ベスパのラインナップの中では最大排気量となる278ccの水冷単気筒エンジンを搭載する「GTS SuperTech 300」の燃費はどれくらいなのでしょうか。実際に走って計測しました。

250スクーターよりも小ぶりな車体で力強い、燃費への影響は?

 イタリア、ピアッジオ社が誇る伝統的ブランド、「Vespa(ベスパ)」から、今回のテストピースは「GTSスーパーテック300」です。お馴染みのボディスタイルに、燃費やノイズを抑えるため、燃焼室やフリクションロスの低減を施した「HPE(ハイパフォーマンスエンジン)」を搭載したモデルです。その排気量は278ccと、300と言うには少なめながら、最高出力17.5kWと最大トルク26Nmを生み出し、スペック的には250ccクラスのスクーターを上回っています。

 車体の長さ、幅、高さを示すスリーサイズは、むしろ125ccの人気モデル、ホンダ「PCX」に近く、重量こそPCXの132kgより重い160kgですが、250スクーターのホンダ「フォルツァ」が186kgということに比べると、小柄軽量なことが解ります。ベトナムで生産され日本にデリバリーされるこのベスパは、カタログ数値を見ると燃費は31.2km/lとなっています。the「燃費」ルートの実走ではどのような数値になるのでしょうか。

 the「燃費」では市街地、高速道路、快走路(一般道のツーリング路)を実走して燃費計測を行ないます。ルートは、「市街地」計測を都内で。その他は千葉県房総半島に設定したthe「燃費」企画で使う統一ルートで行ない、過去記事で他車比較をしやすいようにしています。

 走り方は交通の流れに合わせたもので、燃費記録を狙ったものではありません。また、それぞれの区間で計測した距離、燃費の数値は車載のトリップメーター、平均燃費計の数値を記載しています。

燃費計測はあいまいな「満タン法」ではなく、車載のトリップメーターと平均燃費計を利用する。ベスパ「GTS SuperTech 300」のメーターパネルにはフルデジタル表示の4.3インチフルカラーTFTディスプレイを搭載

 ちなみにベスパの燃費計は小数点以下の表示がなく、25km/lと表記された場合、25.0から25.9km/lまで幅があることになります。燃料タンク容量は8.5リッター、指定ガソリンはハイオクとなります。

乗り始めから気分が良くなるキャラクター、燃費も悪くない

 the「燃費」の市街地ルートは東京都内外苑周辺をスタート。南青山一丁目で国道246号に出て赤坂、皇居方面を目指します。途中、丸の内のオフィス街を周り、晴海通りで銀座、築地を抜けて直進。豊洲市場を右手に見ながら首都高速湾岸線沿いを走る国道357号東雲付近までを走行します。

いざ、燃費の実走計測へ。都内にある石畳のブティック通りも経由する

 乗った瞬間からそのフィット感に頬が緩むベスパ。250クラスのビッグスクーターと比べると、ナルホド小ぶりです。でも窮屈さはありません。ライディングポジションが背筋をピンと伸ばして椅子に座るようなスタイルだからでしょう。小回り性能も最高で、125クラスのスクーターと遜色ない気軽さがあります。それでいて存在感のあるエンジンの鼓動、そしてアクセルを開けた時のスムーズで力強い走り出し。質感もあり、乗り出しからウキウキします。

 市街地での乗り心地も上質。突き上げ感が少なく、ベスパ伝統のフロントサスペンションの吸収性を実感します。一部、石畳的な道があるオフィス街でも、ふわっとした走行を披露しました。

 気になる市街地燃費は24km/lでした。同区間でスズキ「バーグマン400」の22.4km/lと、BMWのスクーター「C400X」が記録した25.0km/lの中間となります。250クラスのホンダ「フォルツァ」は25.5km/lだったことを考えると、悪くないようにも思えます。

