東京・歌舞伎町にあるビルのオーナー男性が、テナントの違法パチスロ賭博店から犯罪収益の一部をリース料として受け取っていたとして、犯罪収益等収受の疑いで逮捕された。16回にわたり約1050万円をリース料として受け取っていたとみられている。

報道によると、この男性が所有する3つのビルでは、違法賭博店の摘発が相次いでおり、警視庁から違法な店舗に場所を貸さないよう、複数回警告を受けていたという。

この男性は、ある程度、違法性が分かる立場にあったと言えそうだが、もしビルのオーナーがテナントのことを何も知らなかった場合は、どうなるのだろうか。村上英樹弁護士に聞いた。

●貸すときに知らなかったら「犯罪収益等収受」にはならない

ーー犯罪収益等収受とはどういうもの?

「犯罪収益等収受」の罪というのは、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」11条に定められた罪です。

犯罪によって収益を上げている者がいるために犯罪がなくならない、という実態をなくすために「犯罪収益等収受」の罪が定められています。家賃という形であっても、違法なパチスロ賭博店の売り上げの一部を受け取っていたら、「犯罪収益等を収受した」ことになります。

もっとも、法律で罰せられるのは、犯罪収益によって家賃が払われるという事情を、貸すとき(契約のとき)から知っていた場合に限ります。

ーーということは、今回のビルオーナーは最初から知っていた可能性があると?

通常のビルのオーナーとしては、賃貸している店舗が違法な営業をするかどうかは分からない場合が多いでしょう。これは仕方のないことで、このような場合は、犯罪収益等収受の罪にはなりません。

このビルのオーナーの場合は、貸す段階から、賭博などの違法営業をする店に貸すのだということを、オーナー自身が知っていることが明らかだと考えられたので逮捕されるに至ったと思われます。

ーー貸した後に違法営業をされた場合はどうしたら良い?

貸すとき(契約のとき)には分からなかったけれども、貸した後にテナントが違法営業をし始めたという場合には、「犯罪収益等収受」の罪にはあたりませんが、それでも、通常のオーナーの立場としては出て行ってもらいたいでしょう。自分のビルを犯罪の温床にはしたくないでしょうから。

犯罪にあたるような違法営業をするテナントについては、貸し主と借り主の間の信頼関係が破壊されたとして、オーナーの意思で契約を解除することができます。解除そのものは一方的にできますが、それでもテナントが出て行ってくれない場合には、訴訟をして明け渡しを求めていくことになります。

オーナーの立場として、貸すときにテナントをできるだけ調査をすることが一番ですが、それでも分からないことがあるので、貸した後でも店舗の状況には目を配って、犯罪や違法営業が行われる様子があれば適切に対処したいものです。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
村上 英樹(むらかみ・ひでき)弁護士
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故、不動産問題、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。
事務所名:神戸シーサイド法律事務所