44年前に鹿児島県大崎町で、男性の遺体が発見された「大崎事件」で、福岡高裁宮崎支部は6月5日、男性の義姉で、殺人罪などで服役していた原口アヤ子さん(95歳)の4度目となる再審請求を棄却した鹿児島地裁決定を支持し、即時抗告を退けた。

原口さんの弁護団は同日、東京・霞が関で記者会見を開き、福岡高裁宮崎支部の決定を「誰が読んでもおかしい」と厳しく批判するとともに、6月12日に最高裁へ特別抗告すると発表した。

また、大崎事件を「えん罪事件だ」として支援している日弁連は同日、小林元治会長の声明を公表。「一刻も早く再審開始決定を勝ち取り、再審公判を開かねばならない」と強調した。

●「自白や供述の信用性に影響ない」と判断

確定した判決では、男性は1979年、酒に酔って道路脇の溝に転落したところを近所の住民2人に発見され、軽トラックの荷台で自宅に運ばれた。その後、原口さんや家族らに絞殺され、翌日に遺棄されたとされている。

原口さんは捜査段階から一貫して無実を主張していたが、家族らの「自白」や、死因は窒息死であるとする当時の鑑定、トラックで運んだ際には男性が生きていたとする住民の証言などから有罪(懲役10年)とされた。

これに対して、今回の再審請求で、弁護団は、新たに救命救急医の鑑定を証拠として提出。男性が転落した際に頸髄(けいずい)を損傷し、首を保護されないまま自宅に運ばれたために、呼吸が停止して死亡した可能性が高いと主張していた。

しかし、福岡高裁宮崎支部は、新たな鑑定について「旧鑑定の信用性を減殺するものではある」としながらも、家族の自白や住民らの供述の信用性に影響はないなどとして、採用しなかった。

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●「こんな裁判所は日本の恥」

弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士は会見で「この決定は大変衝撃的でしたが、一読するとまったく説得力に欠けた内容であることがわかります。判例からみても事実認定の方法からみても、一般常識からみても、誰が読んでもおかしいです」と批判した。

また、鴨志田弁護士は、この決定を聞いた原口さんの長女の京子さんが「こんな裁判所は日本の恥です」と話していたと語り、「この決定を、最高裁が著しく正義に反すると言わなければおかしいと思います。日本の司法のために戦い続けます」とした。