産経新聞の「号外」を装って、「安倍夫妻 逮捕」「安倍総理逮捕」などの見出しがついた画像がツイッター上に投稿されていることを受けて、産経新聞社は8月3日、「極めて悪質な偽号外だ」とするコメントを発表した。

同社によると、偽号外に関して、読者から情報提供があったという。いずれも学校法人「森友学園」の補助金詐取事件を報じたインターネット向けの「PDF号外」を加工したものとみられるという。拡散されている画像には、産経新聞の題字の一部にはぼかしがかかっている。

同社広報部は「産経新聞社発行を装った極めて悪質な偽号外である。ツイッター社への削除要請とともに、法的措置も含め対応を検討している」とコメントとしている。今回の偽号外には、どんな法的問題があるのだろうか。パロディということですまされないのだろうか。深澤諭史弁護士に聞いた。

●内容以前に「偽号外」自体が違法

一般論として、既存の新聞を装った「偽号外」には、どんな法的問題があるのか。

「まず、既存の新聞のデザイン(ロゴなど)を流用した場合、新聞社に対して著作権侵害の罪が成立する可能性があります。加工した場合も、程度によっては、著作権の一部である翻案権(ある著作物を基にした別の著作物を作成されない権利)や同一性保持権(著作物を改変されない権利)の侵害という問題が生じます。

また、その新聞社名義の偽文書を作成したということで、私文書偽造等の罪に問われる可能性もあり得ます」

仮に、「偽号外」の内容そのものに問題がなく、真実のことを記載していたとしても、問題になるのか。

「はい。新聞社からすれば、自社のデザイン、つまり著作物や名前を無断使用されているわけですから、内容以前に『偽号外』それ自体が違法であるということになります」

●フェイクニュースの拡散、共犯になりかねない

「パロディ」だとして許されることはないのか。

「『パロディであれば著作権や名誉権等、他人の権利を侵害してもよい』という法律は、日本にはありません。『パロディ』であるかではなくて、以上にお話ししたような権利侵害があるかどうかの問題になります」

それでは、内容について、責任を問われることがあるのか。

「はい。まず、既存の記事を流用した場合には、やはり著作権侵害の罪が成立する可能性があります。また、あえて『偽号外』という形式にするわけですから、内容は過激、あるいは虚偽の内容であることも珍しくないでしょう。とすると、誰かの名誉権を侵害する虚偽の内容等であれば名誉毀損罪が成立します。

また、『こんな(過激な)事実を◯◯新聞が報道した!』ということで騒ぎになれば、新聞社には問い合わせが殺到するかもしれません。それへの対応で業務遂行が妨害されかねない、ということになれば、新聞社に対して偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

仮に、ロゴ部分に『ぼかし』などが入っていたとしても、全体として、特定の新聞社を思い起こさせるようなものであれば、この責任を免れることは出来ないでしょう」

最近、「偽号外」に限らず、インターネット上の嘘の情報、フェイクニュースが話題を集めているが、情報の受け手として、どんなことを心がけるべきなのか。

「安易に『おもしろい』『自分(や自分の思想)に都合がよい』からといって、よく出所や内容、裏付けがあるかどうかを確かめずに信用すべきではありません。そもそも、フェイクニュースがここまで流行ったのは、安易に面白がって信じてしまう人が沢山居るからです。リテラシー(情報を適切に分析・評価すること)の不足は、事実上、フェイクニュースの共犯であるともいえます。

更に『拡散』などすると、場合によっては法的な意味でも共犯になりかねないことを、よく理解しておくことが大事だと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
深澤 諭史(ふかざわ・さとし)弁護士
2010年弁護士登録。システム開発紛争,インターネット上の取引トラブル,インターネット上の誹謗中傷・風評被害対策などに力を入れている。
事務所名:服部啓法律事務所
事務所URL:http://hklaw.jp/