トライアンフモーターサイクルズが電動バイク「TE-1」プロジェクトの最終段階、フェーズ4を終えたプロトタイプを公開しました。トライアンフを含むコラボレーションプロジェクトによって作られた「TE-1」はどのような電動バイクなのでしょうか。

電動のスポーツバイク、市販化の実現は……!?

 トライアンフ・モーターサイクルズ(以下、トライアンフ)は、2022年7月12日(日本時間20時)に、電動バイク「TE-1」のプロトタイプ最終型を公開しました。TE-1プロジェクトはトライアンフがプロジェクトをマネジメントし、ウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング、インテグラル・パワートレイン社、ウォーリック大学WMGが共同で開発を行い、英国政府ゼロエミッション車局(OZEV)から資金提供を受けたものです。

トライアンフの電動バイク「TE-1」プロトタイプがプロジェクトの最終段階を迎え、ブランドン・パーシュ選手によるテストライドが行なわれた
トライアンフの電動バイク「TE-1」プロトタイプがプロジェクトの最終段階を迎え、ブランドン・パーシュ選手によるテストライドが行なわれた

 2019年5月から始まったプロジェクトが最終段階のフェーズ4である実走テストを終えたことに際して、トライアンフのブランドマネジメント部長、マイルス・パーキンス氏、そしてチーフプロダクトオフィサーのスティーブ・サージェント氏によってオンラインでの説明会が行われ、そのテスト結果が発表されました。

 TE-1プロジェクトは4つのフェーズに分けられており、フェーズ3でプロトタイプ車が完成。2022年2月に始まったフェーズ4では、ヒンクリーにおけるトライアンフのローリングロード設備やサーキットでのテストが行なわれ、テストライダーには2022年のデイトナ200ウイナーであり、2021年のブリティッシュ・スーパースポーツ選手権にストリートトリプルで参戦したブランドン・パーシュ選手が起用されました。

トライアンフの電動バイク「TE-1」プロトタイプ
トライアンフの電動バイク「TE-1」プロトタイプ

 テスト結果では、航続距離が161km、充電時間は0%から80%までで約20分、最大出力は130kW(約177PS)、ピークトルクは109Nm。そしてスタート時の加速は3.7秒で0から100km/hに到達。また、車両重量面では220kgと、同クラスの電動バイクに比べ25%ほど軽量化されているということです。

 ライディングモードは「レイン」、「スポーツ」、「トラック」、そしてモーターのポテンシャルを開放する「アンリミテッド」の4つ。ただ、アンリミテッド・モードに関してはバッテリーの消耗が激しいため、限られた時間のみ使用できるものとなります。また、「ウオーク&リバース」モードという低速モードがあり、これは駐車時などの取りまわしの使用を想定したものです。ほか、トラクションコントロール、フロントホイールリフトコントロール、回生ブレーキコントロールなどを備えています。

 パーキンス氏は「テスト結果は全てのプロジェクトの目標と期待を上回っており、それがこのユニークなコラボレーションの成功を示していると考えています」と、TE-1プロトタイプの性能の高さを強調しました。

トライアンフが目指した電動バイクとは

 公開されたTE-1はネイキッドタイプで、特徴的なツインヘッドライトなど、トライアンフのスピードトリプル、またはストリートトリプルに近いスタイルを持っています。

液晶ディスプレイはシンプルな印象。市販車となれば表示される情報は多くなるはずだ
液晶ディスプレイはシンプルな印象。市販車となれば表示される情報は多くなるはずだ

 パーキンス氏は「重量配分の人間工学的ジオメトリーという点では、TE-1はスピードトリプルに似ていますが、見た目のインパクトという点では、ストリートトリプルに近いのです。我々の全てのバイクがそうであるように、目指したのは刺激的で敏捷性のあるコンパクトなバイクです」と説明しています。

 TE-1にはIMUやABS、トラクションコントロールが搭載されていますが、スピードトリプルに近い重量配分に開発の焦点を当てることで、スピードトリプルで開発したABSやトラクションコントロールキャリブレーションをコピーすることができ、IMUのセットアップにも役立ったとのことです。

バッテリー重量は約106kgとなり、交換式は現実的ではない
バッテリー重量は約106kgとなり、交換式は現実的ではない

 現在の電動バイクが抱える課題のひとつである航続距離を考えると、特性に用途が向くであろう街乗りに軸足を置いたスクーターのようなタイプではなく、こうしたトライアンフらしいスタイルから、いま、そしてこれからバイクを“楽しむ”ライダーに向けた機能を備えた電動バイクであることがわかります。

 サージェント氏はスタイルとしてこの方向性を選んだことについての質問に対し、次のように回答しています。

「我々がやりたかったことのひとつは、このバイクをトライアンフ・ファミリーに加えることだったのです。ネイキッドバイクを目指すなら、我々のストリートトリプル、スピードトリプルのスタイルを取り入れるのは当然なことです。それをさらに発展させ、電動バイクにしたのです。ただ、近づいてみればスピードトリプル、ストリートトリプルとは少し違う、進化したバイクであるとわかります。

 TE-1は進化したものであることは確かですが、親しまれているトライアンフのバイクであることは常に意識しています」

緑のライトはバッテリーの絶縁警告灯だという
緑のライトはバッテリーの絶縁警告灯だという

 また、サージェント氏によれば、このTE-1プロジェクトに際し、トライアンフは実際にバイクを楽しむライダーたちに聞き取りを行なったそうです。

「スピードトリプルやほかのスーパーネイキッドバイクを購入したお客様とお話をしました。彼らに“もしあなたのバイクの電動バージョンを作るとしたら、性能面では何を求めますか?”と聞いたのです。彼らは、スピードトリプルを購入する理由のひとつが性能によるものであるとはっきりしていました。というわけで、スピードトリプルにできるだけ近いものにすることが非常に重要だったのです。

 我々はターゲットとする航続距離はどのくらいかとも尋ねました。100マイルが(約161km)、おそらくほとんどの人が止まらずに走り続けたいと考える最低航続距離です。それから充電時間についても質問しました。

 もともと目標は電動のスピードトリプルでした。実際にお客様と話して、性能、航続距離、充電時間、そして重量の面で何が重要であるかを明確にしていきました」

 さて、気になるのが市販化の予定ですが、今回の発表では、このTE-1自体の生産が行なわれることはないだろう、ということでした。TE-1はプロトタイプであり、この開発で得た経験を今後の電動バイクの開発に生かしていくことになるようです。

前後ともにサスペンションはオーリンズ製を装備している
前後ともにサスペンションはオーリンズ製を装備している

「ただ、我々はすでに電動バイクを計画しており、現在、開発中のものがあります。トライアンフから何か発表されるのも、そう遠くはないでしょう」とサージェント氏。

 これに近いトライアンフの電動バイクが登場するのではないか、と考えられます。続報が楽しみなところです。