ヤマハ発動機は電動スクーター『E01(イーゼロワン)』を用いた実証実験を世界6つのエリアでおこないますが、その目的や意味付けは何なのでしょうか。バイクジャーナリストの青木タカオが開発チームにじっくり話を伺いました。

2050年に2割電動へ!

 ヤマハ発動機は出力8.1kWクラス(日本では原付2種に相当)の電動スクーター『E01(イーゼロワン)』を日本、欧州、台湾、インドネシア、タイ、マレーシア向けに実証実験用モデルとして7月から順次導入します。

ヤマハの最新電動バイク「E01」
ヤマハの最新電動バイク「E01」

 ヤマハ発動機は出力8.1kWクラス(日本では原付2種に相当)の電動スクーター『E01(イーゼロワン)』を日本、欧州、台湾、インドネシア、タイ、マレーシア向けに実証実験用モデルとして7月から順次導入します。

 同社は2050年までに、製品使用時などにおけるCO2排出量を2010年比で90%削減する目標を掲げており、今回の実証実験はその目標達成に向けて取り組む活動の一環としています。

ヤマハが市販してきた歴代の電動バイク
ヤマハが市販してきた歴代の電動バイク

 ヤマハは1991年の東京モーターショーで『FROG』を参考出品して以来、2002年に発売した『Passol』をはじめ、『Passol L』(2003年)や『EC-02』(2005年)、『E-Vino』(2015年)など継続的に電動二輪車を提案・開発し、市販化してきました。

 また、電動アシスト自転車『PASシリーズ』を含め、ゴルフカーや産業用マルチローター、船外機の電動化(次世代操船システム HARMO/ハルモ)など、全社でEV化を推し進めています。

 モーターサイクルにおける電動車は、バッテリーが着脱式であるか、固定電池式であるかに分けることができ、新登場の『E01』は後者となっていることも見逃せません。

E01で獲得するべき3つのもの

 EV推進における課題はなんでしょうか。開発陣によると、ユーザーが必要とする航続距離とその充電方法の最適な組み合わせが、まだわかっていないと言います。

ヤマハが考えるEV推進における課題
ヤマハが考えるEV推進における課題

 必要な航続距離が短ければ、電池の容量を小さく軽量にでき、持ち運ぶことが容易になることから着脱式にできます。

 容量が小さいことから充電時間が短くなり、すでに台湾でおこなわれているようなスワップ式(交換式)が可能となるのです。

 しかし、スワップ式をやるには電気ステーションが必要となり、充電インフラを整えなければなりません。しかし、電気ステーションは世界的に見てもまだ黎明期にあります。

 また、多くのユーザーが都市圏移動=中距離走行を望んでいることも事実で、それに応えるにはやはり充電インフラが必要となってきます。

実証実験専用モデル「E01」を開発した狙い
実証実験専用モデル「E01」を開発した狙い

 となると、電池の容量を増やすという方法があるものの、バッテリーの重量を増せば取り外して持ち運びができなくなります。片手で持てる電池重量は10kg程度まででしょう。

 バッテリーが固定式となると、充電する場所が必要なのはもちろん、時間もより多く要することとなります。着脱式にするにせよ、固定式にするにせよ、それぞれに課題があります。

 とはいえ、カーボンニュートラルへの継続的な取り組みは欠かせません。2035年には二輪車における電動車の割合が20%を超えると、ヤマハ開発チームは予測しています。

 この数字は都市内移動のモデルだけでは達成できないと同社は見ており「EVでの中・長距離距離ニーズへの対応」「機能バランスの把握」「インフラの知見を獲得」、これら3つを今回の『E01』の実証実験で獲得する目的があると開発チームはいいます。

実証実験専用モデル「E01」を開発した狙い

『E01』の実証実験は日本、欧州、台湾、マレーシア、タイ、インドネシア、気候や使われ方が異なる6つの国・地域となります。

 電池は使い方はもちろん、環境温度によって性能や劣化が変化していきます。

ヤマハ「E01」の実証実験が行われる6つの国・地域
ヤマハ「E01」の実証実験が行われる6つの国・地域

温帯
日本、欧州

亜熱帯
台湾

熱帯
タイ、マレーシア、インドネシア

 また、日本の高速道路の最高速程度で移動ができるヨーロッパやマレーシア、都市内移動がメインですが、都市間移動の距離も要求されるタイ、インドネシア、台湾、日本、そしてすでにスワップ式のインフラが整っている台湾。さまざまな環境下で使われることで、多くのデータが獲得できます。

 日本では個人向けリースがメインとなるが、シェアリングサービスや配送業者などへの貸し出しも実施し、将来へ向けた知見を獲得していきます。

コネクテッドシステムでデータ収集

 開発責任者(プロジェクトリーダー)の丸尾卓也さん(CV開発部EM設計G)は「EVの敷居を下げて、生活の中につないでいき、日常の一部にしていきたいと考えていますが、我々もどのように進めていけばいいのか社内で議論を進めてきました」といいます。

ヤマハ「E01」の開発責任者(プロジェクトリーダー)の丸尾卓也さん(CV開発部EM設計G)と筆者(青木タカオ)
ヤマハ「E01」の開発責任者(プロジェクトリーダー)の丸尾卓也さん(CV開発部EM設計G)と筆者(青木タカオ)

 興味深いのは、実証実験にてリースしたユーザーの使い方をLTE回線によってデータ収集することです。走行ログやバッテリー残量など車両情報をリモートで確認できるコネクテッドシステムが搭載され、車両CAN情報によってバッテリーの情報・充電方法、GPSによる駐車位置など詳細データがヤマハの専用サーバーに直接送られ、今後のEV開発への貴重なデータとなっていきます。

斬新デザインはモトロイド譲り!?

 ノーズにある充電コネクタは「急速充電器」「普通充電器」「ポータブル充電器」の3つの充電システムに対応しますが、この大胆なレイアウトを考えたチーフデザイナーは電動バイクのコンセプトモデル『MOTOROiD(モトロイド)』も担当する前園哲平さん(ヤマハ発動機クリエイティブ本部プロダクトデザイン部)です。

電動バイクのコンセプトモデル「MOTOROiD(モトロイド)」と関連性のあるデザインとされたヤマハ「E01」
電動バイクのコンセプトモデル「MOTOROiD(モトロイド)」と関連性のあるデザインとされたヤマハ「E01」

 充電ステーションにまっすぐに車体を向けることができ、とても実用的。ノズルやホースが車体と干渉し、傷つける心配もありません。

ヤマハ「E01」のチーフデザイナー、前園哲平さん(ヤマハ発動機クリエイティブ本部プロダクトデザイン部)
ヤマハ「E01」のチーフデザイナー、前園哲平さん(ヤマハ発動機クリエイティブ本部プロダクトデザイン部)

 主に車体の上部をライダーとマシンの「タッチングエリア」とし、車体の下部はパワートレインが一直線に並ぶ構成をベースに、前後の足まわりを含み、爽快でクリーンな走りを支える「メカニカルエリア」に分けています。

 最後になりましたが、今回の取材にご対応いただきましたヤマハ発動機『E01』プロジェクトチーフ(PC)の皆さんへ、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

システム制御PC 後藤慎太郎さん(電子システム開発部制御技術2G)
パワーユニット設計PC 桃井雅之さん(第1PT開発部電動設計G)
バッテリ設計PC 矢崎勝也さん(第1PT開発部パワーサプライG)
車両実験PC 神田栄作さん(車両実験部プロジェクトG)
BD設計PC 中尾利樹さん(CV開発部EM設計G)
12V電装設計PC 秋元雄介さん(電子システム開発部プロジェクトG)