3年ぶりの開催となる「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」が始まりました。2022年の日程は5月29日(日)から6月10日(金)まで約2週間の会期中、スーパーバイクやスーパースポーツ、またサイドカーなど5カテゴリー/8レースが行なわれます。

伝統の2輪レース、島全体が大いに盛り上がる

 いよいよ3年ぶりの開催となる「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」が始まりました。2022年の日程は5月29日(日)から6月10日(金)まで約2週間の会期中、スーパーバイクやスーパースポーツ、またサイドカーなど5カテゴリー/8レースが行なわれます。

「バラフ・ブリッジ」でジャンプするジョン・マクギネス選手。TTコースはジャンプスポットがたくさんあるのでサスペンションもタイヤの空気圧もそれに合わせた特殊なセッティングがなされる(写真/小林ゆき)
「バラフ・ブリッジ」でジャンプするジョン・マクギネス選手。TTコースはジャンプスポットがたくさんあるのでサスペンションもタイヤの空気圧もそれに合わせた特殊なセッティングがなされる(写真/小林ゆき)

 TTレースは世界最古の現存する二輪車のレースで、昔と変わらず1周60キロの公道を閉鎖して行なう「公道レース」です。その歴史は古く、二輪のTTレースは1907年に始まりました。伝統と知名度、コースの難易度、そしてレースの運営力の高さから、1949年には世界グランプリ最初の開催地に選ばれました。

 これまでTTレースが開催されなかった年は、第一次世界大戦(1915年から1919年)、第二次世界大戦(1940年から1946年)、口蹄疫(2001年)、そして新型コロナウイルス(2020年と2021年)の影響による4回です。

 今回のTTレースは2年間の中断を経て、いろいろと様変わりをしています。大きなトピックとしては、ついにレース全体を網羅する、映像による生配信が行なわれることです。これまで、1周60キロものコースを映像で繋ぎながら生実況するのは困難とされ、ラジオによる音声での実況放送と、毎晩ダイジェストの映像によるテレビ番組、速報の新聞や雑誌、そしてレース後に発売されるビデオによって報道されてきました。

 今回はインターネット回線を利用して映像で網羅していて、生配信は「TT+ LIVE」で行なわれます。配信はインターネットを通じて行われ、全ての日程をカバーできるパスが14.99英ポンド、日本円で約2600円(1英ポンド=175円換算)で発売中です。このパスにはレース前後のデータが閲覧できるほか、ライブ映像の巻き戻しやリプレイ、TT開催後12か月間視聴が可能だということです。

パンデミックの影響で2年中止されていたマン島TTレースが3年ぶりに再開(写真/小林ゆき)
パンデミックの影響で2年中止されていたマン島TTレースが3年ぶりに再開(写真/小林ゆき)

 日程も少し変更が加えられました。まず、最初のプラクティス(練習と予選を兼ねた走行)は20年以上、土曜日始まりだったところが日曜日始まりで昼過ぎからのアフタヌーンプラクティスとなりました。もともと教会との兼ね合いで日曜日は走行ができず、数年前に悪天候の場合のみ日曜日午後に延期開催できるとマン島の法律が変更されましたが、最初から日曜日に日程が組み込まれたのは画期的なことです。

 月曜日から木曜日まではこれまで通り夕方18時過ぎからのイブニングプラクティスですが、プラクティス最終日の金曜日はアフタヌーンプラクティスが設定されました。これは翌日から始まるレース開始に対して、時間的余裕を持たせるためです(実際には天候の影響でイブニングに延期されました)。

 また、レースウィークのタイムスケジュールも若干の変更があり、各レース日の最初にウォームアップラップが行なわれることになりました。サイドカーはシェイクダウンラップとされていますが、これはマシンのエンジンを積み替えたり、メンテナンスなどの後のチェックの意味合いが強いと思われます。

2010年のグランドスタンド前のスコアボード。前回2019年までは木製のボードをスカウトの子どもたちが運営していた(写真/小林ゆき)
2010年のグランドスタンド前のスコアボード。前回2019年までは木製のボードをスカウトの子どもたちが運営していた(写真/小林ゆき)

 残念なお知らせとしては、まずグランドスタンドの前にあったライダーのタイムや走行位置を知らせる木製の「スコア・ボード」が撤去されたことです。TT開始当初からボーイ&ガールスカウトの子どもたちが時計方式の位置板を手で回したり、ラップ数の紙を手でめくったり、ペインターによって手書きされたラップタイムの木の板を掲げたりと、アナログな作業もTTらしいアトラクションとして親しまれてきました。今年は仮設の大きなスクリーンがふたつ用意され、生配信の映像が流されています。

