街中を走るバイクの形状はさまざまであり、特徴的なカラーリングの車体も数多くあります。しかし、同じバイクが続けて通ることの方が珍しいほどバイクの種類は多様であるにもかかわらず、タイヤはどれも黒一色で統一されています。一体なぜ、バイクのタイヤは黒いのでしょうか。

知らない人も多いかも?タイヤの色には理由があった!

 街中を走るバイクの形状はさまざまであり、特徴的なカラーリングの車体も数多くあります。しかし、同じバイクが続けて通ることの方が珍しいほどバイクの種類は多様であるにもかかわらず、タイヤはどれも黒一色で統一されています。一体なぜ、バイクのタイヤは黒いのでしょうか。

タイヤはどれも黒一色で統一されている
タイヤはどれも黒一色で統一されている

 もし車体のカラーリングに合わせてタイヤの色が選べれば、カスタムの幅は広くなりますが、黒一色のタイヤしか見かけないのには、何か理由があるのでしょうか。

 日本の大手タイヤメーカーブリヂストンの公式ホームページによると、バイクのタイヤを黒くしているのは、タイヤに添加されているカーボンブラックという素材のようです。

カーボンブラックは黒い炭素の粒
カーボンブラックは黒い炭素の粒

 カーボンブラックは文字通り黒い炭素の粒であり、工業用に生産された「すす」のことです。これをタイヤの主原料である加硫ゴムと混ぜることで、ゴムが伸びたあと、元に戻る力である「弾性」がさらに強化され、タイヤが頑丈になります。

 これによって重い車体を支えたり、エンジンの動力を伝えたりするために必要な性能を発揮することができるようになるというわけです。

 また、カーボンブラックを混ぜるメリットはそれだけではありません。

加硫ゴムの多くは、屋外に置いておくと紫外線などによって劣化してしまうという性質がある
加硫ゴムの多くは、屋外に置いておくと紫外線などによって劣化してしまうという性質がある

 バイクのタイヤなどに使われている加硫ゴムの多くは、屋外に置いておくと紫外線などによって劣化してしまうという性質があります。長期放置した車両のタイヤがひび割れてしまっているのを目にしたことがある人もいるでしょう。

 このように、カーボンブラックには紫外線を吸収し、紫外線によるゴムの劣化を低減させる役割があります。タイヤの安全性能を高くするのに欠かせないカーボンブラックを使用していることが、タイヤが黒い理由に繋がっているのです。

昔のタイヤは白かった!黒以外のタイヤ

 このように、カーボンブラックと呼ばれる素材を添加することによってタイヤは黒くなっています。ただし、タイヤにカーボンブラックを混ぜることが一般的でなかった時代のタイヤは、もちろん黒くありませんでした。

タイヤの材料(参照:ブリヂストン)
タイヤの材料(参照:ブリヂストン)

 タイヤにカーボンブラックを混ぜると強度が上がることが発見されたのは、20世紀に入ってから。そのアイデアが普及するまでは、タイヤの色は消しゴムのような白色でした。

 はじめは地面と接する部分にのみ黒い素材が使われていましたが、しばらくすると全て黒い素材で作られるようになります。その一方で、タイヤは白いものだという通念や、クラシカルなデザインの需要も一定数存在しました。

 そういった声に応え、わざと側面に白い素材を残したり、後から白く塗ったりして作られるのがホワイトリボンタイヤです。こういった側面に白い線のあるタイヤは、古いデザインのバイクやクルマに装着されているのを今でもたびたび見ることができます。

カラータイヤを作ることは可能
カラータイヤを作ることは可能

 また、カーボンブラックの代わりにシリカを多く使ってタイヤの強度を高めることで、カラータイヤを作ることは可能なようです。しかし、黒いタイヤと比べた時に見劣りしてしまう性能や、かつてホワイトリボンタイヤが存在した時のように、現在は「タイヤは黒いものだ」という通念があることを考慮すると、今後バイク用のカラータイヤが普及することはあまり期待できないでしょう。

 一方、バイク用に限らなければ、カラータイヤが普及している例を見ることができます。例えば、自転車用のタイヤや屋内で使われるフォークリフトのタイヤなどです。

 自転車用のタイヤはバイク用のタイヤほどの性能を必要としないため、さまざまな色のラインナップがあります。また、フォークリフト用のタイヤは、倉庫に黒いタイヤのブレーキ痕を残さないことを目的とした緑や白のモデルがあります。

※ ※ ※

 ほとんどのバイクのタイヤが黒いのは、タイヤを強化するためにカーボンブラックと呼ばれる素材を配合しているためでした。また、カーボンブラックの代わりに他の素材の配合量を増やすことで別の色のタイヤを作ることも可能なようです。

 見た目の違和感や性能等の理由から、バイク用として普及することはあまり期待できないものの、フォークリフトや自転車用としては一定数流通しているようなので、今までタイヤの色に注目したことがなかった人も、目を向けてみると面白いかもしれません。