ホンダのバイクには「CB」の文字がつくモデルが多数存在しますが、排気量もタイプも幅広く多様です。いったいホンダのCBとはなんなのでしょうか? 2輪メディア業界歴の長い伊丹孝裕さんが考察します。

そもそも、ホンダの「CB」ってなんなの?

 3年ほど前のことだったと思います。僕(筆者:伊丹孝裕)の知人が大型2輪の免許を取り、「せっかくだからバイクを買おうと思うんだけど、CBってどうなの?」と聞かれました。

2021年型で生産終了となり、ホンダ最後の空冷直4、最後の空冷CBとなった「CB1100 EX Final Edition」に試乗する筆者(伊丹孝裕)
2021年型で生産終了となり、ホンダ最後の空冷直4、最後の空冷CBとなった「CB1100 EX Final Edition」に試乗する筆者(伊丹孝裕)

 仕事柄、この手の相談を受けることはしばしばあります。その人のスキルや体格、これまでの使い方を踏まえた上で、いくつかの選択肢を提示するわけですが、ここで答えを窮します。「CBって、どのCB?」と……。

 そう、ひと口にCBと言っても「CB1300 SUPER FOUR」、「CB1300 SUPER BOL D’OL」、「CB1100」、「CB1100EX」、「CB1100RS」、「CB1000R」、「CB650R」と多種多様なモデルがあり、バイクに興味を持ち始めたばかりの知人でしたから、「CBなんとか」というくらいの認識だとすると、「CBR650R」や「CBR600RR」、あるいは「CBR1000RR」の可能性もなきしにもあらず。

 後に「CB1100」がラインナップから外れたり、「CBR1000RR」が「CBR1000RR-R」に進化したものの、その頃も今も大排気量ロードスポーツのカテゴリーは「CB」と「CB-R」と「CBR」だらけ。他の排気量帯に目を移しても125ccから400ccまで、やはり多くのモデルにその文字が付きます。

排気量1284ccの水冷直列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載する大型バイク「CB1300 SUPER FOUR」(左)と「CB1300 SUPER FOUR SP」(左)。価格(消費税10%込み)は156万2000円と193万6000円
排気量1284ccの水冷直列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載する大型バイク「CB1300 SUPER FOUR」(左)と「CB1300 SUPER FOUR SP」(左)。価格(消費税10%込み)は156万2000円と193万6000円

 ホンダに長年親しんでいると違和感がなかったりするものの、ビギナーにとってはわけがわからないのも事実でしょう。とくにトップエンドのCBシリーズは、1000(998cc)と1100(1140cc)と1300(1284cc)という微妙な差で並んでいて、いずれもがアップハンドルのネイキッド。「どう違うの?」、「どれが乗りやすいの?」、「排気量の小さい1000Rより1300SFの方が安いのはなんで?」と聞かれた時にスラスラと、しかも明快な答えを返すのは結構難易度が高いものです。

 たとえば僕自身、ソニーのミラーレス一眼を買おうと思って近くのショップに出掛けたことがあります。「α7」シリーズが主力っぽいことは理解したものの、そこに「R」だの「S」だの「C」だの「III」だの「IV」だのといった文字がプラスされるため、なにをどう選んでいいのやら……。結局カタログだけもらって帰ったことがあります。

 さて、ここまでですでに何回キーボードの「C」と「B」を叩いたかは分かりませんが、そもそも「ホンダにとってのCBってなんなの?」という素朴な疑問を抱いている人もいることでしょう。

ホンダ初のCBとなる「BENLY CB92 SUPER SPORT」(1959年)は、当時の新車価格が15万5000円だった
ホンダ初のCBとなる「BENLY CB92 SUPER SPORT」(1959年)は、当時の新車価格が15万5000円だった

 その歴史上、初めてCBの名を持つモデルが登場したのは1959年のこと。「ベンリイCB92」がそれです。前年に登場した「C90」をベースとし、125ccの空冷並列2気筒エンジンを搭載。最高出力15ps/10500rpm、最高速度130km/hを公称した、現代で言うところのスーパースポーツでした。

 では、なぜCBという名が付けられたのか? これには相当数の説があり、「motor Cycle」の「C」と「cluBman」の「B」を組み合わせた。いやいや、「CluBman」の「CB」だ。対米向けに「CA」という呼称を使った後だから「CB」にした、などなど。

