レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、クルマにはあるがバイクにはブランドを象徴する「顔」が無いと言います。どういうことなのでしょうか?
バイクにもブランドを象徴する「顔」があっていい
僕(筆者:木下隆之)が聞いたところによると、「スズ菌」という言葉があるそうだ。どうやらスズキのバイクには独特のデザインテイストがあり、それはやや個性が強いために一般的には受け入れられづらく、だが一旦惚れてしまうと離れることが出来ず、恋の病のように盲目的に信仰してしまうことらしい。

「スズ菌に冒された」
スズキのバイクを所有する友人が、なかば自虐的にそう言うのだから本当なのだろう。ここでそう言っても、笑って流されることを期待する。
確かに、スズキには他のどのブランドとも異なる個性的な雰囲気がある。バイクビギナーの僕はすれ違いざまにすべてのバイクのブランド名を言い当てられるほど目が肥えていないが、その理由はやはり、顔つきにあると思う。
大きいか小さいかは判断できても、どのメーカーなのかの区別がつかない。それは明確な「顔」が無いからである。
4輪では、あの左右に大きく口をあけた「キドニーグリル」が強烈な個性の源であるBMWでさえ、2輪の顔にはキドニーグリルは無い。いや、バイクのそこにはラジエターグリルがないからキドニーになり得ないということなのだが、もはや冷却の必要がないBMWの電気自動車にすら、頑固一徹にその特徴的なデザインを捨てていないのだから、バイクに受け継がれても不思議ではないはずなのだ。
ちなみに「キドニー」とは、英語で腎臓(kidney)を意味する。左右に分かれた臓器のカタチがそれに似ているからである。
クルマのハイブランダーはこぞって顔つきに個性を求めている。レクサスは「スピンドル」であり、メルセデスは「ダイヤモンド」、アルファロメオは「盾型」、ロールス・ロイスは「パルテノン」である。三菱は「ダイナミックシールド」、スバルは「ヘキサゴン」……などなど。
顔こそがブランドの象徴なのだ。にも関わらず、バイクには明確な共通性が見当たらないのが不思議である。
「あっ、BMWが走ってきた」
誰もがそう反応するようになれば、ブランドとしては大成功である。ぜひともBMWには、バイクにさえ「キドニーグリル」を与えて欲しいものだ(?)。