 もうひとつは、予告されていた通り事実上の電動バイクによるクラス「TT ZERO」クラスが休止になったことです。2009年に前身の「TTXGP」が始まり、TT ZEROになってから2011年には日本からProzza、2012年から2019年までチーム無限、2012年、2013年、2018年、2019年にはTeam MIRAIが参戦していました。

 かつてF1に参戦するなど四輪レースで有名なチーム無限は、独自開発の「神電」を投入して多いに話題になりました。起用したライダーもTTレース現役最多勝利を誇るジョン・マクギネス選手をはじめ、ブルース・アンスティ選手、ガイ・マーチン選手、リー・ジョンストン選手、マイケル・ルター選手と、そうそうたるラインナップで表彰台の常連となり、TTレースを代表するチームとなっていました。

 TT ZEROは電動バイクという性質上、他クラスの周回数3周から6周に対してわずか1周で競われるクラスでしたが、まだまだ発展途上にある電動バイクの性能の革新が求められるクラスで、毎年注目を集めていただけに、なんともさみしい思いは否めません。

若手期待のディーン・ハリソン選手。スーパーバイククラスのカワサキ「Ninja ZX10-R」で参戦(写真/小林ゆき)
若手期待のディーン・ハリソン選手。スーパーバイククラスのカワサキ「Ninja ZX10-R」で参戦(写真/小林ゆき)

 今年のマン島TTレースで開催されるクラスは次の通りです。パレードラップやメーカーの記念イベントなどはありません。

●スーパーバイク:BSBのスーパーバイククラスとほぼ同じカテゴリー。
750ccから1000cc、4ストローク、4気筒または3気筒
850ccから1200cc、4ストローク、2気筒

●サイドカー:F2クラスと呼ばれる600ccエンジンが中心のクラス。
600cc、4ストローク、4気筒
675cc、4ストローク、3気筒
900cc、4ストローク、並列2気筒

●スーパースポーツ:600ccが中心のクラス。
600cc、4ストローク、4気筒
600ccから675cc、4ストローク、3気筒など

●スーパーストック:改造が少ない1000ccが中心のクラス。
600ccから1000cc、4ストローク、4気筒
750ccから1000cc、4ストローク、3気筒
850ccから1200cc、4ストローク、2気筒

●スーパーツイン:2気筒エンジンを用いたTTの入門的クラス。
700ccまでの4ストローク、並列2気筒、2009年以降製造の市販車ベース

●シニアTT:レギュレーションはスーパーバイクTTと同じ。事実上、スーパーバイクTTレース2ですが、日程最後のレースなので畏敬の念を込めて「シニアTT」と呼ばれています。

「バラフ・ブリッジ」はサイドカーですらジャンプする人気の観戦スポット(写真/小林ゆき)
「バラフ・ブリッジ」はサイドカーですらジャンプする人気の観戦スポット(写真/小林ゆき)

 マン島TTレースの決勝レースのスケジュールは以下の通りです。なお、天候その他の理由で時間の延期、翌日に延期されることもあります。

6月4日土曜日
10:30(日本時間 18:30)ウォームアップ(1周)
12:00(日本時間 20:00)RSTスーパーバイクTTレース(6周)
15:00(日本時間 18:30)3wheeling.mediaサイドカーTTレース1(3周)

6月6日月曜日
10:30(日本時間 18:30)ウォームアップ(1周)
11:45(日本時間 19:45)Monster EnergyスーパースポーツTTレース1(4周)
14:45(日本時間 22:45)RL360スーパーストックTTレース(4周)

6月8日水曜日
10:30(日本時間 18:30)ウォームアップ(1周)
10:50(日本時間 18:50)サイドカーシェイクダウン(1周)
11:45(日本時間 19:45)BennettsスーパーツインTTレース(4周)
14:45(日本時間 22:45)Monster EnergyスーパースポーツTTレース2(4周)

6月10日金曜日
10:30(日本時間 18:30)ウォームアップ(1周)
11:30(日本時間 19:30)3wheeling.mediaサイドカーTTレース2(3周)
13:15(日本時間 21:15)MilwaukeeシニアTT(6周)