駐輪場などで、他人のバイクを倒してしまった経験がある人はいませんか? その場合、どのような対処をすれば良いのでしょうか。また、罰則はあるのでしょうか。

駐輪場などに停められている他人のバイクをうっかり倒してしまった

クルマでバックなどをする際に死角に停められていたバイクにぶつけてしまったり、駐輪場で自身の自転車やバイクを動かす際に、うっかり他人のバイクに体があたるなど、さまざまなケースにより他人のバイクを倒してしまったという経験がある人はいませんか?
 
 駐車してある他人のバイクを倒してしまうと、頭が真っ白になってしまう人がほとんどだと思います。しかし、まず冷静になって対応することが大切です。

駐車中の他人のバイクを倒す行為は故意でなくても賠償責任が生じる
駐車中の他人のバイクを倒す行為は故意でなくても賠償責任が生じる

 民法709条には、不法行為について「故意または過失によって他人の権利または利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定されています。つまり、たとえ不注意で故意ではなかったとしても、相手のバイクに傷を付けたり壊してしまった場合は、賠償責任が生じます。

 そのため、他人のバイクを倒してしまった際は、持ち主に誠意をもって対応しなければなりません。しかしなかには、周りに見ている人がいなかったからといって、その場から逃げてしまう人もいるようです。

 その中で、運転しているクルマでバイクを倒してしまったという場合は、当て逃げに該当します。道路交通法72条には、人身事故や物損事故を起こした運転者は、危険防止措置義務および警察への報告の義務があります。事故を起こした際はすみやかに停止して、危険物の除去および負傷者の救護を行い、警察に通報しなければなりません。そのため、物損事故を起こしたにもかかわらず現場から逃走すると、行政責任と刑事責任の罰則を受けることになるでしょう。

 当て逃げは「危険防止等措置義務違反」にあたり、1年以下の懲役または10万円以下の罰金。また、「報告義務違反」にあたり、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。

 さらに、物損事故に対しての危険防止等措置義務違反により違反点数5点に加え、安全運転義務違反で違反点数2点を加算。つまり、違反点数が合計で7点になるので、当て逃げをすると一発で30日の免許停止の処分になる可能性があるというわけです。なお、当て逃げをすると刑事罰の対象であるため、すでに逃走しているのであれば自宅に警察がいきなり来て逮捕されるケースもあり得ます。防犯カメラの映像や目撃証言などから、犯人が特定されることも少なくないため、逃げ切ることは難しいでしょう。

 どんな事情があろうとも当て逃げは立派な犯罪なので、絶対にしないようにしましょう。なお、駐輪場を自身も利用しようとして、うっかり他人のバイクを倒してしまったという場合は道路交通法には該当しませんが、同じく民法709条の不法行為に該当するため、キチンとした賠償責任を果たすためにもまずは警察に届け出ることが賢明です。

他人のバイクを倒してしまった際の具体的な行動

 では、他人のバイクを倒してしまったら、具体的にはどのように対処すればよいのでしょうか。

他人のバイクを倒してしまったら、まずは持ち主に謝罪すると共に警察を呼ぶ
他人のバイクを倒してしまったら、まずは持ち主に謝罪すると共に警察を呼ぶ

 まず、バイクの持ち主に連絡を取り謝罪するのが先決です。その場に相手がいない場合は、商業施設の駐輪場などであれば、お店の人にバイクの特徴やナンバーを知らせて呼び出してもらうようにしましょう。また、自宅マンションの敷地内などの場合は管理人さんに伝言を依頼したり、相手のバイクに自分の連絡先を書いた紙を貼り付けて相手から連絡が取れるようにすると良いでしょう。

 同時に、できるだけ早く警察に通報して事故処理をしてもらい、事故証明書を発行してもらうことも重要。保険を使って賠償する場合は、この事故証明書がないと保険金の請求ができません。もし任意保険に入っていなくても、加入の有無にかかわらず警察への報告は義務であるため、必ず連絡するようにしましょう。

 事故処理が終わったら、加入している保険会社にも連絡してください。報告後は、保険会社の担当者が相手と示談交渉をすすめてくれるので、任せればOKです。

 なお、当事者同士で示談交渉をするとトラブルになりやすいため、保険会社に介入してもらうようにした方が良いでしょう。

高速道路のサービスエリアやスーパーの駐車場などは道路交通法が適用される
高速道路のサービスエリアやスーパーの駐車場などは道路交通法が適用される

 高速道路のサービスエリアやスーパーの駐車場などは、不特定多数の人やクルマが通るため道路交通法の対象です。

 しかし、自宅マンションの駐輪場や月極駐車場などは私有地のため、交通事故として処理されず、自動車保険を使うことができない場合があります。このあたりは契約の状況によって異なるので、時前に確認しておくと良いでしょう。私有地の駐輪場などで、他人のバイクを倒してしまった場合など、自動車保険が適用されないケースでは、「個人賠償責任保険」を利用する方法があります。

 個人賠償責任保険は、他人の物を壊してしまったり、ほかの人にケガを負わせてしまったときなど、日常生活における損害賠償を幅広く補償してくれる保険です。自動車保険のほか、火災保険やクレジットカードなどの特約としても加入が可能で、少ない掛け金で大きな補償が得られるメリットがあります。

 なお、強制加入の自賠責保険は、対人の事故に対してのみ適用されるため、他人のバイクを壊してしまった場合などは対象外です。物損の場合は、任意保険または個人賠償責任保険に加入していないと、全額を自腹で支払うことになるので注意しましょう。

※ ※ ※

 他人のバイクを倒してしまうのは、ちょっとした不注意が原因であることがほとんどです。そのため、スーパーやコンビニなど商業施設の駐車場などでクルマやバイクを動かす際は、周囲の安全をしっかりと確認をすることが重要。また、駐輪場などで自分のバイクや自転車が出しにくいからといって、他人のバイクに触れて動かすような行為は禁物です。

 扱いに慣れていないバイクを移動させようとすると、思わぬ拍子で倒れてしまうことがあります。そのため他人のバイクを移動させたい場合は、お店の人やマンションの管理人などにバイクの持ち主に連絡してもらい、持ち主に移動してもらうようにしましょう。