 ホンダとしても公式見解は出していないものの、CB誕生60周年を記念したイベントが開催された時(2019年6月/Hondaウェルカムプラザ青山)、当時の統括責任者の方が「Creative BenchmarkがCBの語源」とトークショーで語られていました。もっとも、それでさえ「あくまでも由来のひとつとして聞いていますが」という注釈つきだったため、今もって判然としていない謎のひとつなのです。

排気量736ccの空冷4ストローク並列4気筒OHCエンジンを搭載するホンダ「DREAM CB750 FOUR」(1969年新登場)。当時の価格は38万5000円だった
排気量736ccの空冷4ストローク並列4気筒OHCエンジンを搭載するホンダ「DREAM CB750 FOUR」(1969年新登場)。当時の価格は38万5000円だった

 ともかく、「ベンリイCB92」以降のラインナップがどうなったのかと言えば、今と比較にならないほどCBだらけ。スーパーカブやスクランブラーは別として、ロードスポーツにはほぼ例外なくCBの名が与えられていったのです。

 ざっと挙げると、「CB72」、「CB450」、「CB750フォア」、「CB400フォア」、「CB750F」といった(ドリームの名がつく)メジャーモデルの他、「CB50」、「CB90」、「CB125JX」などの(ベンリイの名がつく)小排気量モデルにも浸透し、それは揺るぎないものになりました。

 そんな中、ちょっとした変化が起こったのが1978年のこと。CBを超えるCBとして、1047ccの並列6気筒エンジンが搭載した「CBX」がデビューし、強烈な存在感を見せつけたのです。

 ここまでが70年代末までの話ですが、80年代に入ると混沌としていきます。CBXシリーズの勢力が125ccの「CBX125カスタム」にまで及んだ一方、1983年に「CBR400F」の発売が始まり、ここからはCBRシリーズが勢力を拡大していくのです。

1983年に登場した「CBR400F」は排気量399ccの空冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載。エンジンの回転数に応じて2バルブ作動と4バルブ作動が自動的に切り換わるREV機構を採用。当時の価格は53万9000円だった
1983年に登場した「CBR400F」は排気量399ccの空冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載。エンジンの回転数に応じて2バルブ作動と4バルブ作動が自動的に切り換わるREV機構を採用。当時の価格は53万9000円だった

 当初は「X=先進的」、「R=レース」というイメージでしたが、「CBR750スーパーエアロ」(1987年)がツアラーとして加わり、オールラウンドな性能をアピール。本家たるCBシリーズが「CB1000SF」と「CB400SF」(いずれも1992年)で正統派ジャパニーズネイキッド路線を歩み始めた一方、CBの名にRとXの両方を盛り込んだ「CBR1100XXスーパーブラックバート」(1997年)が送り出され、メガスポーツと呼ばれる新たなジャンルを牽引したのです。

 フゥ〜……もはや、こうして原稿を書いていてもよく分からなくなってきました。ここで言いたいことは、「CB」は60年以上も続く、ホンダの象徴ですから、今一度その存在意義が見直してもいいのでは?ということです。

 たとえば近年のカワサキは、モデル名を整理整頓してきました。ロードスポーツに関しては、ネイキッド&バーハンドルに「Z」の名を、カウル&セパレートハンドルに「Ninja」の名を与えています。結果、「Zだらけ」、「Ninjaだらけ」になったとはいえ、それぞれの棲み分けが明確になったのも事実です。

 その点、現行のCBは、CBRを除いたとしてもスポーツ、ツアラー、クラシックと様々で、「CB1000R」に至ってはネオスポーツカフェという、ホンダ独自のジャンルを形成。そういう状況だからこそ、「ホンダが考えるCBはこういうバイクです」という意思表明があると生粋のホンダファンも、これからホンダユーザーになる新しいファンも、長きに渡る系譜を感じられるのではないでしょうか。

ホンダ最後の「空冷CB」と筆者(伊丹孝裕)
ホンダ最後の「空冷CB」と筆者(伊丹孝裕)

 ホンダにとって「CB」はスポーツバイクの歴史そのものです。これから先、EVの時代が到来しても継承されていくでしょうから、今こそCBブランドを再定義し、新時代に備えるタイミングだと思います。

 あ、そうそう。モデル数があまりにも膨大ゆえ、「あのCBホニャララに触れないとは何事だ!」とか、「いくらなんでも端折り過ぎだろ!」とかいろんな思いがあるでしょうが、そこはご容赦を。個人的には「CB-1」(1989年)が短命に終わったことが残念でなりません。ハイパフォーマンスなエンジンとオーソドックスなデザインが融合した極めて意欲的な、そしてスタンダードになるべきCBだったと考えているのですが……。