バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。長い文字列の「エンジン種類」にある「ストローク」について紹介します。
現行市販バイクは、ほとんどが「4ストローク」
バイクの諸元表にある、長い文字列の「エンジン種類」の中で、比較的前半に表記されるのが「ストローク」です(スズキは“サイクル”と表記)。これは内燃機関の動作周期による種別……と言うと難しく感じますが、もっとも基本的なエンジンの構造の種別を表しています。

バイクのエンジンはシリンダーの中でピストンが上下することで、燃料のガソリンと空気を混ぜた「混合ガス」を圧縮したり、爆発させてエネルギーを生み出しています。その一連の動きをいくつの「行程」(=ストローク:Stroke)で行なうのかが「ストローク」の表記になり、エンジンの種別としても使われます。
現在市販されているバイクは、大排気量のスーパースポーツモデルから排気量50ccクラスの原付モデルまで、ほとんどが4ストローク・エンジンになります。

上図が4ストロークの基本的な構造と一連の動きです。
まずピストンが下ることで混合ガスを吸い込み(1行程)、重いクランクが回転する勢いでピストンが上がって吸い込んだ混合ガスを圧縮(2行程)、点火プラグから火花が飛んで圧縮した混合ガスが爆発し、ピストンが押し下げられ(3行程)、クランクが回転する勢いでピストンが上がって排気ガスを排出(4行程)、という4行程(4ストローク)を繰り返してエンジンが回ります。
このように、4ストローク・エンジンはクランクが2回転で1回爆発します。
「2ストローク」は軽量でパワフルだったが……
現在は市販されるほとんどのバイクが4ストローク・エンジンで、2ストローク・エンジンは日本メーカーではヤマハとカワサキが販売する競技用のモトクロッサーやエンデューロマシンの一部のみになっています。

上図が2ストロークの基本的な構造と一連の動きです。ピストンが上がる時に混合ガスの吸気と、すでに吸い込んでいる混合ガスの圧縮を同時に行い(1行程)、点火プラグの火花で爆発してピストンが押し下げられるときに排気(2行程)します。
動作が複雑なので難解かもしれませんが、構造的にシンプル(吸気&排気のカムシャフトやバルブなどが不要)なので軽量かつ製造も低コスト、クランク1回転ごとに毎回爆発するので同じ排気量なら4ストロークより大きなパワーが得られるのがメリットです。
そのため昔はスクーターなどの小排気量モデルをはじめ、中〜大排気量のスポーツモデルにも2ストローク・エンジンを採用するモデルが沢山ありました。ロードレースもオフロードレースも2ストロークのレーシングマシンが主流で、1980〜90年代は、それらを模した「レーサーレプリカ」と呼ばれる市販バイクが人気を博しました。

しかし、2ストローク・エンジンは構造的にエンジンオイルを燃焼するためマフラーから白煙が出たり、燃え残った未燃焼ガスを相応に多く排出するため、燃費の悪さと相まって、厳しさを増す排出ガス規制への対応が難しくなりました。
そのため、平成11年排出ガス規制が施行された1999年には、多くの2ストローク・エンジンのスポーツバイクが生産終了となり、さらに平成18年排出ガス規制(2006年)で原付スクーターなども姿を消してしまいました。現行バイクのスペック表の「エンジン種類」を見ると、ほぼ「4ストローク」の表記しかないのが実情です。
ですが、2ストロークならではの加速力や排気音に惚れるライダーも多く、旧車やレーサーレプリカはいまだに人気が高く、中古車市場では非常に高額なプライスがつくバイクも少なくないのです。