2022年11月から、新たな排ガス規制が施行されました。各メーカーも、この規制への対応に追われているようですが、そもそもこの規制は、いったいどのような内容で、何のために施行されるのでしょうか。
排ガス規制っていったい何?
2022年11月より「平成32年(令和2年)排出ガス規制」が施行され、大きな話題となっています。この排ガス規制はかなり厳しい内容となっており、世界で最も厳しいと言われるヨーロッパの「EURO5」と同等と言われています。

令和2年排ガス規制は、2020年12月から全排気量の新型車が対象でした。そしてその規制は2022年11月より継続生産車にも及び、令和2年排ガス規制をクリアしていなければ、継続生産車であっても販売できなくなるというものです。なお、原付一種については、「全国オートバイ協同組合連合会」の働きかけもあり、2025年10月末までという猶予期間が設けられています。
排ガス規制の内容は、「道路運送車両の保安基準」の第三十一条、第六十一条の3及び「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」などに細かく決められていますが、大まかに言うと、自動車の運行中に排出される大気汚染物質の上限を定めた規制です。
対象となる汚染物質とは、一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素類、黒煙などで、これらを今まで以上に抑えなければならないというわけです。
さらにバイクに対しては、排出ガスを浄化する装置の劣化を監視する「車載式故障診断装置(OBDⅡ)」の搭載が義務化されました。この装置がついていない車両は、継続生産車であっても2022年11月より販売ができなくなります。
この規制に対して、各メーカーは対応に追われていましたが、それでも多くのモデルが生産終了へ。その中にはロングセラーのバイクも多くあり、大きな話題を呼びました。

また、原付一種については2025年10月末までという猶予期間が設けられています。しかし、装置の搭載には高額なコストがかかるため、仮に搭載した場合、気軽に乗れる原付一種の車両価格ではなくなってしまう可能性があります。
業界全体の原付一種の販売が振るわなくなっている昨今、このままでは原付一種がなくなってしまう、原付一種の免許自体が原付二種と統合してしまうなど、SNS上でもさまざまな声が上がっています。
ただ、原付一種に限らず、排ガス規制と車載式故障診断装置搭載の義務化は、バイクのコストに大きな影響があります。現在、円安などで原材料が高騰しており、以前と比べると、バイクの価格もかなり高額になってきました。
また、排ガス中の有害物質を低減する触媒にはレアメタルが必要で、これがまたバイクの原価を押し上げる原因にもなっています。そのため、ロングセラーのバイクであったとしても、復活させてしまうとかなりの高額になってしまい、ユーザーが買いたくても買えない価格になってしまう可能性もあります。そのため、ロングセラーのバイクなど復活を期待されるバイクは多いものの、すぐの復活は難しい状況であるといえるでしょう。
なお、この排ガス規制では、バイク本体だけでなく、バイクパーツにも影響が現れています。例えば、バイクの改造の定番であるマフラーが挙げられます。安易に中古のマフラーに交換をしてしまうと、法令違反となってしまう可能性もあり得るので注意が必要です。
そもそも日本の排ガス規制は、1966年の「昭和41年排ガス規制」から始まりました。排ガス規制は年々強化されており、このままではガソリン車がなくなってしまうという声すらあります。

そのため、現在自動車業界だけでなく、バイク業界においても完全電動バイクの開発が進められており、すでにヤマハの「E-Vino」などの電動バイクも発売されています。
一方、自動車業界ではトヨタを中心に水素エンジンの開発も進められているようです。また国内バイクメーカーでもヤマハが中心となって、水素エンジンの開発を進めている模様で、同業他社同士だけでなく、バイクメーカーと自動車メーカーも互いに協力し合う流れがうかがえます。
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これからますます厳しくなる排ガス規制は、1社だけでは乗り越えることができない状況になっているということです。
今後、電動バイクが主流になっていくのか、水素エンジンバイクが主流になっていくのか、関連各社の動きから目が離せません。