山梨県山梨市の職員採用試験で、受験者の試験結果を改ざんしたとして、同市の望月清賢(もちづき・せいき)市長が8月7日、虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで警視庁に逮捕された。

望月市長は、2016年度の市職員採用試験で合格者を決める際、受験者の試験結果の書類を改ざんした疑いなどが持たれている。特定の受験者を合格させるために、人事担当の職員に点数水増しを指示していたとみられ、警察の取り調べに「間違いありません」と容疑を認めているという。

さらに、報道によると、便宜を図った見返りとして謝礼を受け取ったことを疑わせるリストが警察に押収されているようだ。複数の受験者について、点数水増しがおこなわれていた可能性があるという。なお、ある受験者は本来不合格だったが、水増しによって合格しており、望月市長に現金を払った疑いもあるそうだ。

試験結果の改ざんがあったとして、さらに、市長と受験者の間で謝礼の受け渡しがあったとしたら、事件は今後どのような展開になるのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。

●市長は「加重収賄罪」に問われる可能性も

−−もし市長が謝礼を受け取っていたら、どうなるのだろうか?

「市長が受験者から見返りの金品を受け取ったうえで、点数の水増しなどの不正行為をおこなっていた場合、市長については、公務員が職務に関して請託を受けて賄賂を収受し、それによって不正な行為をしたということで、加重収賄罪に問われる可能性があります。

この罪は、1年以上20年以下の懲役となります(刑法197条の3、197条1項)」

−−その場合、謝礼を贈っていた受験者はどうなるのだろうか?

「金品を贈った受験者は、贈賄罪に問われる可能性があります。同罪は、3年以下の懲役または250万円以下の罰金となります(刑法198条)。受け渡された金品(賄賂)は、没収されるか、没収できない場合には同じ金額が追徴されることになります」

−−受験者の採用はどうなるのだろうか?

「受験者が、仲介者を通じるなどして、市長に金品を送り、点数の水増し等の不正をおこなってもらっていたことが発覚すれば、不正行為による採用であるとして、採用を取り消されたり、懲戒免職処分とされることがありえます。不正行為をした受験者がいるとすれば、今ごろ、戦々恐々としているのではないでしょうか」

−−では、謝礼の受け渡しがなかった場合は?

「謝礼の受け取りがなかったり、もしくは受け取りについての証拠がなく、市長が市の職員採用試験の結果を改ざんしたという事実の認定にとどまる場合、内容虚偽の有印公文書(合格者名簿等の採用関連文書)を作成・行使したということで、市長は虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴される可能性があります。

この罪は、1年以上10年以下の懲役となります(刑法156条、155条1項)。

ただ、民事でも、市長が受験者の試験結果を改ざんするという不正行為をおこない、それによって市に損害が生じた場合には(不正についての調査費用の負担など)、市長個人の損害賠償責任が問題となります。

市から賠償を求められたり、住民監査請求や住民訴訟の対象となることもありえます」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。原発事故・交通事故等の各種損害賠償請求、企業法務、債権回収、契約紛争、高齢者の財産管理、離婚・相続、不動産関連、労働事件・労災事件、債務整理等を取り扱っている。
事務所名:たつき総合法律事務所
事務所URL:http://tatsuki-law.com