岩手日報社の女性記者が、岩手県岩泉町の伊達勝身町長(74)からわいせつな行為を受けたとして、同社が発表した。報道によると、伊達町長は記者会見で「迷惑をかけた」と述べたものの、わいせつ目的は否定している。

伊達町長は10月中旬、女性記者が宿泊していたホテルの部屋を訪れた。記者がドアを開けると、抱きついて無理やり複数回キスをしたという。一方、伊達町長は昨夏の台風10号の豪雨災害の影響で、幻覚や幻聴が激しくなったと説明したうえで、「キスをした記憶はない」と述べている。

女性記者は精神的ショックを受けて休職中で、同社は1週間後に抗議をおこなったが、謝罪はないそうだ。現在、刑事告訴を検討しているという。伊達町長は今年10月25日、PTSDを発症したとして入院していた。

抱きついて無理やりキスした場合、どのような罪に問われるのだろうか。また、「幻覚や幻聴が激しい」「わいせつ目的はない」といった主張はどんな影響があるのだろうか。甲南大学法科大学院の園田寿教授(弁護士)に聞いた。

●「わいせつ目的」を否定していたとしても、「強制わいせつ罪」は成立

伊達町長の行動は、どのような罪に問われる可能性があるのだろうか。

「報道によると、町長は女性記者に対して、『抱きついて無理やり複数回キスをした』ということですが、これは客観的には刑法176条の強制わいせつ罪に該当します。強制わいせつ罪は、被害者に対して暴行や脅迫によってわいせつな行為を行うという犯罪です(被害者が13歳未満の場合は、暴行や脅迫がなくとも成立)。

暴行とは、身体に対する不法な有形力(物理的な力)のことですから、『抱きつく』という行為は、まさに『暴行』に当たります。しかも、強制わいせつ罪の場合は、強制性交罪(強姦罪)と違って、その暴行の強弱は問題にならず、被害者の隙を突いたような場合でも成立します。

また、『わいせつ行為』とは、わいせつ物公然陳列罪における『わいせつ』と意味は基本的に同じですが、強制わいせつ罪では個人の性的自由や性的しゅう恥心などを保護することが目的ですから、キスもわいせつ行為に当たります(映画のキスシーンは、もちろんわいせつではありません)。以上から、町長の行った行為は、強制わいせつ罪に該当します」

伊達町長は、「わいせつ目的は否定している」と報道されているが。

「先日下された最高裁大法廷判決(平成29年11月29日判決)は、それまでの判例を変更して、客観的にわいせつならば性的意図は不必要だとしていますので、本件では『わいせつ目的』がなかったとしても、強制わいせつ罪の成立には影響はありません。

ただ、幻覚・幻聴が激しく、キスしたことは記憶にないということですが、かりにそれが事実ならば責任の程度が問題となり、症状によっては刑が軽くなったり、場合によっては責任能力なし(無罪)とされることもあります」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
園田 寿(そのだ・ひさし)弁護士
甲南大学法科大学院教授(刑事法)。大阪府青少年健全育成審議会副会長、大阪弁護士会情報問題委員会委員、自治体の公文書公開・個人情報保護審議会委員を歴任、著作に『情報社会と刑法』(成文堂、2011年)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(共著:朝日新書、2016年)など。
事務所名:木村眞敏法律事務所