昔はうちもブラックでしたーー。中小運送会社の経営者8人が自らの経験・反省も元にトラックドライバーの労働環境改善を目指し、動き出した。

8人はベンチャー企業「ロジ勤怠システム」を立ち上げ、クラウドで動く労務管理システム「勤怠ドライバー」を開発した。デジタルタコメーター(回転速度計)との連携機能などが特徴で、労働時間の適正把握などを業界に広めていくという。

資本・業務提携する計器メーカー大手の矢崎エナジーシステムから6000万円の出資も受け、1月31日、都内で本格的な営業開始を発表した。

●メンバーは運送会社の2代目、3代目 労基署の「世話」になったことも

勤怠ドライバーは、国土交通省の改善基準告示に準拠。トラック運転手の拘束時間超過(月293時間まで)や労使で決めた36協定の限度時間違反へのアラート機能、最低賃金違反のチェック機能なども付いている。アイデアは、メンバーがそれぞれの経験から持ち寄った。

「運送会社を2つ経営しています。過去には労働基準監督署の是正勧告を受けたことも。恥ずかしい話ですが、うちもブラックだったのではないかとの反省があります」

こう話すのは、ロジ勤怠システムの高嶋民仁社長。メンバーには高嶋社長のように、労基署の「世話」になったことのある経営者が複数いる。

「メンバー8人はみんな2代目、3代目。父たちのやり方を継承してきた。違反行為だと気づかず、指摘を受けて学びました」と話すのは、取締役の中島秀治氏。

●法律を守っていたら経営が困難…悪循環に陥った物流業界

「更生を美談にするな」との向きもあるだろうが、実際、中小運送会社では法令違反が蔓延している。背景には構造的な問題がある。運送業界では、1990年の物流法改正による規制緩和以降、業者が約2万社増加、現在約6万2000社ほどある。そのうち、99.9%は中小企業だ。

競争の中で運賃は低下し、埋め合わせのために長時間労働が蔓延した。中には、社員の社会保険を削ったり、残業代を未払いにしたりして仕事を取りに行く業者も。法律を守っていては、会社を回すのが困難になっていったのだ。そもそも、法律そのものを知らない業者も少なくない。

結果、かつては稼げる職業だったトラックドライバーは、今や他産業に比べて、労働時間が長く、稼げない割の合わない仕事になってしまった。疲弊したドライバーが重大事故を起こすことも。人が寄り付かなくなり、経営者たちは人材確保に苦慮している。

だが、1社が法令遵守したところで、仕事が取れず、経営が立ち行かなくなるのがオチーー。そこで集まったのが高嶋社長ら、40代の若手経営者を中心とするロジ勤怠システムのメンバーたちだ。

「(労基署の指摘を受け)コンプライアンス重視の経営にしました。しかし、業界平均の給与はなかなか払えなかった。背景には、不健全な競争による運賃の値下がりがあります。でも、1人で頑張っても砂漠に水を撒くようなものです」(高嶋社長)

●「営業」が「啓蒙活動」や「仲間づくり」に

勤怠ドライバーは、すでに30社がテスト版を利用。労基署の定期的な調査に対し、素早く資料が提出できるようになった、ドライバーの拘束時間をしっかり管理できるようになった、といった反響があるという。

2018年7月末までに120社への提供を目指し、順次拡大していく予定。営業活動はいわば、業界健全化に向けた「啓蒙活動」、「仲間づくり」の側面も持つ。

ただし、実際に業界が改善されるためには、運賃の値上げなど、荷主や社会も動かす必要がある。高嶋社長は、「ドライバーの(労働の)現実を社会や荷主に伝えていくことが、改善の第一歩ではないか」と述べ、適切な労働時間管理が、業界健全化の筋道をつけると力を込めた。

本当に業界が変わることができるのか。その本気度が試されているといえる。

(弁護士ドットコムニュース)