 信号で止まる回数、渋滞具合などで数値の変化が大きくなる市街地です。駆動系のCVTセッティングも、アクセルオフで小気味よくエンジンブレーキを効かせるタイプなので、先が赤信号となってもその場でアクセルを閉じると思いのほか速度が下がるので、近くまでアクセルオンの状態を保つ必要があったのも、軽い車体の優位性を生かせなかった部分なのかもしれません。アクセルオフでもエンジンブレーキ感が少ないCVTセッティングを持つヤマハの250スクーター「XMAX」は、混雑気味の同区間で31.4km/lを記録しています。

高速道路ではパワフルな走りが大きな魅力

 the「燃費」の高速道路燃費計測は都心からアクアラインを使っ房総半島へ移動し、2区間で行ないます。往路計測区間はアクアライン連絡道の「袖ケ浦IC」から館山道の南端、「富浦IC」までの53.8km、復路計測区間は、館山道「富津中央IC」から北上し、アクアライン連絡道の「木更津金田IC」までの25.3kmです。

東京都内から千葉県木更津エリアへ移動し、高速道路での燃費計測に向かう

 往路の制限速度は、アクア連絡道が80km/h、館山道では2車線区間が100km/h、一車線区間では80km/hから70km/hへと変化します。とくに館山道ではアップダウンが連続し、速度維持のアクセルワークには神経を使います。復路は館山道の100km/h制限区間とアクア連絡道の80km/h区間となります。

 サイズ的には「PCX」に近い、と書きましたが、そのサイズから想像するような不安定感は無く、どっしりとした走りで遠出が苦になりません。“東京から京都までツーリングに行ける”と言ったら解っていただけるでしょうか。そんなバイクです。

 アップダウンの多い館山道でもパワーにゆとりがある分、250クラスでは痛感する登り区間をあまり意識せず走ります。アップライトなポジションのため、上半身を少し前にかがめるだけで走行風圧ともバランスが取りやすく、少ない疲労で走ることができました。

 燃費結果は、往路が32km/l、復路が28km/lとなりました。復路は向かい風が強く、追い越し車線で移動する回数が多かったのが往路との差になったのだと思います。前後12インチの小径タイヤ、短いホイールベースながら、むしろより大柄な250クラスをも上回る走りを見せたのは、さすがイタリアのブランド。血中ガソリン濃度の高い国民性のなせる技、でしょうか。

快走路も楽しい! 走る悦びが詰まったイタリアンな乗り物

 the「燃費」快走路データは3区間で計測しています。区間1は高速道路計測往路を終えた地点から房総半島南端エリアまで「安房グリーンライン」を経由して走行する24.5km。区間2は、南端エリアから国道411号、県道34号を走り、鴨川市にある「大山千枚田」までの36.4km。区間3は「大山千枚田」から「もみじロード」を経由して館山道「富津中央IC」までの26.2km、3区間合計で87.7kmになります。どのルートも、ワインディング、アップダウン、平坦路部分が混在する道で、房総半島の定番ツーリングルートでもあります。

the「燃費」の計測ルート。房総半島最南端エリアにて

 今回、市街地以上にベスパの走りが輝いていたのは、この快走路区間でした。楽しい加速、そしてブレーキで速度を調整しながら走る楽しいコーナリング。コミューターである前に、やはり乗り物として麗しい!

 ドゥカティやアプリリア、MVアグスタなどにも通じる「熱くなる」感じ。イタリア製品に通じる走る悦びがしっかりと詰まっています。燃費データは区間1で34km/l、区間2が32km/l、区間3が34km/lという結果に。その平均は33.3km/lとなりました。

カタログスペックを上回る結果、むしろ走りの楽しさがベスパの魅力

 31.2km/lというカタログ燃費を上回る記録よりも、走る楽しさがこの車体にしっかり詰まったベスパの魅力に惹かれます。車両価格77万円(消費税10%込み)、このゆとりなら納得。それがテストした実感でした。

いつものツーリング想定の計測ルートを走り終え、ゴール地点の千葉県木更津エリアに到着

■ベスパ「GTS SuperTech 300」(2021年型)燃費結果
総合評価:☆☆☆☆★(ホシ4つ)
総走行距離:179.4km
市街地:24km/l
高速道路:30km/l
快走路:33.3km/l