毎月8の付く日は『高梨はづきのきおくきろく。』は、鈴鹿8耐でレーシングサービスを行う「オージーケーカブト」にヘルメットのメンテナンスについて聞いた。

レーシングサービスとは?

 皆さんこんにちは。高梨はづきです!

 2022年も2/3が過ぎてしまったね!年末まで駆け抜けるのみだー!ってことで、9月最初の記事では前回に引き続き、2022FIM世界耐久鈴鹿8時間耐久ロードレース第43回大会(以下:鈴鹿8耐)の記事をお送りするよ!

鈴鹿8耐で多くのライダーが使用するオージーケーカブトのヘルメット
鈴鹿8耐で多くのライダーが使用するオージーケーカブトのヘルメット

 前回のおさらいをすると…プレスルーム内やピット内で気になったものを紹介したのだけど、今回は更に奥深い【レーシングサービス】について触れていこうと思う。私と同じレベルの人や聞いたことはあるけどなんとなくって人にもわかりやすいように解説していくよ!

 さて、レーシングサービスというものもモーターレースの醍醐味の一つだそう。だけどわたしはレースド素人の無知識ビギナーなので当然レーシングサービスなんて存在すら知るわけもなく…。それもそのはず、レーシングサービスというのは、縁の下でライダーを支える裏方の人たちのことを言うのだ。

ヘルメットメーカー「オージーケーカブト」に取材
ヘルメットメーカー「オージーケーカブト」に取材

 それではレーシングサービスとはなにか?今回は実際にバイクロードレースで使ったヘルメットのメンテナンスを引き受けてくれるサービスを提供しているヘルメットメーカー「オージーケーカブト」の南さんと小川さんが快く取材を受けてくださったので、根掘り葉掘り聞いてみる。

 ちなみにオージーケーカブトの製品でバイク用ヘルメット以外にも有名なのは、自転車用ヘルメットなんだって! オリンピックの日本代表も使ってるんだよ!ビックリ!ノーヘルママチャリ民のわたしは知らなかったけど国内シェアNo.1らしい!そのノウハウを活かしたバイクヘルメットにおいても安全性の高さとリーズナブルな価格帯で人気なメーカーさんだよね。

受付台には、記入用のチェックシートが置かれておりメンテナンスの項目を決めます
受付台には、記入用のチェックシートが置かれておりメンテナンスの項目を決めます

 早速ブース内にお邪魔すると、受付台があり、その上に何やら記入用のシートが置かれている。そこに書かれていたのは《作業内容の選択》《シールド仕様の選択》《曇り止め仕様の選択》などのチェックシートだ。この項目にあるように、ヘルメットのメンテナンスをお願いする時は使用する選手が次のレースで使いやすいよう、どのようにメンテナンスをしたいのか可能な限り依頼に沿うよう作業を行うのがオージーケーカブトのレーシングサービスなんだって。

 時間や天候によって細かくヘルメットの仕様を変えるオーダーは日常茶飯事。特に鈴鹿8耐は夜間走行があるのでこのサービスが大いに役立っていることは間違いないね。ライダーを支えているのはチームピットだけじゃないんだね!

さまざまな状況に対応する為にスクリーンのバリエーションは豊富に用意されている
さまざまな状況に対応する為にスクリーンのバリエーションは豊富に用意されている

 鈴鹿8耐は8時間の間ずーっと走行するわけだから、太陽光の向きも東から西に変わるわけでそれに対応出来るシールドや、夜間走行対応のシールドも存在するんだ。もちろん雨対応もあってバリエーションの豊富さにびっくり。

 そういえば「走行しているコースの場所によって雨が降っていたり降ってなかったり大変だよ…」とカメラマンさんがぼやいてのを聞いたなぁ。そうなるとやはりレインシールドに切り替えるんだと思う。…あれ?レースの知識が増えると、そういったことも自分で考えられる様になるのか(記事書きながら嬉しい気持ちになった)!

