各地にある先祖代々のお墓。子孫が大切に受け継いできたものだが、地方の少子高齢化に伴い、若い世代が都会に出てしまうと、維持することが難しくなるケースがあるようだ。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、墓の継承を放棄するための手続きについての質問が投稿されていた。「親に墓じまいを提案したものの、受け入れてもらえない」と語っている。

相続の際に、墓の扱いはどうなるのだろうか。もし仮に、先祖代々の墓を放棄しようとした場合、誰が責任を負うことになるのか。小澤和彦弁護士に聞いた。

●相続放棄しても、祭祀承継者になる場合

ここ数年で、いわゆる「墓じまい」に関する問い合わせ、相談が増えていますが、その多くは、そもそも、「墓じまい」をする権利は誰が有するのかというものと「墓じまい」の手続きに関するものです。

まず、「墓じまい」をする権利というのは、要するに、墓石の管理に関する権利のことですので、これは、いわゆる遺産相続に関する権利とは別個の「祭祀財産の権利」です。

そして、祭祀財産の管理権を誰が承継するのかという問題については、(1)被相続人(例えば親)の指定があるかどうか、(2)指定がないときは慣習に従って、(3)慣習も明らかでないときは家庭裁判所の調停・審判によって、決まります。

繰り返しになりますが、いわゆる相続権とは別個のものですから、たとえ、相続放棄をしたとしても、祭祀承継者にはなれますし、逆に言えば、相続放棄をしたからと言って祭祀承継者にならないというわけでもないのです。

ですから、例えば、親が予め誰かを祭祀承継者に指定していた場合には、その指定された方は、相続放棄をしたとしても、祭祀承継者になります。

●「墓じまい」をめぐるトラブル

祭祀承継者になってしまった場合、その方が、もはや管理ができないと考えた場合には、今度は、祭祀承継者の権限として、墓じまいをしたいと思えば、その手続きを進めることができます。

墓じまいの手続きは、結構煩雑で、改葬許可申請等の対役所(行政機関)に対する手続きと対寺院(霊園)との墓地使用契約の解約等の手続きがあります。

ここで、寺院(霊園)から、離壇料という名目で、高額な金額を請求されてトラブルになったとか、墓じまいコンサルと称する者(石材屋がやっていることも多い)との間で、手続き代行料を巡りトラブルになったというケースもあります。

また、物理的に、墓石の撤去、搬出、運搬、処分をすることが必要となり、これらの費用も結構かかります。

ですから、相続放棄をしてしまうと、完全自腹でこれらの費用を支払うことにもなりかねませんので、むしろ、祭祀承継者になりそうな方は、それを見込んできちんと遺産の相続を受けた方がいいと思いますし、墓じまいの手続きは、何の法的裏付けのないコンサルよりも、行政書士ないしは弁護士に頼んだ方がいいでしょう。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
小澤 和彦(おざわ・かずひこ)弁護士
第二東京弁護士会多摩支部 両性の平等委員会委員、東京都西東京市男女平等参画推進委員会委員。
事務所名:弁護士法人東京多摩法律事務所
事務所URL:http://www.tokyotama-lawfirm.com