日弁連は1月から、近年広がる弁護士保険に対応するADR(裁判外紛争解決手続き)を設立、運用を始めた。背景には、過払金訴訟の影響による民事紛争減少などがあり、日弁連幹部は1月24日の会見で、弁護士と保険会社間での弁護士費用をめぐる争いなどを早期に解決する制度を準備することで、弁護士保険の利用が広がり、弁護士への受任件数などが増加することに期待を込めた。会見に臨んだ日弁連の和田光弘副会長は「(弁護士保険による)紛争を円滑に解決して、弁護士保険を発展させる基礎ができたと思う」とした。

●弁護士保険の販売件数が2003年の90倍

弁護士白書2017年版によると、地裁における通常の民事訴訟の新受件数は、2009年の23万5000件と比較すると、2016年には14万8000件で約4割減少。簡裁の新受件数も2009年の65万8000件が、2016年には32万6000件となり、半減している。日弁連の中本和洋会長は、減少の主要因が過払金訴訟の減少であると分析した上で、「弁護士が増えているのに、事件が減っている」と危機感を示した。

弁護士への相談や、事件の受任件数の増加に向けて、日弁連が期待を込めるのは、近年増加傾向が著しい弁護士保険。特に伸びているのが交通事故における弁護士保険で、2003年には28万8000件だった販売件数が、2016年には2617万1000件で、90倍になっている。最近では、旅行中のトラブル、離婚・相続をめぐる争いにおける弁護士への相談費用をカバーする保険も売られている。ただ、「弁護士保険や、その活用方法を知らない人が多い」(和田副会長)ため、保険販売の伸びが、弁護士への相談や民事訴訟の新受件数には、十分つながっていない。

日弁連は、保険の適切な活用への期待を込めて、弁護士保険ADRを設置した。保険による弁護士費用の支払いのほか、保険給付の対象になるかについての紛争も扱う。和解斡旋と裁定の手続のほか、見解表明手続も可能。協定保険会社は、2018年1月1日時点で16の会社や団体。初年度は10件前後の利用を見込んでいる。

和田副会長は、ADRの目的について、「弁護士費用をめぐる保険会社と弁護士の間のトラブルは数件でも弁護士の仕事に対する信用の毀損になりかねない。(場合によっては)弁護士費用を稼ぐために、弁護士が保険を悪用しているような評判まで立ちかねない」として、ADRの活用に期待を込めた。

(弁護士ドットコムニュース)