自動車メーカーのスズキが、始業前の体操や朝礼を労働時間として把握するよう労基署から是正勧告を受けていた。スズキは既に未払い賃金を支払ったという。

SankeiBizによると、是正勧告を受けた相良工場(静岡県牧之原市)では、任意で約5分間の体操を行い、始業後に1〜2分の朝礼を実施していた。しかし、任意参加ということが伝わっていない部署や、始業前に朝礼を実施していた部署があったという。

これに対して、ツイッターでは「うちの会社は少なくとも20年前からこれだわ」「となると自分の会社も労基違反だな」「始業前の体操、朝礼とか掃除なんて、やってる会社多いよね」などといった反応が相次いでいる。

一般論として、始業前に行われる体操や掃除が、「労働時間」とみなされるためには、どのようなことがポイントになるのか。髙田英治弁護士に聞いた。

●「自発的、任意的」の場合は労働時間に該当しない

「『労働時間』とは、労働者が使用者の作業上の指揮命令下にある時間、または、使用者の明示または黙示の指示によりその業務に従事する時間のことを指します」

髙田弁護士は労働時間の定義についてそう指摘する。では、始業前の体操や朝礼、掃除の時間は「労働時間」に該当するのか。

「該当するかどうか判断するには、それらが使用者の明示または黙示の指示命令により行われているかどうかがポイントになります。具体的に説明すると、まず、労働者が始業前の体操や掃除などを自発的、任意的に行っているだけの場合は、『労働時間』には該当しません。自由参加のラジオ体操などが典型です。

他方、使用者によって始業前の体操や朝礼、掃除が強制されているような場合は、『労働時間』に該当します。例えば、会社の指示や就業規則などによって、それらの参加、実施が義務付けられているような場合です」

●「参加しないと不利な取扱いを受ける」なら、労働時間に該当する

参加が強制なのか任意なのかがポイントになるようだ。ただ、一応、任意参加とはされているものの、参加しないと事実上不利な取扱いを受けるような場合はどうなのだろうか。

「参加、実施を強制する明確な指示や就業規則などがなくても、始業前に体操や掃除を行わないと遅刻扱いとされたり、昇給やボーナスの査定・評価に際して不利に取り扱われるような場合には、『労働時間』に該当します。このような場合も、労働者は、会社の黙示的な指示命令により、事実上参加、実施が強制されているといえるからです」

今回、スズキは従業員に、始業前の体操や朝礼などの未払い賃金を支払ったそうだ。

「特に始業前の体操や朝礼などは、多数の従業員が集まって行われることが通常です。そのため、会社が『労働時間』の理解を誤ったまま始業前の体操や朝礼を継続していると、今回のケースのように、後日、多数の従業員から一度に多額の未払い賃金を請求され、経営に重大な影響が出てしまう可能性もあります。

したがって、労働時間の管理に際しては、そもそも『労働時間』がいつからスタートするかについても、正確な理解が求められるといえるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
髙田 英治(たかた・えいじ)弁護士
2009年弁護士登録。第二東京弁護士会所属。企業法務を中心に、会社・個人の法律問題を幅広く取り扱う。
事務所名:髙田総合法律事務所
事務所URL:http://www.takata-law.com/