スポーツ用の自転車にはさまざまな種類があり、目的や競技に合わせて多彩な進化を遂げてきました。そんなスポーツ用自転車の進化の最先端と言えるのが「グラベルロード」です。

どんなシチュエーションにも対応できる万能自転車

 スポーツ用の自転車にはさまざまな種類があり、目的や競技に合わせて多彩な進化を遂げてきました。そんなスポーツ用自転車の進化の最先端と言えるのが「グラベルロード」です。

車体で見分けがつきにくい「グラベルロード」
車体で見分けがつきにくい「グラベルロード」

「グラベルロード」は、見た目はロードバイクと変わりませんが、日本語で「砂利」を意味する「gravel」の名が表す通り、舗装路だけでなく未舗装の砂利道も走行できるように設計された、長距離走行向けの自転車です。

 これは近年誕生したカテゴリーで、荒れた道を走行することを想定して、通常のロードバイクよりも太めのタイヤ、ハードなシチュエーションでも制動力を失いにくいディスクブレーキが装着されているのが特徴です。

 ここまでの説明では、オン/オフロードだけでなく、あらゆる障害を自転車で走り抜ける過酷な競技で使われる「シクロクロス」と何が違うのか? と疑問を抱くかもしれません。

 正直なところ、そこまでの大きな違いはありません。実際、メーカーでもその境界線は曖昧で、よく混同されています。仮に利用シーンで線引きする場合、「シクロクロス」がオフロードを走ることに特化した「マウンテンバイク(MTB)」よりのレース用自転車で、「グラベルロード」は「ロードバイク」よりの長距離走行を目指したカテゴリーと言えるかもしれません。

 車体としても微妙な違いはあります。構成パーツに大きな違いはありませんが、「グラベルロード」には後付けでフェンダー(=泥除け)やキャリア(=荷台)を装着できるように、フレームにはあらかじめ「ダボ穴」と呼ばれるネジ穴が用意されていることが多いです。

 すべての「グラベルロード」と呼ばれる自転車に必ずダボ穴があいているわけではないのがややこしいところですが、ダボ穴による拡張性は高く、泊りがけのサイクリングやソロキャンプ、はては日本一周の旅にも適した自転車と言えます。

 ここでまた疑問に思うかもしれません。オプションをフル装備した「グラベルロード」は、1970年代から80年代にかけて大流行したツーリング用自転車「ランドナー」と何が違うのか? と。

 こちらもまた明確な違いを説明するのは難しく、昔からの「正統派ランドナー」はフレームに取り付ける変速シフターやカンチブレーキといったクラシカルなパーツを使ったものが多く、フレーム自体も、どこか懐かしさを感じさせるデザインなので、最新のスタイルで構成された「グラベルロード」とは雰囲気が違います。

 とは言え、近年復活の兆しが見えている「新生ランドナー」では、さまざまな最新パーツが使われているので、「グラベルロード」との違いも見えにくくなっています。

ヤマハの電動アシスト機能付きグラベルロード「WABASH RT(ワバッシュ・アール・ティー)」
ヤマハの電動アシスト機能付きグラベルロード「WABASH RT(ワバッシュ・アール・ティー)」

 そしてさらに、「グラベルロード」には「MTB」のようなサスペンションを装備した車種も存在します。ここまでくると「グラベルロード」を定義するのがかなり難しくなってきます……。

 これまで「ロードバイク」のブレーキは、車輪のリムをゴムのパッドで挟んで止めるリムブレーキが主流でしたが、制動力が安定したディスクブレーキに置き換わりつつあります。「ロードバイク」が「グラベルロード」に寄って来たのか、「ロードバイク」にディスクブレーキが装備されることが多くなったから「グラベルロード」が誕生したのか……そのあたりも曖昧です。

 歯切れよくスパッと「グラベルロード」を定義できないのは心苦しいところですが、「グラベルロード」は重量との兼ね合いや強度の問題で、これまで不可能だった機能の両立を技術進化で実現させ、1台でユーザーの「欲しい」に対応できるようになった自転車、と言えるかもしれません。

 一見、さまざまな自転車の良いとこどりをしただけのように思えますが、そこにはユーザーのわがままを一定水準以上で満たせるよう、メーカーの技術が込められています。

 ある意味、スポーツ用自転車の収斂進化(しゅうれんしんか)の果てと言える存在で、シティサイクル(=ママチャリ)が実用自転車の進化の先なら、「グラベルロード」はスポーツ用自転車の進化の先なのかもしれません。