日本には世界を代表するバイクメーカーが多く存在していますが、地域別の販売台数を見ると東南アジアが群を抜いていることがわかります。多くのバイクメーカーが東南アジアを意識したモデルを開発するなど、現在のバイク業界の中心にある東南アジアですが、その理由はどこにあるのでしょうか?

圧倒的シェアを占めるアジア市場

 矢野経済研究所の調査によると、2020年は前年比43.6%減となったインドネシアを筆頭にインド、ベトナム、フィリピン、タイなど主要国の市場で前年比2桁マイナスを記録し、世界全体では販売台数ベースで前年比15.2%減のおよそ5557万台のバイクが世界で販売されました。

東南アジアで活躍する日本製バイク
東南アジアで活躍する日本製バイク

 ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの日系4メーカーを有する日本は非常にバイク産業の発達した国ですが、販売市場という意味ではそれほど大きな市場を持っている国ではありません。実際に、2020年に日本国内で販売されたバイクは約33万台と、世界全体から見れば1%にも満たない小さな市場です。

 では、世界をリード日系バイクメーカー各社はどこで多くのバイクを販売しているのでしょうか。

 ホンダが発表した2020年度の販売実績を見ると、ホンダは世界全体で1513万2000台のバイクを販売しています。そのうち、日本が占めるのはわずか21万5000台であり、北米やヨーロッパを合わせても80万台弱に過ぎません。

タイでホンダが展開する『cub HOUSE』は、若者を中心に人気のスポットになっています
タイでホンダが展開する『cub HOUSE』は、若者を中心に人気のスポットになっています

 ホンダのバイクが最も販売されているのはインドや中国を含むアジアであり、1331万9000台という数字となっています。さらに詳しく見ると、インドが386万6000台、インドネシアが268万5000台、ベトナムが210万4000台、タイが110万6000台とさらにパキスタンとフィリピンで1100万台以上のバイクが販売されています。

 2020年は新型コロナウイルスの影響で、東南アジアの各市場が販売台数を大きく減らしていますが、それでもホンダのバイクのほとんどがインドを含む東南アジアで販売されていることがわかります。

 また、ヤマハも2020年に出荷した380万2000台のうち、およそ80%にあたる307万7000台を日本をのぞくアジア地域に向けられたものです。

 スズキも、2020年に販売された172万9000台のうち、163万4000台がインドを含むアジア地域となっています。

 ほかの3社と比べて先進国に強いとされるカワサキも、最も多く販売しているのはフィリピンです。

ヤマハの「YZF-R15」など日本に導入されていないモデルも多数東南アジアでは販売されています
ヤマハの「YZF-R15」など日本に導入されていないモデルも多数東南アジアでは販売されています

 ヤマハによると、世界のバイク需要のうちの76.2%が日本をのぞくアジア地域にあるしており、日系バイクメーカーはもちろん、世界中のバイクメーカーにとってにとってアジアはが重要な市場であることがわかります。

バイクは新興国にとっての重要な移動手段

 では、なぜ東南アジアやインドがバイク需要の中心となっているのでしょうか。これらの国々は、いわゆる「新興国」という名で呼ばれ、2000年ころより急速な経済発展を遂げている国でもあります。

東南アジアやインドは、世界のバイク需要の中心に!
東南アジアやインドは、世界のバイク需要の中心に!

 バイクが趣味性の高い乗り物として扱われる日本などの先進国と異なり、新興国の人々は日常の移動のための手段としてバイクを活用しています。そのため、新興国で販売されるのは125cc〜250ccクラスの小型バイクが中心となっています。

 ただ、急速な経済成長を遂げているとはいえ、先進国と比べて賃金が低い傾向がある新興国においては、多くの人々にとってクルマは手の届かない高級品です。

 また、クルマの場合、新車の販売を行なうためには、大型のショールームや整備工場を用意する必要があるなど、インフラ整備の進んでいる都市部でない限りなかなか難しいのが実情です。また、整備を行うことのできる人材の確保も簡単ではありません。

 一方、バイクの場合は、クルマに比べて物理的なスペースや輸送コストも少なく、またメカニズムもシンプルなため、新興国の人々でも整備がしやすいというメリットがあります。

新興国でも人気が高いホンダのスーパーカブ
新興国でも人気が高いホンダのスーパーカブ

 ホンダの場合、クルマは北米や日本を、バイクはインドや東南アジアを主要市場とするなど、先進国と新興国で大きく戦略をわけていることがうかがえます。中国に関してはクルマもバイクも重要な市場であると位置づけていますが、これは中国の中にも先進国的な部分と新興国的な部分があることが要因と言えます。

 このように、世界のバイクの中心となっている東南アジアやインドですが、これらの地域もより経済が成長してインフラが整えば、今後はクルマを手に入れるようになることは明らかです。

 そうなった時、バイクメーカーが次なる市場として狙うのはアフリカの地かもしれません。

※ ※ ※

 世界中の自動車メーカーが、世界最大の自動車販売市場である中国の動向を無視できないように、バイクメーカー各社も東南アジアやインドを意識したバイクの開発に注力しています。

インド市場向けに開発されたホンダ「GB350」は、日本でも大人気
インド市場向けに開発されたホンダ「GB350」は、日本でも大人気

 主にインド向けに開発されたホンダ「GB350」が日本でもヒットしているように、今後、さらに多くの東南アジアやインド向けのバイクが日本に導入されるようになると予測されます。