レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、EVの音がしないことは欠点だと言います。どういうことなのでしょうか?

音が静かなのは良いことだが……

 EV戦略を積極的に進める日産のテストコースで、僕(木下隆之)は某新型車両のプロトタイプをテストドライブした。ガソリンエンジンを積まない「BEV」だ。最近「EV」と表記すると、ハイブリッドや水素燃料車と誤解されることがあるため、充電したバッテリーだけをエネルギーとして走行するEVをBEV、つまり、バッテリー・エレクトリック・ヴィークルとしている。

100%バッテリーの電気で走る、新型「軽EV」として注目を集める「日産サクラ」は、発表から約3週間で受注1万1000台を突破した(日産調べ)
100%バッテリーの電気で走る、新型「軽EV」として注目を集める「日産サクラ」は、発表から約3週間で受注1万1000台を突破した(日産調べ)

 そのBEV試乗に先立って、開発担当者のプレゼンテーションを授かった。その時に気になったフレーズが「ガソリンエンジンを搭載しないEVの最大の利点は、音がしないことです」だ。

 さすがにBEV開発担当者らしいコメントである。だけど、そのブレーズには大きな間違いがある。正しく言うならば「ガソリンエンジンを搭載しないEVの最大の“欠点”は、音がしないことです」である。

 やや揚げ足取りのような気がするものの、僕はどうもBEVの無音に近い空間を居心地悪く感じている。確かに動力源は大きな音を発しないかもしれないが、それが理由でタイヤノイズや風切り音が、かえって煩わしく感じてしまうのだ。

 室内の騒音をデジタルに計測すると、おそらくガソリン車よりもBEVの方が静かなのだろうと想像する。だけど、人間である僕の耳には、どちらがうらさく感じるかと問われれば、タイヤがゴーゴーと唸って聞こえるBEVの方なのだ。そもそも最近のガソリン車はとても静かだし、多少の排気音がタイヤノイズを中和してくれる。

 それがバイクとなれば、音がしないことは重大な出来事だ。内燃機関が奏でる排気音は、どんな音楽にも勝るサウンドに感じる。バイクに乗るのは、あのサウンドを聴くためだと言っても大袈裟ではないくらいだ。

 空気が振動して伝わる音だから、耳だけではなく全身でサウンドを感じていると言ってもいい。

 という理由で「ガソリンエンジンを搭載しないEVの最大の“欠点”は、音がしないことです」なのである。