その後の展開への道を切り開いてくれたもの」と評価している。

安倍晋三元首相銃撃事件以降、郷路氏の言説に注目が集まったのは、元信者の信教の自由を守るための闘いだという普遍的な問題意識が出発点であることが背景だ。

7月の事件を機に騒がしくなった周囲をよそに、老弁護士の姿勢は35年間なにもぶれていない。彼の言葉の一部を抜粋してお届けする(小見出し、注釈は編集部が修正・追記)。

●旧統一協会によって信教の自由が侵害されている

安倍元首相銃撃殺害事件の衝撃によって、旧統一協会をめぐる問題が国民の関心を広く集め、大きな社会問題、政治問題になっている。今、国民が目にしているのは、統一協会による被害の激しさである。2世問題を含め、経済的被害や家庭崩壊など、その被害の類例のない広さ、深さ、重さに驚愕させられているのである。

被害の中核は、国民の信教の自由(自主的に宗教を選択する自由・権利)が統一協会によって侵害されたことであり、その結果統一協会の信仰を植え付けられて、判断基準(価値観)そのものを変えられたことであると私は考えている。

●元信者も被害者。理解できない言動も説明できる

国民の信教の自由が侵害され統一協会の信仰が植え付けられたという考え方は、統一協会によって各信者に発生させられる多面的な被害を、総合的に把握することを可能にすると私は考えている。そして、理解できない、おかしいのではないかと一般的には思われる統一協会員の言動を理解し、説明することができるものである。

そして、その考え方は統一協会の被害に対する対処方法を明らかにすることができる。すなわち、裁判において統一協会の伝道・教化課程が違法であることを、その内実に分け入って分析して主張して、統一協会に責任をとらせることを可能とするものであり、一人ひとりの元信者を被害者として評価することによって、その人達との関係を対等なものとし、その心理的な回復にも資する。

立法や行政の分野などにおいて、統一協会問題の根本的な解決のために、巨大な宗教団体の蓄積された勧誘テクニックに対して、国民の信教の自由を守るために社会はどのような制度を構築しなければならないのかについて、ひとつの考えを提起することができると私は考えている。

本書による提起が、今、再発防止策として検討されている統一協会に対する宗教法人法上の解散請求や反カルト法等の制定と並んで議論の対象とされ、検討の対象とされていくことを心から望んでいる。

(花伝社は、1993年に教育史料出版会から出版された「統一協会 マインド・コントロールのすべて」を復刊し、11月21日に発売予定。郷路氏が聞き取り調査と内部資料をもとに「伝道・教化課程」を克明に再現した内容になっている)