国税庁は6月23日、10年後の税務行政をイメージした将来像を公表した。注目すべきは、AIの活用をうたっている点だ。

税務調査をめぐって、過去の情報のシステム的なチェックや統計分析の手法を活用することにより、納税者ごとの調査必要度の判定化を精緻なものにするとともに、最適な接触方法や調査が必要な項目について、システム上に的確に提示されるようになるという。

また、滞納整理関係でも、優先着手事案の選定や、最適な接触方法などで役に立つことが想定されるという。公売でも、価格の算定のための分析にAIの活用が望ましいとしている。

税務調査はこれまで、調査官の勘に頼る部分があったとも指摘されているが、AIの活用によって、脱税をどこまで見抜くことができるようになるだろうか。具体的にどんな将来像が描けるのか。李顕史税理士に聞いた。

●AIで自動的にはじき出した方が効率的だが・・・

「AIで脱税や不正を見つけられるかといえば、必ずしもそうではないと私は思っています。現在でも、不正や脱税を見つけるのには、様々な手法が使われていると考えられています」

具体的にはどのようなものか。

「例えば、同業他社の財務データと比較する手法です。温泉施設では売上が同程度なのに、タオル代が異様に高いとなると、経費の水増しにより利益を圧縮しているのではないかと考えるのが通常でしょう。

利益を少なく偽装している可能性があるために税務署職員は調査するのですが、タオル代が高い理由(品質の良いタオルを提供しているなどといった事情など)があれば、申告内容が正しいと確認できるわけです。この意味で、最後には人間の目が必要になってきます。同じように飲食店でも店舗外に出しているビールケースの量をみて、税務署員はおおよその飲食店の売上や利益が分かると言われています。

また、利益を数年単位で追ってくと、利益額が2億円、4億円、6億円と順調に増えていると翌年は8億円と予想できます。ところが蓋を開けてみれば翌年の利益は、わずか1千万円だった。この場合は、利益を不正に圧縮しているのではないかと疑われても不思議ではありません。しかし、何らかの理由で商品が売れなくなり利益が激減することもあり得ます。このようなケースでも、最後は人間の目、税務署職員の目が必要になってきます」

では、AIは活用チャンスはないのだろうか。

「そんなことはないと思っています。税務署には膨大な件数の申告書が届きますから、すべての申告書を人間の目でチェックするのは不可能です。人間の経験と勘により、疑わしい申告書を探し出すよりも、AIを利用して自動的にはじき出した方が効率的といえます。

最後は税務署員の人の目で確認するでしょうが、脱税の可能性がある申告書を抽出する作業はAIになると思います。例えば隠し口座を持っている可能性がある会社を抽出するなどが考えられます」

【取材協力税理士】

李 顕史(り・けんじ)税理士

李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会委員、東京都大学等委託訓練講座講師。あらた監査法人金融部勤務等を経て、困っている経営者の役に直接立ちたいとの想いから2010年に独立。金融部出身経歴を活かし、銀行等にもアドバイスを行っている。

事務所名 :李総合会計事務所

事務所URL:http://lee-kaikei.jp/

(弁護士ドットコムニュース)