外国人観光客の誘致が加速しつつある今、沖縄県だけに存在するバイクのローカル・ルール撤廃を求める声が大きくなっています。全国と沖縄県のオートバイ事業者の団体は2022年5月24日、県警に対して規制の撤廃を要望しました。

じつは簡単じゃない、第1車線だけの通行

 沖縄県の幹線道路の一部にある「二輪車は第1通行帯を走行しなければならない」というローカル・ルール。バイクに限らず、車両はキープレフトが基本なので、単にそれを強調しているのかと思いきや、じつはそうではありません。

「バイクは第1車線を走ること」を義務付ける標識。この規制の意味を走りながら瞬時に理解しなければいけない
「バイクは第1車線を走ること」を義務付ける標識。この規制の意味を走りながら瞬時に理解しなければいけない

 首都圏、関西圏でヘリコプター・パイロットとして活躍した後、那覇市議会議員となった吉嶺努さんはこう話します。

「本土でバイクに乗っていて気にもしなかったことが、沖縄に帰ってきて違反に問われるというのはなぜだろうと思いました」

 市議会へバイク通勤する吉嶺議員。日々、不便さを実感しています。

「小排気量の、スピードも十分にでないバイクが、3車線の国道を左から右に道幅いっぱいに移動して右折する。身の危険も感じることなく、他車に迷惑をかけることもなく車線変更するにはどうしたらいいか。それは運転する人の判断に任されている。そんな規制の中で違反が問われることは、(道路事情と)マッチしていない」

 道路交通法(第20条2項)には、車線によって通行できる車両の種類が指定されている区間では、指定された車両通行帯を守らなければならない、とあります。似たようなルールは全国の高速道路の一部で、大型トラックやトレーラーに対して定められています。

 しかし、沖縄県の場合、それがバイクを対象に一般道で行なわれていることに、ライダーの反発があります。実際に走ってみると、左側を走るということ以上に、難しい判断を強いられることがわかりました。

拡幅工事で8車線化。4車線を右折移動するのは無理! 利用者猛反発で見直し

 バイクは第1通行帯だけを走る、という沖縄ルールは、1983年にできました。規制総延長は約49km。いずれも2車線、または3車線の国道です。

・国道58号「嘉手納(南)交差点」〜「旭橋交差点」(8車線区間を除く約20km)
・国道507号「古波蔵交差点」〜「上間交差点」
・国道329号「上間交差点」〜「兼城交差点」(2区間で約5.5km)
・国道330号「旭橋交差点」〜「コザ交差点」(約23.5km)

 約82kmあった規制区間は、2021年に71km、2022年に49kmと、段階的に短縮されました。とくに2022年3月の見直しでは、国道58号の拡幅工事で8車線化した約2.3kmを部分的に解除。交差点直前で右折のために第1通行帯から第4通行帯を右寄せするのは危険という主張が受け入れられた形です。

沖縄県警交通部に規制解除を要望する全国オートバイ協同組合・大村直幸会長(中央)と沖縄県オートバイ事業協同組合・宜野座朝洋理事長(左)、赤嶺毅理事(右)
沖縄県警交通部に規制解除を要望する全国オートバイ協同組合・大村直幸会長(中央)と沖縄県オートバイ事業協同組合・宜野座朝洋理事長(左)、赤嶺毅理事(右)

 記者も「第1通行帯だけを走る」を体験しました。那覇市から沖縄市を目指して国道58号を走行。規制全区間を往復しましたが、最初に気になったことは、規制区間がわかりにくいことです。

 標識はライダーの頭上、道路案内板のように設置され、規制区間なのかそうでないのか、明確にわかりません。そもそも違反に関わる標識が頭上にあること自体が珍しいです。

 上り坂には路面標示でバイクは第1通行帯を走ることを指定しているのですが、この表示が、まるでトラップのよう。

・第1通行帯=「自動車・二輪車・軽車両」
・第2通行帯=「自動車|二輪を除く|」
・第3通行帯=「自動車|二輪を除く|」

中央線側から見た路面標示。「二輪車を除く」の上に横一文字に白線があるのが分かるだろうか。これが「自動車(二輪車を除く)」の括弧の代わりになる路面標示だ。走りながらわかるはずもない
中央線側から見た路面標示。「二輪車を除く」の上に横一文字に白線があるのが分かるだろうか。これが「自動車(二輪車を除く)」の括弧の代わりになる路面標示だ。走りながらわかるはずもない

 四輪車はどの車線でも走行できるので、第2、3通行帯の路面標示は、わざわざ2車種を白線で区切っているのですが、四輪車が車道を走ることができると書き込む意味があるのでしょうか? わかりにくい標示は所々、削れて見えなくなっています。

 通行可と通行不可、適法と違法を分ける重要な意味を持っています。わかりにくい路面標示も所々削れています。

迷う、規制の優先度? 運転に不安が

 結論として、とにかく第1通行帯を走れば――と言いたいところですが、そこにも落とし穴があります。

 第1通行帯が左折専用レーンに指定されている場合があり、そのまま交差点を突っ切ったら違反です。この場合、第2通行帯に車線変更するのですが、どのタイミングでどっちの指定が優先するのか。ライダーだけが自問自答しなければなりません。

 さらに原付バイクのライダーは、ふいに登場する二段階右折禁止の標識を見極めて、運転しなければなりません。

 国道58号の道幅は1車線3.25mで制限速度は50〜60km/hです。車線変更は、その3秒前にウインカーを点滅。右折する場合は交差点の30メートル手前から他の車両に意思を示さなければなりません(あなたならできますか?)。

 沖縄県警交通規制課に要望した全国オートバイ協同組合連合会・大村直之会長は、こう話します。

「規制が一部解除されたのは嬉しいが、ライダーにしてみれば第1通行帯だけしか走ることができないのは、安全にかかわる問題。国道58号のように、22kmのうち2kmだけ短く解除されると、さらに交通ルールが複雑になる」

 沖縄県では専用バスレーンの時間帯(朝、夕方90分)で、バイクはバスレーン=第1通行帯を走ることが義務付けられています。バスレーンの設置がわかるように、緑色のカラー舗装がされているのですが、交差点手前では、これとは別に茶色のカラー舗装もあります。バイクの第1通行帯走行に慣れないと、この塗分けが何を意味しているのかわかりません。バスレーンを専用時間帯に走ることができるのは悪いことではありませんが、一方で運転を複雑にしていることは否めません。

バイクは第1通行帯を走らなければならないが、四輪車はどこでも走ることができる。交差点付近で左折車を車線変更してのやり過ごすことは難しい。緑のカラー舗装はバス専用レーンになることを示している。バイクのためではない
バイクは第1通行帯を走らなければならないが、四輪車はどこでも走ることができる。交差点付近で左折車を車線変更してのやり過ごすことは難しい。緑のカラー舗装はバス専用レーンになることを示している。バイクのためではない

 沖縄県警に要望を続ける沖縄県オートバイ事業協同組合の宜野座朝洋理事長も、こう訴えます。

「それでも全国の教習所で沖縄県内を走るときは交通ルールが違う、とは教えない。県内でバイクショップを営む我々もマナーアップや安全教育に力を入れているので、全面的な規制解除をお願いしたい」

 規制40年の節目、沖縄の規制のあり方が問われています。