イタリアのバイクメーカー「aprilia(アプリリア)」から、同ブランド初となるアドベンチャースタイルの軽二輪スクーター「SR GT 200」が登場しました。一体どのような乗り味なのでしょうか。

アプリリア初のアーバンアドベンチャースクーター

 2021年のEICMA(イタリア・ミラノで開催されるバイクの見本市)でアプリリアが発表した「SR GT 200」と「SR GT 125」は、同社にとって新分野への挑戦となる“アーバンアドベンチャースクーター”です。

アプリリア「SR GT 200」に試乗する筆者(中村友彦) ※車体は別売りのリアトップケースを装着した状態
アプリリア「SR GT 200」に試乗する筆者(中村友彦) ※車体は別売りのリアトップケースを装着した状態

 悪路を考慮したフロント14インチ、リア13インチのブロックパターンタイヤ、モーターサイクル的なバーハンドル+クランプ、スクーターの基準ではやや長めとなるフロント122mm、リア102mmのサスペンションストローク、ネガ表示のLCDメーターなどから推察すると、このモデルの仮想的はホンダ「ADV150」のようで、2種の排気量設定からは、ADV150を挟撃という意識が伺えます。

 そして主要部品の構造を調べてみると、ダブルクレードルタイプのフレーム、ブラシレスタイプのスターターモーターやアイドリングストップ機構を導入した水冷単気筒エンジンにも、ADV150に通じる要素が感じられます。

 一方でADV150と異なる装備としては、スマホとの連動システムが挙げられるのですが、昨今ではこの種の機構はとくに珍しいものではないでしょう。そういった事情を把握している人にとって、SR GTはいまひとつ興味を抱きづらいモデルかもしれません。

 とはいえ、2022年から日本市場への導入が始まった「SR GT 200」を体感した私(筆者:中村友彦)は、仮想敵に通じる構成を採用していても、やっぱりイタリア車には譲れないモノがあるのだなあ……と、しみじみ感心することになりました。

操る楽しさと、1クラス上の上質さ

 イタリア車にとって譲れないモノ。ありきたりな表現ですが、それは操る楽しさです。具体的な話をするなら、下半身のホールド感が絶妙で、シートがちょっと高めのSR GT 200は、乗り手の操作に対する反応がすこぶる忠実で、キビキビしたハンドリングが味わえるのです。もっともその点に関しては、ADV150も相当に侮れない資質を備えているのですが、フロントフォークが倒立式で、サスペンションストロークがフロント130mm、リア120mmのADV150は、安定性と快適性に優れる一方で、SR GTほど軽快ではない……ように思います。

アプリリア初のアーバンアドベンチャースクーター「SR GT 200」 ※車体は別売りのリアトップケースを装着した状態
アプリリア初のアーバンアドベンチャースクーター「SR GT 200」 ※車体は別売りのリアトップケースを装着した状態

 ただしSR GTは、操る楽しさや軽快さのみに特化したスクーターではありません。市街地をスイスイ走れるのは当然としても、ADV150比で+25mmとなる1350mmのホイールベースや、抜群の防風効果を誇るスクリーン+カウリングのおかげで、高速巡航も至って快適なのです。もちろんADV150を含めた今どきの125ccから200ccのスクーターは、ほとんどが十分な高速巡航性能を備えていますが、後述する排気量の数字はさておき、SR GTの車体に対して、私は良い意味で1クラス上の資質を感じました。

 ではパワーユニットはどうかと言うと、車名の数字は200ですが、じつはこのモデルが搭載する水冷単気筒エンジンの排気量はADV150より+25ccの174ccで、最高出力は+2.6psとなる17.6psです。そして装備車重が、SR GT 200が148kgでADV150が134kgという事実を考えると、速さという面でSR GT 200に大きな期待はしづらいのですが……。

排気量174ccの水冷単気筒SOHC4バルブエンジンを搭載
排気量174ccの水冷単気筒SOHC4バルブエンジンを搭載

 +25cc、+2.6psの差は予想以上に大きく、低中回転域の加速はSR GT 200のほうが優勢でした。もっとも、最高速に大差はないのですが、前述の操る楽しさには、どんな場面でも思い通りの加速ができる、良好なレスポンスのエンジンも寄与しているのかもしれません。なお、ADV150には、次の仕様変更で「PCX160」用のエンジンを導入するのでは、という噂があります。とはいえ、PCX160は排気量が156cc、最高出力が15.8psですから、おそらく、エンジンに関するSR GT 200のアドバンテージは今後も揺るがないでしょう。

4輪のイタリアンSUVに通じる資質

 さて、ここまではADV150を比較対象として記してきましたが、試乗を終えて車両の各部をじっくり眺め、「RSV4」や「RS660」と同様のフロントマスク、3灯式ヘッドライトが抜群のインパクトを放つ“アプリリア顔”を改めて認識した私は、ハタと気づきました。そうか、ADV150への対抗意識はあるとしても、そもそもSR GTは、近年のイタリアの4輪界で流行している、高級SUVの要素を取り入れたモデルじゃないだろうかと。

3灯式のヘッドライトはデイタイムランニングライトを備えたフルLED。写真は中心のハイビームを点灯した状態
3灯式のヘッドライトはデイタイムランニングライトを備えたフルLED。写真は中心のハイビームを点灯した状態

 と言うのも昨今のイタリアでは、アルファロメ・ステルビオ、マセラティ・レヴァンテ、ランボルギーニ・ウルスなど、長い歴史を誇るメーカーが高級SUV市場に進出し、それらはフロントマスクの主張が強烈なのです。ちなみに各車のインプレを読んでみると、いずれも良好な乗り心地の万能車でありながら、イタリア車ならではのスポーツ性はきっちり維持しているようです。

 おそらくアプリリアは、そういった4輪の高級SUVを意識して、SR GTを開発したのではないでしょうか。などと書くと、“だったら、もっと大きな排気量で”と感じる人がいるかもしれませんが、かつての「SRV850」で大成功が収められなかった同社は、このモデルでは世界中で需要が見込める排気量帯で勝負したかったのでしょう。

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 アプリリア「SR GT 200」の価格(消費税10%込み)は55万円から(グラフィックにより価格差あり)、日本では2022年2月18日発売開始、6月より順次出荷予定です。