ヤマハ「MT-03」は、250ccクラスの「MT-25」とほぼ共通の車体構成で排気量320ccの直列2気筒エンジンを搭載しています。燃費性能を実際に走って計測しました。

250クラスの車体に力強いエンジンのパッケージ、燃費計測は好結果に

 ヤマハ「MT-03 ABS」は、250ccクラスの「MT-25」と同じ車体に排気量を71cc増量した320ccエンジンを搭載したモデルです。「うーん、車検が要らない250に対して71ccって微増じゃない? それなら400買った方が目一杯感というか大盛り感があってオトクな気もするし……」乗る前はそう思っていました。

実際の燃費はどうなのか? ヤマハ「MT-03」(2021年型)を走らせる筆者(松井勉)
実際の燃費はどうなのか? ヤマハ「MT-03」(2021年型)を走らせる筆者(松井勉)

 しかし乗ってハナマル。250で物足りないと思った高速道路ではゆとりタップリ、市街地でも発進するたびに「軽々走るじゃん!」と嬉しくなる余裕に浸れたのです。「え、71ccで世界はこんなに変わるの?」という発見。しかも「MT-25」と「MT-03」の車重が全く同じ169kgと軽いのです。走らせた印象も意のまま感に操れるハンドリングなので余計コンパクトに感じるし、低回転からエンジンのトルクを引き出しやすく、市街地での扱いやすさが際立つのです。250のように頑張って走る感がまるでない!

 そして燃費研究班が注目したのはココ、そうです、カタログ燃費値です。

■定地燃費値(60km/h、2名乗車時)
MT-25:37.3km/l
MT-03:41.3km/l

■WMTCモード値(クラス3、サブクラス3-2、1名乗車時)
MT-25:27.2km/l
MT-03:27.6km/l

 と、どちらも「MT-03」の方が良いのです。とはいえ、実際のところ燃費はどうなの? という興味もあり、the「燃費」テストコースで計ってきました。

 the「燃費」では、毎回同じルートを使い、実走燃費を計測しています。市街地、高速道路、快走路(ツーリング路)とシーン別に計測。記事中の燃費値、距離は車載のトリップメーター、平均燃費計の値を紹介しています。走行ペースは交通の流れに合わせたもので、燃費記録に挑むような走りはしていません。

市街地走行、排気量微増の効果が早々に現れる

 the「燃費」の市街地燃費計測は、都内外苑周辺をスタート。南青山一丁目交差点で国道246号に出て赤坂、皇居を目指します。桜田門前を通り銀座方面へ進み、途中、丸の内のオフィス街を回り再び銀座方面へ。そのまま築地、晴海、豊洲を通過し、首都高湾岸線沿いを走る国道357号の東雲付近までを走ります。

いざ、燃費の実走計測へ。都内にある石畳のブティック通りも経由する
いざ、燃費の実走計測へ。都内にある石畳のブティック通りも経由する

 市街地計測区間は基本大通りメインで、交差点の信号が青の連続だと意外にスイスイと距離を稼げますが、時間帯、交通量によっては赤信号での停止時間が長くなり、燃費データに響きます。

「MT-03」で走行した日、交差点での停止時間が少なくありませんでした。それでも12.3kmを走行し、平均燃費は30.6km/lをマーク。低速トルクがあり、発進時から適度な速度域に到達するまで、低い回転でシフトアップをしてもグイグイ加速をしてくれます。

 また、スペックを見ると「MT-25」とはトランスミッションのギアレシオがほぼ専用設計でエンジン特性との相性も良く、気持ち良い走りが楽しめます。

高速道路では71ccの余裕を体感、250クラスと比べれば相当ラク

 市街地に続き、高速道路です。the「燃費」の高速道路燃費計測は次の2区間で行なっています。まずはアクアライン連絡道「袖ケ浦IC」から館山道の南端「富浦IC」まで南下する54.0km区間。そして快走路区間の燃費計測を終えた地点でもある館山道「富津中央IC」からアクアライン連絡道「木更津金田IC」まで北上する25.5kmです。

