2020年東京オリンピックのゴルフの競技会場に予定されているゴルフクラブが、女性を正会員に認めていないことで、「女性差別」などとして問題となっている。国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪憲章の原則に抵触するとして、改善を求めている状況だ。

問題となっているのは、「霞ヶ関カンツリー倶楽部」(埼玉県川越市)。80年を越える歴史を持つ名門クラブだが、正会員は男性だけに限定されている。報道によると、女性は、(1)すべての営業日に利用できる正会員になれないが、(2)営業日のうち9割以上でプレーできており、運営にも女性が参画しているという。

IOCの求めに対して、組織委員会や競技団体などが今後、対応を協議することになっている。一般論として、ゴルフクラブの「正会員になれない」というのは、女性差別にあたるのだろうか。憲法の問題にくわしい作花知志弁護士に聞いた。

●憲法の人権規定は「私企業」にも間接的に適用される

「ゴルフクラブは私企業ですが、憲法の人権規定は、私企業についても、民法90条の公序良俗規定の解釈として間接的に適用される、というのが最高裁判例の立場です。

男性の定年年齢を60歳、女性の定年年齢を55歳と定める就業規則は、性別による不合理な差別を定めたものとして、民法90条の規定により無効とした最高裁判決は、その代表的な存在です(最高裁昭和56年3月24日)。

ですので、私企業としては、国の場合と同じように、自分たちがおこなっている男女の区別について、『合理的な理由があること』を証明しなければなりません。その証明に成功しなければ、その区別は『不合理な差別』として公序良俗に違反し無効である、とされます。

性差別を厳格に解釈する最高裁の立場は、女性の再婚禁止期間についての最高裁大法廷違憲判決でより明確になったと考えます(最高裁平成27年12月16日)。

さらに、昭和61年に日本が女性差別撤廃条約を批准していることも、この問題を考えるうえで重要なポイントとなると思います。条約は、国内法秩序において、法律よりも上位の効力があり、民法の公序良俗規定などの法律の解釈に影響を与える存在とされているからです」

●「合理的な理由を証明するのは、なかなか難しい」

「実は、ゴルフクラブの会員制限規定については、すでに裁判所の判断が出ているケースがあります(東京地裁平成7年3月23日)。

この判決は、『日本国籍を持つ人だけがゴルフクラブの会員となれるとすることは、不合理な差別であり許されない』としたものです。ゴルフクラブの会員の資格についても、合理的な理由がなければ差別してはならないことを認めた点で、性差別の問題についても参考になります。

これまで述べたことは、『ゴルフクラブの正会員に女性がなれないことが、現行法の下で許されるか』を考える際に大きな影響を与えるものです。一法律家として、私個人の意見にすぎませんが、ゴルフクラブの正会員となる要件に性別で区別をおこなうことについて、『合理的な理由』が存在することを証明するのは、なかなか難しいのではないかと感じています」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/