裁判で解雇が無効となった時に、労働者がお金を受け取ることで紛争を解決する「解雇の金銭解決制度」の問題点について、日本労働弁護団事務局長の嶋崎量弁護士が7月20日、東京都千代田区の連合会館で講演した。

「解雇の金銭解決制度」について、厚生労働省の有識者検討会は2015年6月から議論を開始し、今年5月に報告書をまとめている。報告書では、導入賛成派と反対派の意見がどちらも記載された上で、新制度について「一定程度必要性が認められ得る」とし、今後さらに検討を深めていく。

●新制度を作る必要はない

新制度導入賛成の立場を取る経済同友会は2017年4月、現状について、

・解決金額や解決に要する時間に関する予測がしづらい

・制度の利用率の低さや制度間の連携が不十分

と問題点を指摘し、「(現行の制度だと)労働組合などの支援が受けにくい中小企業の労働者は、不当解雇であっても解決金が得られず、泣き寝入りしている場合がある」と新制度導入による労働者側のメリットを主張している。

これに対して、嶋崎弁護士は、現在も和解手続きで金銭の支払いはあり、報告書にもあるように2013年に4つの地裁で調停または審判した労働審判452件のうち、96%が金銭で解決されていると指摘。

「現在もほとんどが金銭で解決しているから、わざわざ新しく作る必要がない。泣き寝入りしている現状に対しては、訴訟費用を軽減するとか、解雇されたら戦えるという知識をちゃんと伝えることが大事なのではないか」と反論した。

●労働者の雇用がコントロールされる

また、報告書によると、新制度の導入を必要とする立場から、「(導入で)公正かつ客観的な基準が示されることによって、既存制度も含め、金銭的・時間的予見可能性を高める有効な方策である」といった意見が出ている。解決金額の目安となる上限・下限のガイドラインの策定や、金銭補償額を賃金の半年から1年半の範囲とする案も提言された。

嶋崎弁護士は「このあたりが使用者側の本音」といい、「使用者側が解雇したい場合に、『裁判を起こすと時間も金もかかるけど、今ならこれだけ払うよ』と投げかけて、退職勧奨が行われるのではないか。使用者側が『これだけ払えば解雇できる』という目安ができてしまうと、労働者の雇用もお金でコントロールされかねない」と懸念を示した。

対案として就労請求権を認めることなどを提案。「裁判所は解雇が無効となっても、就労させなさいという判断をしない。これだとお金だけ払えば職場戻さなくていいというふうになってしまう。職場に戻って働きたくても、お金でけりをつけるしかないという労働者は多い」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)