東京都内から千葉県木更津エリアへ移動し、高速道路での燃費計測に向かう
東京都内から千葉県木更津エリアへ移動し、高速道路での燃費計測に向かう

 いずれもアクアライン連絡道の制限速度は80km/h。館山道を南下する際は片側2車線から対向1車線になり、制限速度も100km/hから80km/h、70km/hと、移動速度は低下します。逆に北上する際の館山道は100km/h制限の区間のみを走行します。館山道ではほぼ全域アップダウンが連続。速度維持に神経を使う場面もあります。

「MT-03」は高速走行をラクラクこなします。ネイキッドモデルゆえ速度を上げると走行風圧が強まるものの、南下ルートの後半に多い制限速度が落ちてからの長い上り区間が続いても、速度維持や向かい風に押し戻される感じがありません。250クラスだとシフトダウンをして回転を上げたくなるところですが、そこは71ccのゆとりでしょう。嬉しい驚きです。

 とはいえ320ccという絶対的排気量からすると、巡航時のエンジン回転数は高めとなり、後半移動速度が落ちる南下ルートが32.9km/l、北上ルートは平均移動速度が高くたるため、31km/lに落ち着きました。合計79.5kmを走行した高速道路平均燃費は31.9km/lとなっています。

快走路で実力発揮! 平均燃費43.2km/lとハナマル級

 the「燃費」の快走路(ツーリング路)計測は、合計86.8kmを3区間に分けています。

the「燃費」の計測ルート。房総半島最南端エリアにて
the「燃費」の計測ルート。房総半島最南端エリアにて

 区間1は、高速道路燃費の南下ルートを終えた館山道「富浦IC」出口付近のコンビニエンスストアから房総半島南端エリアまでの25.7kmを、途中、安房グリーンラインを通り、海岸線を目指します。区間2は、房総半島南端の海岸線から国道410号、県道34号等を経由して鴨川市にある「大山千枚田」までの35.2km。最終区間は「大山千枚田」から県道34号と184号等を経由して館山道「富津中央IC」までの25.9kmです。3区間とも平坦部分とアップダウンが続く部分が配合されていて、景色もよく楽しいルートです。

「MT-03」のツーリング燃費は良好でした。これは結果的に嬉しい事実です。その結果は区間1が42.4km/l、区間2が42km/l、区間3は45.3km/lでした。平均すると43.2km/lとなります。

「MT-25」と同じ車体をトルクのあるエンジンで走らせるだけに、上りが多い区間ではアクセルを微増するだけで速度維持もラクラク。高めのギアでアクセルを開け、力を出した結果、より良好な値になった可能性もあります。また、3区間中もっともワインディングが楽しい最終区間では、前走車も無く移動速度が保てた関係で、アップダウンをほどよいトルクバンドで走れたせいか、燃費が向上するという体験をしました。

ヤマハ「MT-03」は燃費良し、走り良し、の好バランスバイクだった!

 結果的に、快走路でメーカー計測の60km/h定地燃費値を上回り、市街地、高速道路、ツーリング路の総平均でも、WMTCモード値を軽く上回る35.2km/lを記録しました。

いつものツーリング想定の計測ルートを走り終え、ゴール地点の千葉県木更津エリアに到着
いつものツーリング想定の計測ルートを走り終え、ゴール地点の千葉県木更津エリアに到着

 WMTCモード値(クラス3、サブクラス3-2、1名乗車時)は、計測速度域が国内の交通状況よりもかなり高いのであまり参考になりませんが、250クラスと同じ軽さと400クラスに比肩する力強さを合わせ持つパッケージは魅力的。いま、世界に300ccクラスがヒタヒタと浸透していますが、この楽しさなら納得。「MT-03」に乗ってその理由がよく分かる1日だったのです。

■ヤマハ「MT-03 ABS」(2021年型)燃費結果
総合評価:☆☆☆☆☆(ホシ5つ)
総走行距離:178.6km
市街地:30.6km/l
高速道路:31.9km/l
快走路:43.2km/l
総平均燃費:35.2km/l