千葉県佐倉市の教育委員会の筆頭指導主事だった男性(当時50歳)が2013年に自殺したのは、過重労働などが原因だとして、妻(56歳)が11月2日、市を相手取り、慰謝料など約1億3400万円の賠償を求め、千葉地裁に提訴した。

公務員の労災にあたる公務災害を2018年に請求したが「過重な労働ではなかった」などとして不認定。審査請求したものの、2020年に棄却されている。

妻と代理人弁護士が千葉県政記者会で会見し、尾林芳匡弁護士は「男性は教委職員にもかかわらず、学校に出向いて対応していた。教員出身者で現場に精通しているからこそ、二重、三重の特別な負担があった」と説明した。

妻は「夫は理科教師として剣道部顧問として21年間、勤務しました。教員時代は、どんなに働いても明朗快活で前向きでした」と説明。自死だったことを今回初めて公表したという。

●担当業務外で忙殺されて時間外90時間

遺族側によると、男性が自ら命を絶ったのは2013年12月27日、仕事納めの日だった。年明けの通夜、告別式には、遠方から友人や教員仲間、教え子など計約1100人以上が集まったという。

1988年に教員として採用されて以降、学校現場一筋だったが、2009年に人事交流で佐倉市教育委員会に配属された。2013年度は、8人いる指導課指導班という職場で、唯一の筆頭指導主事だった。5人の同僚のうち2人の指導にも当たっており、業務が急増。時間外勤務は亡くなる直前の10月は72時間、加算されない早朝勤務を加えると90時間に上ったという。

男性は担当する業務の他に、複数の学校現場での指導案件にも対応。研究大会、研修会などの際に、市長の挨拶文を急遽作るなどの業務で忙殺されたほか、PC業務にたけていたため、上司や同僚のパワーポイントなどのトラブル対応に奔走していたという。

妻が異変を感じたのは死去した年の10月ごろで、ぼーっと一点を見つめたり、イライラしたりする様子があったという。職場の同僚からも「独り言が増えた」「元気がない、ぼんやりしている」などの証言が得られており、代理人弁護士は「うつ症状を発症していた」と主張している。

●2人の子ども、家族のために真相を知りたい

公務災害申請にあたって市が調査した内容を遺族側は不十分だと感じ、提訴に至った。直属の上司に当時の業務の詳細について問い合わせ、2カ月後に得られた返答書も、行事の日時が違っていたり、当時いない職員が記載されていたりで、不信感が募ったという。

当時、高校生と小学生だった子どもたちは今、父親の話を避けるようになってしまった。妻は「大きな存在の夫を失ってからの9年間、家族は笑みのない別の世界で暮らしています。なぜ夫が自ら命を絶ったのか、真相を明らかにしたい」と訴えた。