奈良市にあるCD・レコードショップ「ジャンゴレコード」のツイートが7月9日の投稿以来、5000回以上RTされるなど、ネットで話題になっている。来店した女性グループが何も買わず、店内で写真を撮って帰っていったという内容だ。

若い女性3人組が来店したものの、SNSへの投稿目的の来店だったようで、「1人がレコードを見てる様子を友人が撮影し、すぐに帰っていった」という。今年の春から、同様の出来事が4〜5回起きているが、「買った人は1人もいない」そうだ。

このツイートをきっかけに、インスタグラムに代表されるSNSの活用法と店舗の関係性が議論されている。ネットでは「宣伝になる」と歓迎する声や、「営業妨害」など批判的な見方も出ている。

もし、若い女性たちが「インスタ映えする」と撮影だけの目的で来店して、店主が、疎ましく思った場合、退店を命じることなどはできるのだろうか。中村憲昭弁護士に聞いた。

●退店を命じることはできるが…

お店側はお客さんを退店させることはできるのだろうか。

「店主としては、商品を購入する意思のない人に対し、店舗の占有者として、施設の管理権限を根拠に退店を命じることは可能です。が、実際に退店を命じるのが得策かどうかは考えた方が良いでしょう」

お店で写真撮影すること自体は、違法ではないのか。

「客が店内で写真撮影することは、店側が禁じていない場合、直ちに違法にはなりません。さらに、撮影した写真をSNSでアップしても、他者の権利を侵害しない限り、原則的には法的な問題は生じません。店の売り物の本やレコードであっても、単に外観を撮影する程度であれば著作権侵害にもなりません。

しかしながら、店が張り紙等で撮影を禁止していた場合には、当然撮影は禁止です。例えば家電量販店では、他社との価格競争防止のため、写真撮影を禁止しているところもあります」

●店内で撮影する場合には、店主に一声かけよう

写真撮影をしただけで、違法になるケースはないのか。

「撮影禁止を明示していなくても、例えば店の機密情報やプライバシーに関わるもの(顧客情報など)を撮影してアップした場合には、プライバシー権侵害や信用棄損等の民事上の問題が生じえます。

また、許可を得ないで撮影した場合、撮影されることを望まない第三者が写りこむことも考えられます。客として店内で撮影する場合には、事前に店主に一声かけた方がトラブルになりません」

今回のケースでは、違法ではないが実際に追い出すとなると別問題になりそうだ。

「法律上店主に退店を求める権限があるとしても、実際に退店を求めるかどうかは、法律問題というよりは経営問題でしょう。SNS全盛の今、店内撮影した写真がきっかけで、レコードがおしゃれなものとして若者に広まることも期待出来ますし、撮影者に購入意思はなくても、口コミ宣伝という無償ながら効果的な宣伝によって、店の売上向上につながるかもしれません。

書店での立ち読みも、昔ならはたきで追い払われたかもしれませんが、今は積極的に認める店もあります。販売の邪魔だと考えるか、口コミ宣伝の効果ととらえるかは、人それぞれだと思います。

昨年、コンビニのアイスケースに入って、写真撮影した若者が不法侵入で逮捕されたことがありました。これは撮影そのものが違法なわけではなく、威力業務妨害や器物損壊に該当する行為を行った証拠を自ら保存してしまったわけですが、受け狙いで軽率な行動に出ることは、くれぐれも避けていただきたいと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
中村 憲昭(なかむら・のりあき)弁護士
離婚・相続、交通事故など個人事件と、組織が万全でない中小企業を対象に活動する弁護士。裁判員裁判をはじめ刑事事件も多数。その他医療訴訟や建築紛争など専門的知識を要する分野も積極的に扱う。
事務所名:中村憲昭法律事務所
事務所URL:http://www.nakanorilawoffice.com/