いわゆる「ファスト映画」を無断アップロードされたとして、東宝や日活など、映像大手13社が投稿者を相手取り、損害賠償計5億円をもとめた訴訟で、東京地裁は11月17日、原告の主張を全面的に認めて、5億円の支払いを命じた。

摘発から1年5カ月、民事提訴から判決言い渡しまで半年という異例といえるスピードだった。原告などが加盟する一般社団法人「コンテンツ海外流通促進機構」(CODA)の後藤健郎代表理事は判決後の記者会見で「まさにファスト(速い)解決だ」と述べた。

●被告は刑事事件で摘発されていた

ファスト映画とは、著作権者に無断で、映画作品を10分〜15分程度に再編集した映像のこと。

今回の裁判で被告となった投稿者3人は2021年6月、東宝や日活が著作権を有する作品の「ファスト映画」をYouTubeにアップロードして広告収益をあげたとして、著作権法違反の疑いで宮城県警に逮捕されて、同年7月に起訴された。

その後、主犯格のAは懲役2年・執行猶予4年・罰金200万円、Bは懲役1年6カ月・執行猶予4年・罰金100万円、Cは懲役1年6カ月・執行猶予4年・罰金50万円の有罪判決を受けて、同年12月に確定した。

●「著作権侵害に対する大きな抑止力になる」

今回の判決について、後藤代表理事は「われわれの主張が全面的に認められて、著作権侵害に対する大きな抑止力になる」とコメント。また、ファスト映画の損害額が1再生あたり200円と認められたことについて、「今後の対策に大きく資するものだ」と評価した。

そのうえで「まさにファスト解決といえる。(立件から)1年5カ月という短さで、非常に画期的だ。私の経験でも今回が初めて。ひとえに原告13社の迅速な判断と決断によるもの。その毅然とした態度に弁護団が呼応するかたちで尽力した」と振り返った。

"ファスト解決"に至った背景について、原告代理人の中島博之弁護士は「刑事事件で起訴事実以外の犯罪事実が認められ、(被告らは)裁判所に対して、『罪を償う』と述べていた。(形式的に争う姿勢だったが)実際の反証はされなかったことが大きい」と説明する。

●被告1人は海外に出国中

CODAによると、ファスト映画が流行した背景には、Z世代を中心とした若い世代の利用と、コロナの巣篭もり需要も相まって増えたとみられるという。

後藤代表理事は「やはり海賊版サイト、ファスト映画を見ないという認識を(ユーザー)一人ひとりが醸成することが大事だ。(そうでなければ)創造のエコシステムが崩壊してしまう」とうったえた。

中島弁護士によると、一連の事件以降、日本映画の「ファスト映画」についての投稿は激減し、ほぼなくなっているという。中島弁護士は「刑事だけでなく、民事でも数億円の賠償義務を負うペナルティの大きさを示せた」と話した。

実は、今回の民事訴訟の被告は3人で、この日に判決が言い渡されたのは、2人。残りの1人は海外に出国しており、訴状未送達のまま、訴訟が継続しているかたちだ。原告側は「やり得は許されない」として、国際送達も検討しているという。