レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ホンダの2輪EV化宣言に淋しいと思いつつも期待はあると言います。どういうことなのでしょうか?

ついに来たか、ホンダがバイクのEV化を宣言

 ホンダは、2030年に世界で販売するバイクの15%を電動車にすると発表した。2025年までに10車種以上の電動バイクを投入。2030年に総販売台数の約350万台を電動バイクにするという計算である。

ホンダは2025年までに10車種以上の電動バイクをグローバル展開すると宣言
ホンダは2025年までに10車種以上の電動バイクをグローバル展開すると宣言

 そして2040年までにすべての新車をEVか燃料電池車にすると宣言している。ハイブリッドも作らない。つまり内燃機関との訣別である。そこまで腹を括っているのだから、世界一のバイクメーカーとして「バイクは別ですよ」とはならない。バイクのEV化宣言も時間の問題だろうと予想していたものの、内燃機関を深く信仰する僕(筆者:木下隆之)はショックだった。

 電気モーターは、確かに内燃機関より圧倒的にエネルギー損失が少ない。内燃機関は熱や音や振動にエネルギーが奪われ、残りの約40%しか走りに活用できないのに対して、電気モーターは約90%活かせる。効率的だ。

 だが、高回転でのパワーは不足する。初速は速いけれど、最高速度が甘いのである。加速するにつれてグイグイとパワー感を高めるあの躍動感が得られない。とくに趣味性の強いバイクならば、それは淋しい。

 電気モーターはそもそも回転計という概念が薄い。回転に比例してパワーが嵩上げされるという特性ではないからだ。ミッションがないから、シフトアップ/ダウンの目安も必要ない。となれば、タコメーターの針が、メーター内で激しく踊るあの感覚も味わえなくなる。大いに淋しい。

 ただし、ホンダはそれを「パワーメーター」で補ってくれると信じている。というのも、新型シビックのハイブリッド「CIVIC e:HEV」には、回転計のあるその位置に、あたかも回転計のようなパワーメーターを組み込んでいる。その針はタコメーターであるかのように激しく上下する。しかも、ミッションを組み込んでいるように、段階的にステップを踏むのだ。ミッション車のようにパドルシフトも備えている。

ホンダ新型「CIVIC e:HEV」に採用されたパワーメーター
ホンダ新型「CIVIC e:HEV」に採用されたパワーメーター

 これがたいそう刺激的で、まるで高性能の内燃機関であるかのように、メーターの針が跳ね回るのだ。

 ホンダの電動化を両手で歓迎する気にはなれないが、パワーを出し入れして楽しむ感覚は残してくれるはずだ、と期待している……。