2014年の衆院選で、供託金300万円を用意できず立候補が認められなかった埼玉県の自営業男性(50代)が5月27日、立候補に必要な「供託金」制度は違憲だとして、国に慰謝料など300万円を求め、東京地裁に訴えを起こした。提訴後、男性と弁護団長の宇都宮健児弁護士らが、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「供託金制度が、少数派や社会的弱者の政治参加を妨げている」と指摘した。

訴状などによると、男性は2014年の衆院選に立候補しようとしたが、供託金を用意できず、立候補届が受理されなかった。

供託金は公職選挙法で定められた制度で、立候補する際に、衆院選、参院選ともに、選挙区なら300万円、比例区なら600万円を法務局に預ける。選挙後、一定の得票数に達していれば返還される。弁護団は、「供託金」制度は、立候補の自由を保障する「憲法15条1項」と、「立候補の資格を財産または収入によって差別してはならない」と定めた「憲法44条」に反すると指摘した。

●供託金ゼロで売名候補は増えるか?

供託金制度は従来、売名候補や泡沫候補の立候補を抑制するものと考えられてきた。宇都宮弁護士は、アメリカ、ドイツなど供託金が存在しない国や、イギリスなど低額の国の例をあげ、次のように語った。

「売名候補者を供託金で防ぐことが民主的なのかどうか。その判断を有権者に委ねるべきではないか。日本はおそらく世界一高い。供託金がゼロの諸外国で売名候補が乱立しているとは聞いたことがなく、説得力がない」

2013年には、供託金の違憲性をめぐって争われた訴訟で、東京地裁が「供託金制度は候補者の乱立を防ぐ手段としては合理的。金額も低くはないものの違憲とは言えない」と判断している。しかし、宇都宮弁護士は、格差が広がる日本ならではの問題を指摘した。

「供託金制度は、地盤・看板・カバンを持つ既成政党、既成政治家に有利。莫大な供託金を確保できる政党しか、政治的権力を持てない。低所得者は、投票はできても、立候補はできないということなら、多様な国民の声をどうして国会に送れば良いのか。(裁判所には)再考を促したい」

裁判では、供託金制度の是非だけでなく、金額の高さの違憲性を追及するという。

(弁護士ドットコムニュース)