運転免許証が更新できないと失効してしまいますが、「やむを得ない理由」で失効してしまう場合もあるかもしれません。そもそも、このやむを得ない理由とは、どういった内容が該当するのでしょうか。

やむを得ない理由とは?

 運転免許証の更新期間は、誕生日の前後2ヶ月間が原則で、もし有効期限までに手続きをおこなわなければ、免許は失効されてしまいます。しかし、さまざまな理由で期限までに更新手続きができない人もいるでしょう。

 そのような場合、「やむを得ない理由」があれば、救済措置として失効後3年以内に手続きすることで再取得することが可能です。

さまざまな理由で期限までに更新手続きができない人のために救済措置が用意されています
さまざまな理由で期限までに更新手続きができない人のために救済措置が用意されています

 やむを得ない理由で運転免許の有効期限が切れた場合は、失効後6ヶ月以内、または3年以内かで再取得の手続きが少し異なります。

 免許が失効してから6ヶ月以内であれば、学科と技能試験が免除され、適正検査(視力や聴力など)を受けて講習を受講することで再取得が可能です。再取得後も失効前の免許の履歴を引き継ぐことができるため、ゴールド免許の人はそのまま変わりません。また、免許が失効してから6ヶ月を超えて3年以内で、やむを得ない事情が終わってから1ヶ月以内であれば、学科と技能試験が免除され、適正検査を受けて講習を受講することで再取得できます。

 ただし、やむを得ない事情が終わって1ヶ月が過ぎてしまうと、免許失効となる点には注意が必要です。なお、失効前の免許の履歴は引き継がれません。

 そして免許失効から3年が過ぎてしまうと、いかなる理由があろうと救済措置はなく、免許は失効されてしまいます。再度免許証を手に入れるには、教習所などに通って最初から取り直さなければなりません。

免許失効から3年が過ぎると、いかなる理由があろうと救済措置はありません
免許失効から3年が過ぎると、いかなる理由があろうと救済措置はありません

 では、免許失効の救済措置がある「やむを得ない理由」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。これについては、道路交通法施行令33条の6の2各号で、以下のように規定されています。

 1.海外旅行をしていたこと
 2.災害を受けたこと
 3.病気にかかり、又は負傷したこと
 4.法令の規定により身体の自由を拘束されていたこと
 5.社会の慣習上又は業務の遂行上やむを得ない用務が生じたこと
 6.前各号に掲げるもののほか、公安委員会がやむを得ないと認める事情があったこと

 条文をみると、長期にわたり日本を離れている、または身動きがとれない状態などの理由が、やむを得ない理由にあたるといえます。

 例えば、2週間程度の海外旅行の場合は、更新期間の2ヶ月の間に更新手続きができる余裕があるため、やむを得ない理由として認められません。旅行というよりも、海外出張や海外留学などの長期滞在が該当するといえるでしょう。そのほか、病気やケガの場合は、長期に入院するケースや妊娠、出産もやむを得ない理由にあたります。また、法令による身柄の拘束は、留置施設や拘置所、刑務所などに収監されて身動きがとれない状態をさします。

 そして、やむを得ない理由で更新期限までに手続きができなかった場合は、その理由および、期間を証明する書類を提出しなければなりません。

手続きができなかった場合は、出入国記録が押印されているパスポートや留学証明書などが必要
手続きができなかった場合は、出入国記録が押印されているパスポートや留学証明書などが必要

 例えば、海外渡航であればパスポートによるスタンプ(出入国記録)が押印されているものや留学証明書などが挙げられます。病気での入院や出産などは、入退院の日付が記載された診断書、身柄が拘束されていた人は、在所証明書や在監証明書を提出する必要があります。

 では、新型コロナウイルスに感染した、または感染を避けるため更新手続きができず、免許が失効してしまった、というケースはどうなるのでしょうか。

 このような場合は、公安委員会が認める「やむを得ない理由」として特例措置がとられています。

 新型コロナウイルスに感染または感染を避けるためを理由に、免許失効から3年以内であり、手続きが困難である状況がやんでから1ヶ月以内であれば、失効手続きをすることが可能です。この場合、再取得をする際は学科試験、技能試験ともに免除されます。

 なお、「仕事が忙しい」「更新を忘れていた」といった理由で、期限までに更新できなかった場合は、やむを得ない理由として認められません。しかしこのような、ついうっかり忘れてしまい「気づいたら更新期限が過ぎていた」というケースもあるでしょう。もちろん免許は失効されてしまいますが、この場合も救済措置があるのであきらめる必要はありません。

失効してから6ヶ月経過するとゴールド免許の履歴を引き継げず、ブルー免許に変更されます
失効してから6ヶ月経過するとゴールド免許の履歴を引き継げず、ブルー免許に変更されます

 失効してから6ヶ月以内であれば、やむを得ない理由と同じように、適性検査と講習を受講すれば再取得が可能です。ただしこの場合は、ゴールド免許の履歴を引き継ぐことができないので、ブルー免許に変わってしまいます。

 やむを得ない理由がなく、更新期限が6ヶ月を超えて1年以内の場合は、適性検査を受けて仮免許を取得することができます。取得できるのは大型仮免許・中型仮免許・準中型仮免許・普通仮免許です。なお、自動二輪免許・大型特殊免許・小型特殊免許・けん引免許・原付免許・第二種免許は対象外となっています。したがって、バイクの免許を持っている人は、やむを得ない理由がなく更新期限から6ヶ月を過ぎると、最初から免許を取り直す必要があります。

 そして、「やむを得ない理由」がなく更新期限から1年以上が過ぎてしまうと、完全に運転免許は失効してしまいます。なお、やむを得ない理由の有無にかかわらず、更新期限が過ぎてしまった場合は免許が失効された状態です。もし失効した免許証で公道を走ると、無免許運転になってしまうので注意が必要です。

 無免許運転で警察に捕まると、刑事罰や行政処分の対象となり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。さらに違反点数25点となり、一発で免許取消しという重い処分が待ち受けています。

 運転免許の有効期限が1日でも過ぎたら、再取得するまでは絶対に運転はしないよう気を付けてください。

※ ※ ※

 運転免許の更新手続きは、有効期限までにおこなうのが原則です。しかし、病気や出張などの「やむを得ない理由」があれば、救済措置として失効後の3年間は再取得ができます。ただし、うっかり忘れて更新しなかった場合は、やむを得ない理由がある場合よりも再取得の条件が厳しくなるので十分に注意しましょう。