鈴鹿8耐の過酷さはヘルメットからもわかる

 ヘルメットの持ち込みは、走り終えた選手本人が持ってくることもあるけど、基本的にはヘルパーと呼ばれるチームのサポートメンバーが選手の要望を聞いて代わりに持ち込むことが多いんだって。さすがに猛暑の走行後に熱中症になる寸前くらい体力ギリギリでヘトヘトの選手がその足で持ち込むのは容易ではないもんね。ちなみに、走り終わった選手はピット裏にあるプールにすぐさまドボン!と入って、プールに入って癒すんだよ。プールの大きさもチーム毎に様々で、ひよこのオモチャが浮いてるプールなんかもあって和んだりしたよ。

メンテナンスを終えたヘルメットがブース奥のラックに置いてあります
メンテナンスを終えたヘルメットがブース奥のラックに置いてあります

 オージーケーカブトのヘルメットの作業スペースは受付台のその奥に位置しているんだけど、奥に目を向けると銀のラックにピカピカのヘルメットが陳列していたのが見えた。せっかくなので少し見せてもらうことに!

 まず目に入ってきたのが見たことのあるノズルの伸びた機械。これは汗でびちょぬれになったヘルメット内のスポンジを乾燥させているんだって。たぶん布団を乾燥させるために使われる家電と同様のものだと思うんだけど、ヘルメット乾燥にも使えるなんて「めっちゃ便利じゃん!」と感心した。

交換用のスモークシールドは全部で4種類
交換用のスモークシールドは全部で4種類

 次に教えてもらったのはシールドに関して。交換用のスモークシールドは全部で4種類。クリアが0だとすると1.2.3と徐々にシールドの色が暗くなる。その中から選んだシールドにプラスして曇り止めシートを付けるまでが1セットなんだって。曇り止めとはその名の通り、シールド内が曇らない様に防いでくれる代物。夏は外気温とヘルメット内じゃ温度差がそこまで無さそうだし、曇ることないんじゃないの?と思っていたのだけど…急な雨などで曇ってしまう可能性が少しでもあるなら前もって潰しておくのが絶対といったところなんだと思う。

 転ばぬ先の杖ってやつだ!それから、走行中に汗がシールドに飛ぶんだそうな。前屈み姿勢だから額から汗が垂れてくるのかなぁ?これは実際に走行した選手しかわからないことだけど…うっ…そこまで聞けてない〜!またプロの選手に会えた時には聞いてみようっと。

ティアオフシートをペリッと剥がせば一気に不純物をオフできる仕様
ティアオフシートをペリッと剥がせば一気に不純物をオフできる仕様

 そして、これから紹介するシールド事情が、わたしにとって今回1番勉強になったポイントかな。今回オージーケーカブトさんにだけ取材をさせていただいたので、他のヘルメットメーカーさんが同じことをしているのかは分からないんだけど、オージーケーカブトのヘルメットを被る選手は皆、シートの上から貼る【ティアオフシート】というものを付けているの。

 これは、走行中に虫がぶつかったりスリックタイヤのカスなどが飛んできてシールドに付着し汚れてしまったり、また小石が当たって傷付いてしまった場合があるんだけど、シールド表面に貼付されているティアオフシートをペリッと剥がせば一気に不純物をオフできる仕様になっているもの。

ティアオフシートは1枚だけじゃなく2〜3枚重ね付けできる
ティアオフシートは1枚だけじゃなく2〜3枚重ね付けできる

 走行中の小さなタイヤカスや埃などがシールドに付着すると視界の妨げになって、集中力も落ちてしまうもんね。ちなみにこれは1枚だけじゃなく2〜3枚重ね付けできるのだけど、ライダーはグローブしてるのにどうやって剥がすのか疑問に思ったわたし。笑われるかなぁと思いつつ素直に聞いてみた。よくみるとイヤードッグ状(角を折っておく状態)に折り目が付いていて、枚数がある限り何度だって剥がして汚れを落とすことができるワイパー代わりのような物なんだって。だからグローブでもかろうじて剥がせるんだとか。

 へぇ〜〜〜〜!でも剥がしたシールはどこへ?とここでも疑問が。実は、剥がしたシートはレースの邪魔にならない様にタイミングを見てコース外にポイっとしているらしい。今回の鈴鹿8耐ではリアルタイムでその場面を見られなかったから、今後レースを見る時はティアオフシートを捨ててる場面もチェックしてみたいな。このティアオフシートは一般の方も手に入れられるからよかったらチェックしてみてね!

