岸田文雄首相が下品な言葉で語る「フェイク動画」がSNSで拡散されている。この動画は、生成AIで作成されたもので、「日テレNEWS24」「LIVE」「BREAKING NEWS」など、あたかも実在する報道番組かのようなテロップも入っていた。

この騒動を受けて、日本テレビは「しかるべき対応をして参ります」というメッセージを公表した。一方で、動画を投稿した男性はエックス(旧ツイッター)で謝罪し、「訴訟等は停止を…」と呼びかけている。

実際問題として、岸田首相や日本テレビは投稿者の男性を提訴できるのだろうか。ネット中傷問題にくわしい中澤佑一弁護士に聞いた。

⚫️日テレ「然るべき対応をして参ります」

問題となっているのは、岸田首相が下品な言葉で語り続けているフェイク動画で、日テレは11月3日、「放送、番組ロゴをこのようなフェイク動画に悪用されたことは、到底許すことはできません。フェイク動画について今後も必要に応じて然るべき対応をして参ります」というメッセージを発信した。

投稿の男性は11月4日、エックスで謝罪し、訴訟はやめるよう日テレに呼びかけた。

「日本テレビさま 岸田総理のAIフェィク動画は全て削除させて頂きましたのでどうか訴訟等は停止してください。 私には日本テレビの業務を妨害する意図はありませんし攻撃をする意図もございません。 全て削除し平に謝罪させていただきます 申し訳ございませんでした」

⚫︎岸田首相と日テレへの賠償額は?

もし、岸田首相や日テレが法的措置をとった場合、投稿者の男性はどのような責任を問われるのだろうか。中澤弁護士は次のように指摘する。

「岸田首相については、名誉毀損(民事刑事両方)と肖像権の侵害(民事)が考えられます。日テレについては、ロゴの使用による商標権侵害(刑事・民事両方)、虚偽の報道したかのような外観が作出されていることをとらえた名誉毀損(民事刑事両方)に問われる可能性があります」

では、賠償額はどの程度になるのだろうか。

「賠償額を予想するのは難しいのですが、一般的に名誉毀損や肖像権侵害は、100万円以上の賠償が命じられることは少ないです。しかし、岸田首相の場合、閲覧数が相当あったようであれば、著名人であることも考慮して、数百万万円以上の賠償になる可能性もあります。

ただし、賠償額を軽減する事情としては、動画が単に口を動かしているだけの簡易な作りで一見してフェイク動画とわかるため、信じた人は少ないはずだなどの主張は可能だろうと思われます。日テレのほうは、それよりも低額になるのではと思います」

動画制作者は動画を削除し、謝罪しているが、賠償額に影響するのだろうか。

「損害額算定の基礎として閲覧数は重要になります。そのため削除してそれ以後の閲覧を止めたというのは損害拡大を停止した事情として賠償額に影響するでしょう」

【取材協力弁護士】
中澤 佑一(なかざわ・ゆういち)弁護士
発信者情報開示請求や削除請求などインターネット上で発生する権利侵害への対処を多く取り扱う。2013年に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(中央経済社)』を出版。弁護士業務の傍らGoogleなどの資格証明書の取得代行を行う「海外法人登記取得代行センター Online」<https://touki.world/web-shop/>も運営。
事務所名:弁護士法人戸田総合法律事務所
事務所URL:http://todasogo.jp