自身の女性器をかたどった作品「デコまん」を展示したり、女性器のデータを提供したなどとして、芸術家・漫画家の「ろくでなし子」こと五十嵐恵被告人がわいせつ電磁的記録頒布などの罪に問われていた裁判で、東京地裁(田辺三保子裁判長)は5月9日、データ提供については罰金40万円(求刑罰金80万円)を科し、女性器をかたどった作品を展示したことについては無罪とする一部無罪判決を言い渡した。

判決の後の報告集会で、弁護団は一部無罪の判決について「歴史的に価値の高い」と評価しつつも、データの頒布について、裁判所が性器を精巧にかたどったことを重視し、頒布の意図や制作の過程を考慮しなかった点について、「硬直的だ」と批判。控訴して完全無罪を目指すことを表明した。

●「女性器に見える、見えないで判断するのはおかしい」

弁護団によると、「デコまん」と呼ばれる作品を展示したことについては、裁判所は、「デコまん」が女性器を連想させるとしつつも、着色や触感などに着目し、「女性器をかたどったものだとしても、一見して人体の一部といえるものではなく、ただちに女性器を連想させるとはいえない」とした。

そのうえで、「デコまん」は「ポップアートの一種として捉えることができる」「見るものを楽しませたり、女性器に対する否定的イメージを茶化したり制作意図を読み取れる」として芸術的な要素を認め、「性的刺激が緩和されている」としてわいせつ性を否定した。

一方で、3Dデータについては、女性器周辺部についての起伏や細かいひだなどを立体的に忠実再現されていることを指摘。女性器の精密な再現だということを重視し、わいせつ物だと判断した。

弁護団は、わいせつ物頒布罪などを定めた刑法175条が、表現の自由を認めた憲法21条、条文の明確性を求めた憲法31条に反し無効であることも主張していたが、裁判所は「表現の自由といえども絶対無制約ではない」「(性的秩序を守るため)価値観が多様化しつつある今日においても十分合理性必要性を有している」「(わいせつの意味は)十分明確だ」として主張をしりぞけた。

弁護団の山口貴士弁護士は、「女性器そのものが写ったらダメだよという判断を前提にしている。裁判所は『性器そのものが露骨に写っていたらわいせつ』という考え方を脱し得てない」と裁判所の考え方が硬直的だと批判した。

主任弁護人の須見健矢弁護士は、「(3Dデータの頒布は)『プロジェクトアート』というアート作品の一部だ。有識者の意見書も提出したのに、そこを裁判所に理解してもらえなかったのは非常に残念だ。プロジェクトアートの活動をしている人に萎縮させてしまう」と危機感を表明。「控訴審では、3Dデータをなぜ頒布したのかという点について、制作意図や芸術性をしっかりと理解してもらうよう戦いたい」と意気込みを語った。

また、ろくでなし子さんは、裁判所が「デコまん」に芸術作品としての評価をしたことについて「非常にうれしい」としつつ、「(裁判所は)性器イコールわいせつという観念から逃れていない。女性器に見えるかどうかでわいせつ性を判断するのはおかしい。私は、女性器に見えないように(作品を)作りたいのではなく、概念を変えたい。自分の無罪を信じている」と語っていた。

(弁護士ドットコムニュース)