レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ビジネスバイクであるホンダ「スーパーカブ」シリーズがお洒落な存在になった理由を知りたいと言います。どういうことなのでしょうか?
軽トラ的存在? ホンダ「スーパーカブ110」でハズシの美学を
「スーパーカブがお洒落である」そう聞いても、僕(木下隆之)らのような高度成長期に生まれたジジイには理解できまい。スーパーカブは本田宗一郎が生み出した大発明ではあるものの、その生息域は、新聞配達か、岡持ちを載せたそば屋の出前と相場は決まっていた。つまりは、働くバイクなのである。

もっと趣味性の高いバイクをホンダから探すのは困難ではない。その筆頭は「モンキー」だろう。「ダックス」も復活した。「グロム」などというスポーティな原付2種バイクもある。さらには「ハンターカブ」や「クロスカブ」など。
もっと飛躍して「CFR110F」でモトロクスを楽しむ手もある。だけど、なぜか働くバイクの象徴である「スーパーカブ」にも趣味性を感じるというのだから、時代の変化とは面白いものだ。
そのカラクリを知りたくて「スーパーカブ110」を乗り回す日々を過ごしている。これがこれで、なかなかお洒落なのである。試しに、セレブタウンの筆頭である六本木ヒルズの並木道に横付けしてみて、なんだか解答のようなものを感じた。
「ミスマッチ」「違和感」「ダサ可愛い」……絶妙にミスマッチがマッチしたのである。ハズシの美学とでも言おうか。
じつは、僕はかつて軽トラをマイカーにしていた時期がある。ダイハツ・ハイゼットを改造して、日々通勤に使っていたのだ。
フロントのエンブレムをBMWのそれに交換。ダッシュボードにはカーナビと速度レーダー探知機を組み付けた。
「それで速度違反ができるとでも?」と、笑われるのを承知で、と言うよりウケ狙いである。スベッたのかどうかはわからないが、狙い通り友人たちには笑われた。目的は達成したのである。

もっとも、ウケ狙いで改造してみたものの、実際に使い勝手がいい。燃費は良いし、小回りが効く。荷物も積める。ちょっとした隙間があれば駐車できるのも便利だった。
そう、「スーパーカブ110」での生活はなかなか便利であり、その便利さを体面を気にせずに謳歌しているスタイルこそが、お洒落の源泉なのではないか、と思ったのである。
なんなら「スーパーカブ110」にBMWのエンブレムを貼って、また六本木ヒルズに出没してやろうかと企んでいる。