スズキが都内で新型『アドレス125』および『アヴェニス125』の撮影会および技術説明会を開催しました。2017年にフルモデルチェンジした従来型『アドレス125』を新車で購入し、所有し続けているバイクジャーナリストの青木タカオさんが興味津々で参加しました。
クラスを牽引し続ける立役者
初代アドレスは1987年に、シート下にヘルメットを収納できるスペースを有する50ccスクーターとして誕生。91年に『アドレスV100』を発売し、小さく軽い初代“通勤快速”として、14年間の長きに渡って外観を大きく変えることなく人気を博したのは、スクーターファンでなくとも広く知るところでしょう。

2005年には2ストエンジンを4サイクル・インジェクション仕様に刷新し、『アドレスV125』へ進化。17年にはフロントタイヤを10→12インチに大径化し、ゆったりと快適に乗れる『アドレス125』へとフルモデルチェンジを果たしました。
このとき、すぐに新車を購入した筆者(青木タカオ)。原付2種スクーターが欲しいと思っていたところに、機能とリーズナブルさでクラスを牽引してきたアドレスの新型が出たので、好機だと思いスズキワールドにオーダーを入れたのでした。
新型はどこが変わった!?
というわけで、従来型のオーナーとしては新型が大いに気になるところ。ナニがどのように変わったのか、実車をじっくりチェックいたしましょう。

車名は前回のフルモデルチェンジで『アドレスV125』から『アドレス125』に変わりましたが、今回はそのまま『アドレス125』を継承。“V”は付きません。
スタイルはすっかり一新され、丸みを帯びた欧州車のようなオシャレ路線のデザイン。先代はロングセラーだった『アドレスV125』や『アドレスV100』のようにノーズが尖っていて、大きなポイントとして挙げられるのはフロントフェンダーがないこと。フロントカウルが前輪に覆いかぶさり、泥よけも兼ねていたのでした。
新型はフェンダーを備え、『薔薇』や『蘭 RUN』(1983年)がそうだったようにヴィンテージスクーターの雰囲気も感じさせる普遍的でエレガントなデザイン。ヘッドランプリムやマフラーガードにメッキが施され、エンブレムも立派な立体式となって、車体全体に上質感が漂っています。
車体のサイズ感は?
写真を見たときはひと回り小さくなったのかなと思いましたが、実車は従来どおりのサイズ感。参考までに寸法を記しておきましょう。全長やホイールベースが若干短くなっていることがわかります。

■従来型
全長 / 全幅 / 全高:1,900mm / 685mm / 1,135mm
軸間距離 / 最低地上高:1,285mm / 120mm
シート高:745mm[フラットシート仕様]
■新型
全長 / 全幅 / 全高:1,825 mm / 690 mm /1,160 mm
軸間距離 / 最低地上高:1,265 mm / 160 mm
シート高:770 mm
サイドスタンドを払って車体を起こすと、軽くなっているではありませんか。109kgあった装備重量が、4kg減って105kgとなっているのです。
25mm上がったシート高、足つき性いかに!?
またがると、相変わらずゆったりとした乗車姿勢であることがわかります。5年近く乗った従来型で気に入っているポイントは、まさにこの余裕あるライポジで、ひざ周りと足もとがなんたって広い。新型もまっ平らなフロアボードで、足を置く位置に自由度があり窮屈さを感じることがありません。

シート高は25mm上がったものの、大きくかわらない印象。シートやフロアボードの形状で対策が講じられているのでしょう。身長175cmの筆者の場合は、片足立ちならベッタリとカカトまで足が地面に届きます。
フラットシートが嬉しい
段差をわずかにし、座面の広いロングシートはタンデムしても十分な広さで、快適な乗り心地が確保されています。積載性に優れることや着座位置を微妙に変えられるという点で、シートはフラットで良いと筆者も考えていて、先代にはわざわざ『アドレス125 フラットシート仕様』が選べる設定となっていました。迷うことなくこれを選んで購入したので、新型のフラットシート化は個人的にも大歓迎です。

驚きなのは標準装備されていた大型リヤキャリアをやめて、グラブバーを装備したことです。荷台にトップケースを取り付けられるよう純正オプションにステーなどが用意されるものの、標準装備ではグラブバーのみで、ずいぶんとリヤ周りがスッキリしました。
給油口がシート下にない!
もっと驚くのは、給油口がシート後方に配置され、シートを開閉する必要がなくなったことです。

キー操作でシート下のトランクを開けると、給油口が姿を現し、キャップを開けるというのが従来型の流れ。新型では、ひとつ手間を省けるようになりました。

従来型は完全なる指針式のアナログメーターでしたが、新型では小型液晶ディスプレイが埋め込まれ、バーグラフ式の燃料計を表示。オイルチェンジインジケーター、オドメーター、トリップメーター、電圧計、時計を表示することができ、機能を増やしています。

筆者はスズキワールドにて納車時に、USB電源の追加をお願いしましたが、新型ではUSBソケットを標準装備しているから羨ましい限りです。こうした細かい部分の進化が気になるところで、折りたたみ式ホルダーを股の下に新たに設置しているのも見逃せません。
従来、折りたたみ式ホルダーがあった前方インナーパネルに、買い物袋を掛けるのに便利なフロントフックを配備。その左側には使いやすいオープンタイプのフロントインナーラックがあります。
アドレスの持ち味は発進加速!
さて“通勤快速”と呼ばれ、信号ダッシュが力強くてこそアドレスの伝統ですが、「優れた加速力は従来どおり」とチーフエンジニアの森井秀史さん(スズキ株式会社二輪事業本部)が教えてくれます。

従来型のオーナーである筆者が、ゼロ発進のダッシュ力に満足していることを伝えると、「新型では従来型と同じ最大トルクを500rpm低い回転数から発生させ、街中で多用する低中回転を重視したエンジン出力特性とすることにより、扱いやすいエンジン特性を実現しました」と、森井さんは胸を張ります。
満足している燃費がさらに向上!!
さらに、平成32年(令和2年)国内排出ガス規制に適合させつつ、燃費も上がっているからすごいとしか言いようがありません。従来型の52.0km/Lに対し、新型は55.9km/Lを達成。定地燃費で約7%向上とのこと。

所有者として感じるのは、すでに抜群に燃費が良いことで、近所のスーパーへ買い物に出かけるのに使っている筆者としては、「いつガソリン入れたっけ?」という感覚ですから、さらに燃費が良くなったというのは、はっきり言って「もう充分です」というのが正直な感想だったりもするのでした。
洗練された新型が羨ましい!!
ヘッドライトはLED化され、長寿命なことはもちろん、見た目にも一気に現代的、そしてスポーティに。リヤのコンビネーションランプも、流麗な車体のデザインにマッチさせています。
また、左ブレーキレバーを握ると、フロントブレーキとリヤブレーキが同時に作動し、安定した制動をサポートするコンバインドブレーキを新採用したのも、安心感が高まる大きなポイントでしょう。

満足度が高く、まだまだ10年、いや20年乗り続けようと思っていた従来型オーナーの筆者ですが、新型にもう興味津々です。まずは実車を初めて見た速報を今回はお届けしましたが、次回はもっと知りたくなったので、技術説明会に出席した開発チーム(スズキ株式会社二輪事業本部)のみなさま、チーフエンジニアの森井秀史さん、デザイン担当の斉藤航平さん、エンジン実験担当の杉 芳典さん、プラットフォーム設計の松下太亮さんの4名にアレコレとねちっこく聞いた模様をレポートいたします。ご期待ください!