レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、電動バイクは日常の足代わりに適していると言います。どういうことなのでしょうか?

電動バイクは、日常の足に適した乗りものに

 僕(筆者:木下隆之)がBMW Motorrad「CE 04」に試乗して思ったのは、こんな近未来的な雰囲気を醸し出しているにもかかわらず、電動バイクをより身近な存在にさせるということだ。

BMW Motorrad「CE 04」に試乗する筆者(木下隆之)
BMW Motorrad「CE 04」に試乗する筆者(木下隆之)

 スクータータイプだからイージーな感覚でライディングが可能だし、とにかく重いことが障害のバッテリーを搭載していながら、それでも車重は231kgに抑え、車体の前後に長く低い位置に重量を集中させているから、走行中も安定感と軽快感がある。リバース機能のおかげで、取り回しもなんとかこなせるレベルにある。足つきも悪くはない。

 電動バイクの話になると、多くの人が気にするのは航続距離だろう。スペック上の航続可能距離は130kmと発表されているが、ひとたび高速クルージングすればバッテリーはみるみる消費していく。

 充電の問題も無視できない。急速充電器チャデモには対応していない。自宅で普通充電するにも200Vを増設する必要がある。エンプティから満充電まで約4時間もかかる。常にバッテリー残量を意識した生活にならざるを得ない。

 なぜ急速充電器チャデモに対応したバイクが少ないのか? その理由はバッテリーの充電特性にある。常に一定のスピードで充電することができないのだ。致命的なのは、バッテリー残量と熱に、過剰に左右されることだ。

 たとえばバッテリー残量50%あたりから満充電にトライするとしても、最後の20%あたりは1時間ほどかかる。燃料タンクにガソリンを注ぐように、一気にドボドボと流し込むことができない。

 だから満充電で行動しようなどとは思わなくなる。とりあえず80%ほどをマックスとして、充放電を繰り返すことが現実的だ。ところが、そもそも容量が少ない。そのミニマムな容量の80%である。チャデモで急速する意味が薄いのだ。

 軽自動車EVの日産サクラが大人気である。コンパクトなボディに20kWhのバッテリーを搭載。スペック上の航続可能距離は180km。例のバッテリーの充放電特性からすれば、移動距離100kmほどが現実的だ。ストロングタイプのEVからすれば、足は短い。

 でも、日産はそれを承知である。というのも、軽自動車の一般的な走行距離は、数十キロ程度である。通勤・通学や駅までの送迎などが主な任務だ。だから、わざわざの重たいバッテリーを積んでまで航続距離を延ばす必要はないのである。日頃の足として割り切れば、まったく問題は無い、という割り切りが人気の理由だ。

 そう考えれば「CE 04」も魅力的に思えてくる。航続可能距離やチャデモに対応しないことなど、それほどネガティブなことにも思えなくなる。そう、日常の足代わりには、適したバイクというわけだ。