バイクを運転する際は、購入時に発行された登録書類を積載しておく必要があります。しかし、盗難被害に遭ったり、うっかり無くしてしまうのが不安な人も多いでしょう。こういった場合に備え、積載書類は原本ではなくコピーでも、問題はないのでしょうか。

バイクへの登録書類の積載は必須

 バイクに積載しておくべき登録書類には、「自動車検査証」と「自動車損害賠償責任保険証明書」の2つがあります。これらの書類は警察から提示を求められた際に、すみやかに差し出せるよう常に備え付けなければなりません。ただ、ライダーによっては「盗難や紛失のおそれがある」といった理由で、原本を家に保管してコピーをバイクに積みたい…と考えている人もいるかもしれません。

 では、原本ではなく、コピーした書類を積載しておいても問題ないのでしょうか。

バイクに乗る際は登録書類の積載が必須
バイクに乗る際は登録書類の積載が必須

 車検証の携帯については、道路運送車両法の第66条に以下のように定められています。

「自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない」

 ここでいう検査標章とは、車検の有効期限が記載されたステッカーのことで、バイクの場合はナンバープレートに貼り付けなければなりません。積載書類だけでなく、この車検シールが貼られていない場合も、バイクを公道で走らせることはできません。

 また、自賠責保険証については、自動車損害賠償補償法の第8条に以下のように定められています。

 「自動車は、自動車損害賠償責任保険証明書を備え付けなければ、運行の用に供してはならない」(一部省略)車検証と自賠責保険証のどちらも、「備え付けなければ、運行の用に供してはならない」となっています。そして、これらの条文には、「複写した書類でもよい」とはひと言も記載されていません。

 したがって、原本ではなくコピーの登録書類を携帯して運転した場合は、法律上は違反とみなされる可能性が高いという訳。そのため、もし運転中に、これらの登録書類のコピーしか携帯しておらず、警察から違反と言われても反論することはできません。

 違反と判断された場合は、車検証の不携帯に該当し、50万円以下の罰金が課せられる可能性があります。なお、車検ステッカーを貼っていない場合も同様であるほか、自賠責保険証の不携帯は、30万円以下の罰金が科せられます。

 ちなみに、登録書類の不携帯は交通違反には該当しないため、道路交通法に基づく違反点数の累積はありません。ただし、罰金刑となるため前科が付く可能性があるので注意してください。

 このように、登録書類の不携帯は刑事罰の対象となり、重い罰則を受けることになるため、決して甘くみてはいけません。

車検が不要な250㏄以下のバイクの場合

 車検証の携帯は、車検が義務づけられている排気量が250ccを超えるバイクが対象です。では、車検のない排気量250c以下のバイクの場合はどうなるのでしょうか。

軽二輪の場合はナンバープレートと一緒に交付される「軽自動車届出済証」をバイクに積載する。
軽二輪の場合はナンバープレートと一緒に交付される「軽自動車届出済証」をバイクに積載する。

 排気量126ccから250ccの軽二輪には、「軽自動車届出済証」という、車検証とそっくりの書類が存在します。これは運輸支局に届け出をするとナンバープレートと一緒に交付されるもので、バイクの持ち主を証明する公的な書類。

 この登録書類も、道路運送車両法施行規則の第63条の3により、バイクに積載するよう定められています。したがって運転する際は、コピーではなく原本を備え付けておかなければなりません。

 また、排気量125cc以下の原動機付自転車の場合は「標識交付証明書」という書類があります。これは、居住する市区町村からナンバープレートを交付される際に、一緒に発行される車検証のようなもの。バイクの情報が記載されており、転居で住所が変わるときやバイクを人に譲渡するときなどに必要となります。

 なお、書類の大きさや書式などは地域によって差があるので、形式はさまざまです。

 標識交付証明書は税務上の書類になるので、法律で備え付けて運転する旨は定められていません。そのため、運転する際に携帯する必要はありませんが、バイクの所有者を証明するための重要な書類です。もし、交通事故や違反を起こして警察に提示を求められたときに、すぐ取り出せるようにコピーしてバイクに携帯しておくと良いでしょう。

バイクへ積載する登録書類は、法律上は原本と決められている。
バイクへ積載する登録書類は、法律上は原本と決められている。

 ここまでは、道路交通法上の決まりを解説し、携帯が義務づけされた登録書類は、原本でなければ違反になることが分かったと思います。

 しかし実際には、コピーなどの書類を携帯しているライダーも少なくありません。なぜなら、バイクは盗難にあう確率がクルマより高く、車検証と自賠責保険証があれば名義変更ができてしまいます。そのため違反や事故で警察にお世話になっても、書類のコピーがあれば問題が無いケースがほとんどのようです。

 ただし、法律上は「原本の備え付け」が原則となっており、重い罰則を考えるとコピーでは安心できません。違反である以上は、できるかぎりコピーではなく原本の登録書類を携帯したほうが得策といえるでしょう。