「家族が逮捕されて警察から呼び出されました。私は今後どうなるのでしょうか」。弁護士ドットコムに複数の相談が寄せられている。

ある相談者は「なぜ、呼ばれたのでしょうか。私も疑われているのでは」と不安な様子だ。別の相談者は「連絡を受けたが、家族とは絶縁していて関わりたくない。こちらへの被害を最小限にとどめたい」と綴っている。

警察から連絡を受けた家族は、何をしなければならないのか。関わりたくない場合、どうすればよいのか。坂野真一弁護士に聞いた。

●家族の呼び出しは「絶対」ではない

ーー家族が逮捕された場合、警察にはかならず呼び出されるのでしょうか。

そのようなことを定めた法律・規則等は、私が知る限りはありません。そのため、ある人が逮捕された場合、その家族が絶対に警察に呼び出されることにはならないと考えます。

とはいえ、現実として、警察等から家族に連絡が入ることはよくあることだといわれます。警察からの呼び出し連絡を受ける理由はいくつか考えられると思いますが、代表的な事例としては、たとえば以下の理由が想定されます。

(1)逮捕者が差し入れ等を要求している場合
突然逮捕されたために、金銭や着替えがなく家族に身のまわりの物を差し入れてほしい、取引先などに連絡してほしい等と希望している場合

(2)家族を「共犯者」の可能性があるとみている場合
逮捕者の犯罪の疑い(被疑事実)に家族が関与しており、捜査機関が共犯者の可能性があると判断し、取調べをしたい場合

(3)家族に「参考人」として事情聴取したい場合
捜査期間が逮捕者の被疑事実に家族は関与していないと判断していても、逮捕者の身上経歴等について参考人として事情を聴きたい場合

(4)家族に身元引受人になってもらいたい場合
・逮捕者を勾留(逮捕より長期の身柄拘束)まではせずに釈放するつもりでいるが、捜査を継続する場合
・捜査の結果、微罪処分や起訴猶予にする場合、など

(5)逮捕者が少年の場合

●要求を拒否できる場合も

ーー家族はどのように対応すればよいのでしょうか。拒否することはできないのでしょうか。

それぞれの場合について考えてみましょう。

(1)逮捕者が差し入れ等を要求している場合
逮捕されている期間(逮捕時から48時間以内で、勾留されるまで)は弁護士しか面会できません。面会できなくても、この期間に家族からの差し入れをおこなうことは可能ですが、差し入れできない物品や受付時間の制約はあります。逮捕者が留置されている警察署に問い合わせて確認しましょう。

もちろん、これまでの逮捕者との関係から、差し入れ要求を拒否したい家族もいるでしょうし、拒否することも自由です。その場合でも、最低限の生活必需品は供与されるはずなので、逮捕者が留置場で困ることにはなりません。

心配ならば最寄りの弁護士会に当番弁護士の出動を依頼するのもよいでしょう。弁護士は警察官の立会いなしで面会できるので、差し入れの要望や逮捕者から取引先への伝言などを伝えてくれる場合もあります。

(2)家族を「共犯者」の可能性があるとみている場合 (3)家族に「参考人」として事情聴取したい場合
捜査機関からは「逮捕された人の件で事情を聴きたいので、来てもらえないか」との連絡がくることが多いと思われます。家族が被疑事実に関与していると疑われているか否かは、この時点では区別がつかないかもしれません。

家族自身が逮捕等の身柄拘束を受けていない場合には、捜査機関から「捜査のために事情を聴きたい」といわれても、応じる義務はありません。

万が一、家族が被疑事実に関与し、捜査機関も共犯者として捜査していた場合には、出頭要請に応じないと、その点を重視されて「罪証隠滅の危険がある」と考えられてしまうおそれはあります。このような場合、逮捕状を請求されるなど、家族が身柄拘束を受けてしまう可能性もリスクとして考えられます。このような場合には、弁護士に状況を正直に話して、対応について相談されるとよいでしょう。

(4)家族に身元引受人になってもらいたい場合
「家族が身元引受人にならなければならない」などの法律上の決まりはありません。そのため、拒否することもできます。ただし、身元引受人がいたほうが逃亡のおそれが少なくなると判断されることが多いので、逮捕に続いて勾留される可能性が低くなることもあります。

同居している家族に身元引受人を依頼する場合が多いと思われますが、状況によっては勤務先の上司・同僚や友人・恋人でもなれる場合があります。

身元引受人は、釈放する人の今後の社会生活の監督をおこなうこと、捜査を続ける場合には逃亡・証拠隠滅をさせないこと、捜査機関から呼び出しがあったときに確実に出頭させるために協力すること、などを約束させられることもあります。

もし、釈放された人が勝手に逃亡するなど、約束を守れなかったとしても、通常は身元引受人が責任を問われることはありません。ただし、新たな犯罪や逮捕された被疑事実についての証拠隠滅に加担したり、逃亡を手助けしたりすれば、責任を問われるおそれはあるので注意が必要です。疑問点は、かならず弁護士に相談しましょう。

(5)逮捕者が少年の場合
少年(未成年者)の法定代理人は親権者になるので、親権者である家族に連絡がくるのは通常のことです。少年は成熟しておらず、捜査機関からの誘導にも弱いので、放っておくと不利な調書を取られてしまうリスクも高いといえます。さらに、少年が、費用の不安から弁護士に依頼できないと誤解してしまう事態も考えられます。

少年であっても、逮捕期間中は弁護士以外とは面会できません。そのため、弁護士に依頼するか、最寄りの弁護士会に連絡して当番弁護士に面会に行ってもらい、まずは少年の不安を軽減するよう努めるとよいでしょう。差し入れについては、少年も成人と同様です。

【取材協力弁護士】
坂野 真一(さかの・しんいち)弁護士
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」(いずれも中央経済社)、「増補改訂版 先生大変です!!:お医者さんの法律問題処方箋」(耕文社)、「弁護士13人が伝えたいこと〜32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。
事務所名:ウィン綜合法律事務所
事務所URL:https://www.win-law.jp/