一般道を、かなりの低速で走っているバイクやクルマを見かけたことがある人もいるでしょう。こういった車両は、取り締まりの対象になるのでしょうか。また、逆に最低速度制限のある道路では、それを下回って走行するのは問題ないのでしょうか。実際に警察に聞いてみました。

一般道をトロトロ走る車両…これっていいの?

 日本の高速道路や一般道では、道路の大きさや車両の種類などによって速度制限が法律で決められています。普段、バイクを運転するライダーのなかには、スピード違反にならないように常に速度を気にしながら運転している人もいるでしょう。

最低速度制限の道路標識(サンプル)
最低速度制限の道路標識(サンプル)

 中には、バイク免許を取得したばかりで公道を走行するのに緊張し、低速で走行する初心者ライダーもいるかもしれません。こういった行為は、違反にあたらないのでしょうか。警視庁の担当者は、次のように話します。

「一般道には最低速度がありません。なので、原則ゆっくり走っていても取り締まりの対象にはなりません。しかし、その影響で交通渋滞が発生している場合には、警察が混雑緩和のために警告や命令をする可能性はあります。

 それでも改善が見られない場合は取り締まり対象になる可能性があります。もしくは、ゆっくり走っているバイクや車に対して、一度呼び止め、体調を確認することもあります。

 もし、体調が悪い場合は救急車を呼ぶなどの対応をしますし、後ろの交通状況の妨害のためにゆっくり走っている場合も、混雑緩和の命令を出します」

 つまり、一般道をかなりの低速で走行していても取り締まられる可能性は低いものの、渋滞の原因となっていたり、体調が悪そうであると警察に判断された場合は取り締まり対象になるかもしれないというわけです。

普通自動車の法定最高速度は、一般道が60km/h、高速道路は100km/h
普通自動車の法定最高速度は、一般道が60km/h、高速道路は100km/h

 そもそも最高速度の制限には、法令で定められている法定速度と、道路上の標識や標示などに速度が記載された指定速度の2種類があります。

 標識や標示で速度の指定がとくにない道路での普通自動車の法定最高速度は、一般道が60km/hで、本線車道のうち対面通行でない高速道路は100km/hです。標識や標示で速度が指定されている場合は、表示された数字がその道路の最高速度になります。

 一方の最低速度とは、道路標識によって指定されている速度、または指定がなければ法定速度を超えて走らなければならない速度のことです。

 一般道をはじめ、その他の道路では最低速度の規定は原則ありません。ただし、標識などで最低速度が指定されている場合のみ、速度の下限を守る必要があります。

高速自動車国道と一般有料道路により構成されている伊勢湾岸道路
高速自動車国道と一般有料道路により構成されている伊勢湾岸道路

 また、自動車専用道路も一般道に分類されるため、法定最低速度は定められていません。ただし、神戸淡路鳴門自動車道や伊勢湾岸道路、三陸自動車道などの一部の道路では最低速度の標識が掲げられています。このような道路では、指定された最低速度を下回らないように走行する必要があります。

 ちなみに高速道路の最低速度について、前述の警視庁の担当者は、次のようにも話しています。

「高速道路などの最低速度が設定されている道路で、その速度を下回って走行するのは道路交通法違反になります。例え、周りの交通状況を阻害しなくても、最低速度を下回って走行していると、法令上違反になり、取り締まりの対象になるので注意してください」

 高速道路での最低速度に関しては、道路交通法第75条の4で以下のように規定されています。

「自動車は、法令の規定によりその速度を減ずる場合及び危険を防止するためやむを得ない場合を除き、高速自動車国道の本線車道(政令で定めるものを除く。)においては、道路標識等により自動車の最低速度が指定されている区間にあってはその最低速度に、その他の区間にあっては政令で定める最低速度に達しない速度で進行してはならない。」

 さらに、道路交通法施行令第27条の3では、「第75条の4の政令で定める最低速度は、50キロメートル毎時とする。」とされています。つまり、高速道路において、標識などで速度指定がない場合は、50km/hが最低速度と決められているというわけです。

高速道路の本線は、交通集中や道路工事などで渋滞しているといった、やむを得ない場合を除いて最低速度を下回って走行してはいけません
高速道路の本線は、交通集中や道路工事などで渋滞しているといった、やむを得ない場合を除いて最低速度を下回って走行してはいけません

 高速道路の本線車道のうち、対面通行できない区間に限りますが、交通集中や道路工事などで渋滞しているといった、やむを得ない場合を除いて最低速度を下回って走行してはいけません。

 高速道路は一般道よりも速いスピードで走行することを前提としており、信号や一時停止の標識などもありません。そのため、法定速度100km/hの高速道路で極端に遅いスピードで走っていると、かえって危険が生じるため最低法定速度が規定されているといえます。

 最低速度の標識は、法定速度60km/hの一般道では設置されることはありません。そのため、たとえゆっくり走っていても、市街地などの一般道では違反に問われることは原則にはないと考えてよいでしょう。

 ただし、速度が遅すぎて渋滞の原因になったり、わざとノロノロと走るなど、周囲の車両に迷惑をかけていると判断された場合は、安全運転義務違反に問われる可能性があるので注意が必要です。

 なお、最低速度を下回って走行した場合は「最低速度違反」に該当し、違反点数1点と二輪車は反則金6000円が科せられます。

※ ※ ※

 最低速度が設定されているのは、高速道路および一部の自動車専用道路であり、通常の一般道には設けられていません。ただし、最低速度が指定されていない道路でも、極端に遅い速度で走ると、周囲の車両に危険をおよぼす可能性があります。安全のためにも、なるべく交通の流れに合わせて走行することが大切といえるでしょう。