 残念ながらメンテナンス作業中の風景をみることは出来なかったんだけど、メンテナンス完了ほやほやのヘルメットたちを見ながら、選手が使うヘルメットは一般で売られている物と違うのか?と聞いてみたら、安全性は市販されているものと一緒だけど、風圧でヘルメットが浮き上がったり揺れたりしないよう選手用に改良されて作られていると教えてくれた。

高速道路を走った時にアゴ紐をしっかり閉めているのに風圧で浮いたり揺れたりする時がある
高速道路を走った時にアゴ紐をしっかり閉めているのに風圧で浮いたり揺れたりする時がある

 わたしも日常のバイクシーンで高速道路を走った時にアゴ紐をしっかり閉めていたのにも関わらず風圧で浮き上がってきたり、揺れたりなどの経験をしたことがある。

 レースでは時速200〜300kmで走るため、一般の人と同じヘルメットだときっと常にヘルメットが浮き上がって前が見えにくいし顎紐で苦しい状態になって集中力も切れて走行に影響してしまう。オージーケーカブトさんは、しっかり選手の声を聞きながらヘルメットの改良を積み、浮き揺れの対策をしているのだと教えてくれた。大体の選手はSサイズを着用していると前に教えてもらったことがあったけど、このレベルになるとサイズは大切だよなぁと思った。

スヴァルトピレン125に乗った時にKabutoのヘルメットを被った
スヴァルトピレン125に乗った時にKabutoのヘルメットを被った

 ちなみにわたしが普段使っているのはMサイズのヘルメットなんだけど、以前スヴァルトピレン125に乗った時にKabutoのヘルメットでSサイズを被らせてもらったことがあったんだった。その時の印象は、小さい方が顔や頭全体にピタッとしてくれるから余分な空間がないため、首の可動域が広がって頭が振りやすくて運転しやすいなぁって思ったのを覚えている。

 そのSサイズのヘルメットを被った時に、何故レーサーは皆Sサイズのヘルメットを被るのか納得出来たの。でもSサイズが小さいと感じる人には、長時間被ると締め付け過ぎて頭が痛くなってきたり、頬がスポンジで押しつぶされすぎて頬肉を噛んでしまうとかもあるから、通常使いでは自分の頭のサイズに合ったものが一番かな!

体を丸め走行するレーサーの人たち
体を丸め走行するレーサーの人たち

 あとは姿勢も大切だよね。レーサーの皆さんは横から見ると前のめりで車体と一体になっている姿は、例えるとレモンのようなフォルム。フロントから体が繋がっている様にアーチを描くイメージかな?

 わたしは試乗車を乗ったときによく”車体と一体になって”という表現を使うんだけど、ロードレーサーは皆、体を車体にピタッと貼り付けていて、風の抵抗を少しでも抑えられる様姿勢を低くしている。これが本当の”車体と一体になる”ということなのだと思ったよ!

ヘルメットサービスで一番多い依頼はクリーニング作業
ヘルメットサービスで一番多い依頼はクリーニング作業

 バイクレースというと、選手の運転技術や車体の方に目が行きがちだけど、その舞台裏には秘密が沢山隠されていたんだね。ちなみに、ヘルメットサービスで一番多い依頼はクリーニング作業だとオージーケーカブトさんは教えてくれたけど、クリーニング一つとっても、ただ外面をウエスで綺麗にするだけではなくて、選手の手に渡った後気持ちよく使ってもらえるように細かい気遣いが施されている。メンテナンスに回されてきた全てのヘルメットに雑な扱いは一切なく、プライドを持った仕事、そしてとてもジェントルな対応をしていたのが今回の取材で印象的だったなぁ。取材を引き受けて下さったオージーケーカブトの南さん、小川さん、本当にありがとうございました!

 と、挨拶をして引き上げようとした時、ちょうど選手の方がヘルメットを取りに来ているところに遭遇。側から見ていると、メーカー側と選手の間に和やかな空気が流れていて、とても良好な関係なのが直ぐに分かった。親しみやすいオージーケーカブトの皆さんだからこそ、選手側も笑顔で気軽に頼りに来れるのだと感じた瞬間だった。

…ということで、本日もここまで読んでいただきありがとうございました!また8のつく日にお会いしましょう!